「Boys Be...」(イタバシマサヒロ氏・玉越博幸氏)を超える甘い恋愛を書く、という命題の元に発足した企画です。ついでに「SALAD DAYS」(猪熊しのぶ氏)も超えてみるかな(^^;。
基本的にはオーソドックスな(そしてベタベタな)ラブコメですが、ま、できる限り何か(僕個人がでも)得るもののあるお話作りをしたいなぁ、と。
訂正。早速で申し訳ないのですが、やはり私には「Boys Be...」を超越する作品を書くというのが不可能だという結論に達しました(ばく)。え? 諦めるのが早いって? いやいや、諦観というのは人生でもかなり重要な要素ですよ? 執着からの離脱にはいちばん手っ取り早い方法ですな。それが良いかどうかは別にして(^^;。とはいっても、まあ、「Boys Be...」に似せた方向性をとるのを止めるだけで、「ベタベタなラブコメ」を目指すという意図は変わっていません。さすがに多くの人が小っ恥ずかしくなって赤面するような小説は書けませんが、頑張って後味の良い(結局この辺が限界か(涙)?)ラヴストーリーを書いて行こうと思います。そんなこんなで、応援(?)よろしくお願いします(^^;。
目標は夏のコミックマーケットでの販売ですが、はてさて完成するかどうか。。出版(?)形式は1話完結、6話1セットで1冊にしようと思っています。
ところで、今回の企画にはヒロインとして以前から「らいとの部屋」でたまに描いていた「Mu-Tex」というキャラクターをヒロインとして使って描いていこうと思います。この3人のキャラクターたちは以前トップイラストを描いていたときに定期的にネタを提供してくれそうなモデルとして考えた「アイドルグループ」なのですが、今回のお題ではそのアイドルグループがドラマに主演して云々的なシチュエーションを想定していたりします。それが意味あるかどうか、と問われれば、敢えてないと答えましょう(ばく)。ええ、こちら(書き手)が楽しければよいのです。同人(っていうか、一人作業(苦笑))なのですから。
それはともかく、この企画で書くのは短編物なので、一話毎に立場や役柄を変えて(つまり別キャラクターとして)、それぞれのキャラクターを使っていこうと思います。魅力あるキャラクターになると良いのですが。乞う、ご期待(笑)。
書いていくうちに、主役の顔が見えてきたというか、やはり動かしてみると印象が全然変わりますね。僕の小説では基本的にメインの女性が3人になるのでそういう意味でも「Mu-Tex」のメンツもトリオにしたのですが、うまくはまりましたね。いや、自分だけにはまったというべきでしょうか(^^;。まあ、書いている本人の趣味に染まって行くのは当然なのでしょうけど(苦笑)。さてさて、どうなることやら。
0.
夕方の弱々しい陽光が薄暗い雲に阻まれ、街には少し早い夕闇が迫ってくる。急激に冷え込みを増してくる師走の寒空の下、一人の少女が公園を駆けだして行く。右手で華やかな緑と赤に彩られた大きなプレゼントを抱えて、まるで嫌なものから逃げ出すように、目を瞑り、顔を俯かせて、駆けだして行く。
公園を利用していた人々はほんの少しの間だけ少女に目をやるが、すぐにまた自分たちの幸せの時間へと帰っていった。クリスマスを明日に控え、多くの人は幸せを感じることに一所懸命になっていた。
少女が駆けだした場所には、一人の少年が佇んでいた。少女に差し出した、プレゼントを掴んだままの腕を下ろす気力もないまま、絶望に打ち拉がれていた。
なぜ彼女は逃げ出したのだろう? なぜ自分はプレゼントを渡そうとしたのだろう? なぜ自分はこんなところにいるのだろう? なぜ自分は彼女が好きなのだろう? なぜ、なぜ、なぜ……。
何秒か、何分かの、一人では答えの出ない自問を繰り返すうち、少年はここにいても何も起こらないことを知った。そして、自分がまだ腕を差し出したままだったことに気がつき、改めてそのかじかんできていた腕を下ろそうとして、力いっぱい握っていたはずのプレゼントを思わず落としてしまった。
一瞬だけ動きを止め、鈍くなっている頭を強く振るってから、両膝を曲げて、落ちたプレゼントを拾おうとする。そのとき、見るもの全てが滲んでいることを知り、また心が揺れた。胸の辺りが空虚で、疼く。地面に伸ばした腕が震えていた。こういうときの涙はこぼれないものだ、と、少年ははじめて知った。
強引にプレゼントを掴み取ってからジャンパーのうちポケットに押し込み、気合を入れて立ち上がり、そのまま空を見上げると、暗い紫色の夕雲から雪がゆっくりと舞い降り始めていた。
本格的な冬が始まる……。
1.
