FREE BOOTLEG レビュー

ISLE OF WIGHT AND STOCKHOLM


「ウイルソンピケットスタイル ファイアーアンドウオーター!」


 非常に対照的なかつ優れた70年の2カ所のライブ音源を組み合わせた素晴らしいブートレグを紹介しましょう。
ワイト島のほうは、ヴィデオでも有名ですが、彼等のインタビューでも最も印象に残るライブとして回顧していますね。
本当に気合いの入ったギグだったのがよくわかる音源です。サイモンカークがインタビューでウイルソンピケットスタイルと評したこの日のロジャースは「グッ」「ガッ」と本当に黒っぽくそれに呼応するようにバンドもタイトに決めて実にソウルフル。
その後のフリーには見られない演奏かと思います。が、コゾフ先生ここでもやってくれてます。
原因はアンプなのかシールドなのか、「ブー」とか「ガー」とかライブの進行を妨げております。
考えてみれば、【LiVE】のオールライトナウのイントロの格好良さもトラブル?だったんでしょうね−。
しかしあれは71年の音源、ずっとトラブりっぱなしだったんでしょうかねー。他のメンツの「またかよー」てな感じのイヤな顔が目に浮かんできそうですね。
 ストックホルムのほうはじつに落ち着いた【テンションの低い?】ライブで、静かな観客を前に重く、味わいの深い演奏をしています。特に「LOAD」や「MY WAY」でのバラードでの演奏は白眉といえると思います。ある意味で非常にFREEらしい演奏と言えるでしょう。初々しくも味わい深い、やはりただものではなかったんですね

SCOTLAND 1972



『ミスターコゾフ、チューニングプリーズ!』

 72年という年はフリーにとって、再結成、アメリカンツアーの中断【コゾフの病状悪化】、フレイザーの離脱、
新メンバーでの日本公演、レコーディングと末期の混乱状態を呈したわけですが、このブートレグは、その混乱時期、ハートブレーカー発表前のイギリスツアーのものと思われ、非常に興味深い音源です。
 日本公演のメンバーにコゾフがカムバックした形のフリーの最終型でのこのツアー、
コゾフの最後の輝きが所々でかいま見られます。【翌年のラストツアーではほとんど弾けない状態で聞くのが辛いです。】
 ここでのFREEの演奏はオフィシャルアルバムでは聞かれない非常にヘビーでブルースロック的な【悪くいえばしまりのない】音で、KEYBOARD入りの【RIDE ON PONY】なんか、なかなか、かっこよいです【ほかのツアーでは聞けないと思います】。【FIRE AND WATER】なんかはテツがユニゾンでリフを弾くもんだからコゾフの歪んだギターとあいまって、ほとんどサバス状態になっております。
 歪んだ、かつでかい音で弾きまくるコゾフですが、チューニングもままならず、
新曲【WISHING WELL】では転調を忘れてめちゃめちゃになっております。【しかも最後まで気づかず、でかい音で】この状況のコゾフを翌年のツアーにも起用し続けたロジャースの胸中にはどんな思いがあったのか?【クレバーでプロ意識の高い彼が】コゾフの人気か?一緒にラリっていたのか? 
否、深い友情だったと思いたいですね。
 ピース【後にバドカンでリメイク】の曲やラビットの曲【BOXでリリース】をやってるなど特記事項は色々ありますが、
アンコールでのコゾフのこの日22歳の誕生日を祝うハッピーバースデーは何度聞いても胸にきますね。 あー酒のみたい

FREE STOKE 1972

「覆水盆に返らず?」

個人的な話で恐縮ですが、かつてコレクターの人からライブテープのリストを見せて頂いた時非常に驚きかつ興奮したのを良く
覚えています。なぜなら、当時アナログ盤のフリーのバイオには、
72年にUSやUKでギグをやった記載などなかった【他にも重要な記載がたくさん抜けていますが】からです。
しかもオリジナルメンバー!知らなかった!いかに80年代初頭にフリーを聞くことが、ジャングルの中に秘宝を探しに行くようなもの
だったか理解頂けたでしょう。宝の地図さえ間違っていたんですね。
このブートレグは【AT LAST】録音後、発表前のイギリス公演をおさめた、非常に貴重な音源です。 
当時どのような形でこの再結成が告知されたのか知りませんが、この熱狂的な反応!彼等が母国でいかに待ち望まれた存在かわかる
感動的なほどのオーディエンスに対しホットな演奏!と言いたいところですが、演奏はいたってクールな、悪く言えば、
テンションの上がり切らないギグになっています。
しかし、メンバーの技量は確実に上がっており、特にカークのドラミングの向上で安定したスケールの大きな演奏が楽しめます。
リハ不足なのかどーかわかりませんが、決めははずしても、強引に乗せていくスケールの大きさは
ZEPの73,75年位の【化け物的】な感さえします。オシイ、仲が悪くても続けられなかったんですかねー。関西の夫婦漫才みたいに。
さて特記すべき事だらけの音源ですが、ここでのコゾフのギターはセッション経験からか、南部的な味わいもあり、
フレージングも幅の広がりを感じます。【多少、集中力に欠けるような気もしますが。】先ほどふれたカークのドラムに関して顕著なのは、
【MR.BIG】のイントロで、ちょっとしたソロから入る新パターンですが、ノリが違う!FUNKY!とまでは行きませんが、
横乗りっぽい感じはとっても新鮮です。しかし、このブートの主役はナンと言ってもフレーザーのベースで、まさにやりたい放題、
バンドを引きずり回すそのプレーは、やる気があるのか?やけくそなのか判断出来ないほど【?】です。
特に【FRIEND】のベース【これも最後にベースソロのある新パターン】なんか本当に素晴らしい。
この人のベースに関しては書き出すときりがなくなる私ですが、多分キーボードの弾ける人は、
ベースが個性的ではないんでしょうかねー。【短絡的ですみません。】
特にバラードにおいてフレイザーはキーボートパートもフォローするがごとく、裏メロを紡ぎまくっております。
対しロジャースは新曲以外はそこそこに歌ってる感じがしないでもありませんね。
もう一度ガンバローという思いのメンバーもいれば、仕方なく参加したメンバー、金のためと割り切ったメンバーもいたかもしれない。
この音源を聞く限りにおいては、そういう中途半端な状況が目に見えるようです。
一丸となって燃え上がる瞬間がほとんどないのです。ハートが音にでる。当たり前ではありますが。

