そらのやま「通信」     Yukito Shimizu


No.96 砂丘散策 

 
 好天が続く。先日自然観察会で持ち帰ったサルノコシカケを着ける朽木はないかと,浜村海岸へ出かけた。流木があるかもしれない。岬の灯台がある長尾(ながお)に対して,短尾(みちかお)と呼ぶ小さな段丘付近の海浜である。
 車で浜村中央入り口まで行き,海岸線の砂浜を歩く。このあたりは,砂丘開拓の歴史のあとであり,竹で編んだ砂防垣は見当たらないが,国道付近から南側に続くアカシアと松の植林がそれを今に語り伝えている。

 子どものころ夏になると,よく海水浴に来たものだ。プールはもちろんなかったし,道路が今のように発達していなかった当時のこと,年に何回かの学校の海水浴もここまで徒歩でやって来た。
 水中眼鏡で魚を追っかけたり,脚に触れるハマグリを取ったりしたものだった。

 などと昔を思い出しながら歩く。海岸線の浸食が進んで,国道に迫っている。何かの対策をしなければ危ないのじゃないか。
 砂丘植物が繁茂している。以前の国語教科書に「鳥取砂丘の植物」というのがあった。この教材で結構砂丘に親しみ,植物に対する知識や意識を高めることができたように思う。
 今,「総合的な学習」がクローズアップされているが,昔のこんな教材だって,いくらでも「総合的な」扱いをしていた。そう考えると「何をいまさら」の感がないでもない。

 ハマゴウ(写真)があたり一面大きな群落を作っているし,コウボウムギは秋を迎えて穂が黒くなっている。ハマヒルガオは花が終わって遠慮がちに砂を這っていて,ハマニガナは所々黄色い花をつけている。
 ほかにもいろんな花が目の前にあるし,これはなんだったのだろう。教科書にもまだいろんな植物の名前が出ていた。しかし,もう思い出せなかった。
 海岸という厳しい環境だからか,砂丘植物の生態は海近くではあまり変わっていないようだ。ただ,国道付近から南の状況は大きく変わっている。車による影響もあろうし,街が次第に海岸の方に広がってきているので,環境の変化が激しい。

 朝方は大分涼しくなったから上着も用意したが,暑くて邪魔な存在になってしまった。最近比較的いい天気が続いて海も穏やかなようだから,漂着物は少ないかもしれない,という予想の通り,めざすような流木は見当たらなかった。1本だけかなり風化した小さな枝木を持ち帰ったが,置物にまで仕上げられるかどうか。(2002.10.20)