「除雪作業に風呂掃除、皿洗いに買出し、洗濯に部屋掃除……。まさかここまで忙しいとは。遊ぶ暇どころか、休む暇もありゃしないじゃないか」
一度に大人5人が利用できるくらいの浴槽をデッキブラシでこすりながら、大助は隣にいる少女に聞こえるように愚痴をこぼしてみる。本人にしても、このアルバイトを願い出たときには遊ぶつもりなどなかったが、アルバイト初日の昨日ですら、朝5時に起こされてから夜の1時まで、食事をとった2時間ほどを除けば、ずうっと働き詰めだった。今朝、従妹に叩き起こされたときなどは久々に酷使した筋肉が悲鳴を上げ、立ち上がることすら覚束なかったほどである。
「遊ばしてやるなんて誰が言ったのさ。アルバイトで使ってくれというから、希望通り雇ってやっているだけだよ」と怒った口調でタケル――大助の従妹で、このペンションのオーナー夫妻の一人娘である少女――が洗い場の床タイルを擦りながら言う。だが、口調は怒っていても、その表情には絶えず笑みが浮かんでいた。久々に揶揄い甲斐のあるひとつ年上の従兄に会えたことが、3日経った今でも嬉しいのだ。
「恩には着るけど、もうちょっと休憩時間があってもいいと思うね。労働基準法はどうなってるの!?」
高等学校という教育機関に2年ほど在籍はしていても、真摯に勉学に打ち込んだことなどない大助にしてみれば、今までほとんど使ったことのない労働基準法という言葉を口にするのも気恥ずかしいものだったが、年下の従妹に対して自分が格上であることを示すために気張ってみせる。
「自営業者にそんなものはありません。っていうか、サービス業を舐めてもらっちゃ困るわね、ダイ兄。人が遊んでいるときが即ち稼ぎ時。で、人が働いているときもそれはそれで稼がなきゃやっていけませんよ。それでも儲けなんてあるんだかないんだか……」
少女はそこまで言ってから、当人が「ほえー」と気の抜けた叫びを上げているのを見ると、「やれやれ、都会育ちの坊ちゃんは考えが甘いんだから」と肩を竦めて見せる。もちろん、この意見は本気ではない。一昨日このペンションにやってきてから、いま一つ気が抜けている従兄を怒らして空元気でもいいから、生気を取り戻そうとして言ってみたことだ。タケル自身小学校の高学年までは首都圏に住んでいたのだし、何より今の同世代の人々の考えにどれほど地域差があるかと問われれば、答えに窮しただろう。官庁が通達した教育指針に従った義務教育を受け、ほぼ同じテレビ番組を見て、似たような流行に身を委ねる。ごく一部を除けば、出来上がるのは甘い考えしか持たない子供だけではないだろうか。
しかし、そういった考えが朧気ながら頭にあったとしても、所詮はまだ子供でしかなく、人間が出来ている訳ではない。当の従兄に掛けてみた折角の発破が効果なしと知ると、簡単にむっとして、タイルに八つ当たりするように力強くブラシを掛けながら言い放ってしまう。「大体、失恋したから街を離れて、バイトしまくって、女のこと忘れようなんて考え、どっから沸いて出てくるんでしょうね!」
それを受ける大助は、誰にも言っていないことを図星されて、怒る以前に狼狽してしまう。自分を雇ってくれた叔父さんにはもちろん、家族や親しい友人にもあのことは知らせていないのだ。それなのに、何故か地元から遠く離れた従妹が事実を知っているということは、少なからず恐怖を感じさせた。
「ふふっ、このアタクシの情報網に驚いておいでのようですな」