FREE LIVE IN JAPAN

「伝説のライブ」神田共立講堂

 私のような後追いの70年代ロックファンにとって、繰り返し【伝説】と呼ばれる講演ほど臍をかむような思いになる物はありません。
例えばZEPの初来日、72年のPURPLE、73年のパイ、75年のベック、そして71年のフリー。
もちろん時代背景や個人の思い入れも考慮しなくちゃならないんでしょうが、このフリーの初来日程見た人、見た人が絶賛するライブも
珍しいと思います。しかも【しかしながら、、】云々というト書きがつくこともなく。
しかしながら見ることが出来なかった人間からみると、伝説化されれば、されるほど【ホント?】と胡散臭く感じる物で【私だけか?】、
だいたいが、日本公演もののライブ音源が嫌いな私には鬼門と言えるブートレグでした。
この理事長所有のアナログブートレグ【!】はコンプリートではありませんが、その伝説の神田共立講堂をおさめたもので、
おまけに72年の後楽園から3曲追加されています。
ピッチも遅く、音も良くないこの音源から、このライブ自体評価するのはフェアーではないと思いますが、
ともかく凄まじい熱気だけは伝わってきます。
特にロジャースの声量のスゴサはきっと見た人はびっりしたんではないでしょうか。【PAの人もびっくりしたんでしょうねー。
ヴォーカル、音が割れてます。【笑】】熱狂的な観客に答え解散目前とは思えない、気合いの入ったギグではありますが、、、、
 上記の【伝説】の日本公演もブートレグ等でほぼ聞けるようになった現在、
私なんかはそれらを聞いて思いを馳せるしかないわけですが、やっぱり見た人とのギャップは大きいというのが、実感ですね。
ところで最終のオーストラリア公演はテープは出回ってるんでしょうかねー。


THE METALLIZED BLUES

「裏 FREE LIVE」

 よく言われることですが、イギリスでとったライブはアメリカのバンドでも何故かイギリスっぽくなり、逆も又しかりという話があります。どう感じるかは、それぞれかとは思いますが、このフロリダでのギグは、まるでしがらみから解放されたかのように集中力ある演奏を
する瞬間が収められています。特に前半の集中力は素晴らしく、オープニングの【HUNTER】の悪魔的な演奏は類をみない程で、
銃を構え照準を定めた4人の男てな風情です。ブルースをデフォルメし叩きつけるかのごとくヘビーにドラマチックに演奏する。
ブリティッシュブルースロックの鏡みたいな演奏です。こういう難曲をドラマチックに歌い込んでいくロジャースにはいつもながら、
惚れてしまいますねー。続く【FIRE】も極めて悪魔的でヘビーな演奏で、
「LIVE」の時期とは明らかに違うサムシングを感じずにはいられません。
こーいうヘビーでありながらセクシー、ヤバイが美しいといった、70年代のイギリスのいくつかの優秀なバンドしか持ち得なかった個性。
聞くたびにオシイと感じます。
この後コゾフは倒れツアーは中断しフレーザーは2度と戻ってきませんが、ここでもやりたい放題弾きまくっております。
しかしほかのベースプレーヤー【弾きまくる人たち】と比べて嫌みにならないのは何故でしょう?センスの良さ?
他のメンバーのシンプルな演奏スタイルにも関係があるのかもしれませんね。
コゾフも調子が比較的良い様子で、【FRIEND】のソロなんか泣けます。
この人のギターにはジャニスの歌と同じものを−無垢な裸の感性というか、ストレートに心に入り込んで、胸をかきむしる−感じます。
さてトリをとったと思われるFACESの同日【多分】のブートレグも出回っています。
アンコールで、ロッドスチュワートとロジャースのツインヴォーカル、ロニーウッドとコゾフのツインリードといった当時見られたら、
気絶しそうなメンツでジャムをやってます。イギリスでの熱狂的なオーディエンスと比べると、
フリーの知名度が低いのがわかる【イントロでわくのはオールライトナウくらい】音源ですが、
逆に発表前の【AT LAST】のシンプルな曲の反応は比較的良く、
FACESの人気を横目に、【アメリカで成功する音】をこのとき掴んだのかもしれませんね。

Rockの部屋に戻る