「違う! そんな根も葉もないことをよくも考えつくもんだ、って呆れただけだ!」従妹の余裕のある発言に対して、唾を一度大きく飲み込んでから、ゆっくりと一言ずつかみ締めながら反論する。フられたということを他人に知られることを恥と感じてもいたが、それよりも自分の間抜けさ――大助にとってはそうとしか思えなかった――を言い当てられたのが悔しくて堪らなくなっていた。
大助は、また甦ってきた、あの厭な、胸が締め付けられるような、とても言い表せない想いに襲われて始めていた。切なさ、遣る瀬なさ、狂おしさ……。幾つか知っているそれらしい言葉を並べてみても、分かるのは心臓の辺りが空虚で、それなのに痺れるような鈍い痛みが繰り返されるということだけだった。
清掃作業を止めたタケルが、そんな従兄の渋い表情を見て溜息を吐いていると、浴室のアルミサッシが横に流れて、少し茶に染めた緩く波打つショートヘアを持った女性が顔を出してきた。
「タケル君、大助君、ご飯できたよ」
大助と同じように、大学の冬休みを利用してアルバイトをしている藤子(とうこ)は、脱衣室で従兄妹同士の話を少し聞いてしまったのだろう、口元には微妙な、他人を気遣う笑みがあった。それに気がついた大助は、知らせてくれた礼を簡単にいうと、片づけと朝風呂の支度をしてからすぐに行くと伝えただけで、中断していた作業に取り掛かった。
タケルは藤子に乾いた笑いを返してから、ホースを用意して洗剤の泡だらけになった床に水を撒く準備をする。大助を怒らせることには成功したが、元気を出させることは完全に失敗してしまい、さすがに気落ちしているらしく、自分を無視している従兄を横目にしながら、疲れたようにブラシを片手に散水を始める。
そのような二人を眺め見ていた藤子が「いま手が空いているから、手伝おうか?」と言ってくれる。気まずい二人だけにするよりは、たとえ無言だったとしても第三者がいた方がわだかまりも薄まると思ってのことだ。大助にしてもタケルにしても、お互いに気まずくなるのは避けたいので願ったりのことだったから、その申し出に内心はとても喜んでいた。ただ、気の強さがそれを表面に出すことを格好悪いと見栄を張ってしまうため、タケルがそっけなく「じゃあ、お願いします」というだけに留まってしまう。藤子にしてもまだ大人とはいえない微妙な年頃で、それほど鈍感でもなかったので、子供たちの気持ちを少しは察することができるから、怒ることなどなく、笑って少女に差し出されたホースを受け取る。
3人が清掃と朝風呂の準備をしてから食堂に向かう頃には、すでに午前6時を回っており、このペンション・ミューテックスのオーナーであるタケルの父親・室戸隆之介が、食堂の端にあるテーブルから食器を持って立ち上がろうとしていた。奥にある厨房から食器を洗う音が聞こえてきているので、母親はもっと早くに食事を済ませていたらしい。流石に5年以上も二人半でペンションを切り盛りしてきただけあり、やることは手早い。
「おう、ご苦労さん。とっとと食べちゃってくれな。昨日と同じようなことだけど、やることは山ほどあるから、さ」
昔から大助はこの伯父の笑顔を見ると「ニコニコ笑う」という表現を思い出した。それは「ニコニコ」の意味を擬音と捉えることをしなくなった今ではなおさら強くなっている。柔和な、人懐っこいその顔と声色は人好きをさせる。一人娘のタケルからして怒ったところを見たことがない、と言ってのけるのだから、生来の気質なのだろう。その上に子供たちの面倒見もいいものだから、大助が考えるよりも早く頼ってしまったのは仕方がないともいえた。
ただ、だからといってもそこは小さいとはいえ客商売をしている大人である。優しくはあっても、厳しいことに変わりはない。アルバイトとして来た大助を遊ばせることはしなかった。
隆之介としては普段は夫婦二人で行き届いているペンションの運営も、スキーをはじめとした行楽シーズン中はどこかで無理が生じてくることが経験的に分かってきたため、今シーズンからは試験的にアルバイトを一人雇い入れ、その人に雑用全般を任せて自分は接客と料理、管理全般に集中することを考えていた。
例えば、風呂の清掃に一つにしても、利用状況からオフシーズンよりも回数を一回増やさなければならないのだが、その清掃を普段通りに丁寧にやってしまうと他の作業に綻びがでるため、去シーズンまでは最低限の清掃で終わらせてしまっていた。そのやり方には納得いかなかった隆之介は、掃除や洗濯といった誰にでもできる雑務をアルバイトに任せることにして、あとはいつも通りに夫妻がメインを、タケルがサブを担当することで賄うことにしたのだ。
ただ、それでも土壇場までアルバイトを一人にするか二人にするかを悩んではいた。経営状態から考えると、アルバイトとはいえ従業員をいきなり二人も雇ってしまうのは赤字スレスレになるのだが、別の考えとしては致命的なミスを起こすよりは良いとの思いも強かったからである。ペンションとはいえ中途半端なサービス精神を嫌う隆之介は、そんなときに降って沸いた突然の大助のワガママをこれ幸いとばかりに受け入れてしまったのであるが、この強引さが脱サラでペンションを始めた人間の本領なのかもしれない。
隆之介は最初から比較検討用にテストパターンのシナリオを二通り考えていたため、アルバイトを二人にした場合の業務配分を切り替えることも簡単にできた。それには大助がここに来る三日前から働いていた籐子が器用であったことも幸いしたのだが。
「はい!」
「……はーい」
籐子の明るい返事に続いて、気のない言葉を大助とタケルが返す。食器を厨房へ運ぼうとしていた隆之介は、そのとき初めて子供たちがしょげているのに気が付いたらしく、目をパチクリさせてじっくりと観察しはじめる。
「どうした、おまえら? なんか悪いものでも食ったのか?」
隆之介は朝食を取る前と知っていながらわざと言う。この中途半端なボケ方は隆之介独特の人心掌握術であるらしく、場の雰囲気が自分に対して不利であるときに良く使っていた。もっとも、この技(といえるかも疑問だが)が奏効するのはまれで、今回も多くの事例に倣って全く効果がなかったらしく、当の子供たちは大人の気遣いを無視して食卓に着いてしまっていた。その脇で申し訳なさそうに肩を竦めていた籐子も、隆之介の苦笑いを受けると自分の場所に着席して食事を取り始める。
「今日は一日晴れるらしいな」
自分の食器を片してきた隆之介が飾り棚の上に置いてある、小さい音でNHK第一が流れてくるラジオに目を向けながらポツリと呟いた。昨日、一昨日と大助がここにやって来たときは、ちょうど低気圧が去り際ということで、いま一つ快晴と呼べるような天気にはなっていなかった。スキー客にとっては少しは雲が掛かっていた方が滑り易くて良いかもしれないが、麓で仕事に追われる身としては澄み渡った空を望んでいた。
雪が降れば除雪をしなければならないし、雨が降れば雪と混じってぐちゃぐちゃになった道路を何とかしなければならない。雪はスキー場を観光資源としている土地にとってなくてはならないものだが、それを分かっていながらも都合の良い程度を期待してしまうのは人間の性だろう。もっとも、そういった「割り切り」を頭で考えてもどかしさを打ち消さなければならないのは隆之介たちが元々都会生まれ、都会育ちだからともいえる。地元の人間はそのような些細なことは気にせず、天から与えられたものをそのまま受け入れ、ありのままに生きるものだ。
「ん、まあいいや。それを食べ終わったら、食事の支度な」
何を考えついた訳でもなく、隆之介は三人の顔を一瞥してからさっさと厨房へ向かっていった。この辺りの割り切りの良さは、割り切られる側の子供にしてみると少なからず苛立ちの元になる。大助やタケルにしてみればもう少し突っ込んで、構ってもらいたいという思いもあるのだ。
わがままといってしまえばそれまでだが、自己主張をしたくても小学生のように騒ぐことができなくなった子供たちは、自分なりの表現方法を模索している途中であるだけなのだ。問題は、その表現力を育てる環境をどれだけ周囲の大人が用意できるかということで、もし子供が傍若無人に育ったとすれば、それは大人たちに「育てる」という意識が足りなかったといえる。本来、子供は繊細であるが、弱くはない。すべての子供が多彩な環境に打ち勝つだけの素養を持っているのではないだろうか?
食事の支度といっても自分の家で料理の手伝いをすることすら滅多にない大助が調理を任されるわけもなく、宿泊客数分の皿の用意と盛りつけ、そしてその配膳をするくらいである。が、それでも20人を越えるだけの量を手際よくこなすには経験と器用さ、加えてさじ加減というか要領の良さが必要であった。慌ててやればその分ミスを犯すのだが、ゆっくりするゆとりもないというときに、どこで妥協をするかという感覚を持っていないと苦労が増えるのである。ただ、妥協点を計ることに関しては大助は及第点をもらえそうだった。与えられた仕事を必要十分の範囲でそつなくこなすのである。完璧ではないが文句をいわれないレベルをクリアすることをやってのけるのは、普段から高校の部活で諸先輩にこきつかわれているからなのかもしれない。
――部活も、いや学校自体も、社会へ出るためのステップとはいうけれど……。
朝食の支度が終わった後で藤子に褒められると、軽く頬を染めながら、自信への照れ隠しのためにそんなことを考える。
日本の教育が危ないといわれ始めて久しいが、義務教育自体を非難する声は少ない。もっといえば、高等学校を中学校と統合し、義務教育の期間を長くしようという動きすらあったりもする。しかし、それが勉強する子供たちを思ってのことであるかは、少し疑問であったりもする。
――親が子供のお守りをめんどくさがって、行政に責任をなすりつけてるって、誰がいってたっけ?
何気なく思い出した言葉が、共働きの両親を持つ少女――つぐみの発言だと思い至り、大助はまたあの忘れようとしている苦痛を呼び覚ましてしまった。
「今の親たちはさ、自分のことで手一杯なんだよね。それがおかしいとか、そんなことを考えることも忘れちゃって、それくらい手一杯なんだよ。子供を、足枷と考えちゃうくらい、さ」
そうイッチョマエに語るつぐみも、自分の親が子供の頃がどんなだったかを想像することは少ない。親が子供に自分の少年少女時代を語って聞かせなくなったことが、親と子の格差を生み、不審を育てたとするのなら、親たちの自身に対する自信のなさが問題と言えよう。が、現代日本の場合、その行き着く先には戦争がある。半世紀を過ぎてもなお、未だに「戦争」という単語が固有名詞として機能する第二次世界大戦は、まさに日本人の価値観の根底を形成している。50有余年の間、自分たちは直接戦争に関与していないと言う事実は誇れるものであるだろう。しかしそれは、時間という魔物が忘却をもたらすのをただただ待ち焦がれるだけの、狡さではなかったかとすら思える。当事者は語ることを止め、その後人は聞くことをしなかった。その歪みは徐々に国の根幹を腐らせ、社会の基盤を揺るがしてゆく。
つづく