商品名 DRAMA CD ONE 〜輝く季節へ〜 VOL.3 開かれた扉
2000年1月30日発売 ¥3000+税
販売 株式会社ムービック

CAST
川名みさき●雪乃五月
折原浩平●野島健児
長森瑞佳●皆口裕子

教師A●吉竹範子
教師B●北谷彰基
校長先生●服巻浩司
女生徒A●有島もゆ
女生徒B●町井美紀

INDEX
01.夕焼け、きれい?
  (Sanctuary)
02.約束したよね・・・なのに、どうして?
  (I was not able to keep the promise)
03.屋上は好きな場所
  (Important thing)

04.卒業まで、あっと言う間なんだろうね
  (World)
05.雨、やんじゃったね
  (Place which is eternal)
06.わたしで、いいの?
  (Christmas party)
07.本当に嬉しかったんだよ
  (I become a grown-up)

08.もしかして、泣いてるの?
  (Do not forget it)
09.この学校は私が唯一光を取り戻せる場所だったんだ
  (Graduation)
10.わたしばかだから・・・言葉どおりにうけとるよ
  (I am on the side of a seniol)
11.信じるよ。浩平君の言葉、全部。
  (I believe. It is all world, of you.)
12.どうして、今まですぐ側にある世界に気づかなかったんだろう
  (I who am fading away)
13.わたしはここからどこへでもいける
  (EPILOGUE-door that was open)



*トラック1
///プロローグ///
はじめは……空。夕焼け。真っ赤な雲。
次に学校。部活動してるみんな。遠くに見える桜。
白い壁の校舎。渡り廊下。教室の黒板。下のほうに書いてある日直の名前。
緑色のペンキで塗られた重いドア。立ち入り禁止の札。
フェンスによりかかって空を見上げる。暖かい風。
屋上は好きな場所。
私はここから、どこへでも行ける。
本当だよ。
本当だよ。

学校と、空だけ。
あなたは何処へも行けない。
記憶の中にあるものだけが、あなたの世界。
そこから先は何もない。ただの、闇。

夕焼け、奇麗?


*トラック2
///走ってくるみさき///
はぁ、はぁ、はぁ。おまたせ、浩平君。おじさんにね、一つおまけしてもらったよ。
新発売のヨーグルト味なんだって。あっ、これ私が食べてもいいのかな?
はい、これが浩平君の分だよ。
はい、浩平君が選んでね。
ねえ、どうしたの?早く取ってくれないと私が全部食べちゃうよ。
///ベンチに腰掛ける///
そうだ、また二人で何処かで出かけようよ。
浩平君、もうすぐ夏休みだよね?
私ね、いっぱい行ってみたいところがあるんだよ。
目が見えるようになってからって思ってたんだけど、浩平君と一緒なら。
ねえ……どうしたの、浩平君。
///ざわめく風 通行人の声///
約束したよね……ずっと一緒にいるって。
なのに、どうして。

ONE 〜輝く季節へ〜 開かれた扉

///こうへい回想///
ぼくはさがしていた。
なにを?
たいせつなもの。
それは、あなたがもっていたもの?
もっていたもの。でもなくしてしまった。やくそくをしたのに。


*トラック3
夕焼け、奇麗?
そうだな、65点ってところか。
結構辛口なんだね。
俺は夕焼けにはうるさいんだ。
そうなんだ。
はーーーっ。いい風が吹いてるね、今日は。
そうか?
うん。95点くらいあげてもいいかな。
結構いい点だな。
私この場所が好きだからね。
あっ、そういえば、夕焼けの次の日が晴れって迷信らしいよ。
えっ、そうなのか?本当なんだと思ってたよ。
夕焼けを見ていると、明日が晴れだって気分になるけどね。
私は川名みさき。あなたは?
俺は折原浩平。
よろしくね、浩平君。
浩平君って……おい。
だったら、浩平ちゃん。
それは絶対に嫌だ。
わたしのことも、みさきちゃんって呼んでいいよ。浩平ちゃん。
俺に選択の余地は無いのか?
かわいいのにー。
あのなあ、俺の何処を見たらかわいいなんて言葉が出てくるんだ。
雰囲気、かな?
私、人を見入る目はあると思うんだ。
目は見えないんだけどね。
もしかして、1年上の先輩で……
うん……多分そうだよ。
///流れる沈黙///
どうしたの?
いや、その……目の不自由な人と話したこと無いから、どんな風に接すれば良いのかわからなくて。
普通で……いいと思うよ。
そう……だよな。
うん……そうだよ。
じゃっ、改めて自己紹介。俺は2年の折原浩平だ。よろしく、みさき先輩。
よろしくね、浩平ちゃん。


///みさき回想///
はじめに思い浮かべるのは、空。次に雲。
私は、順番に心の中に風景を思い浮かべていく。
そうすると、すっと浩平君の顔が思い浮かんでくる。
見たことの無い浩平君の顔が。
そして浩平君は、にっこりと笑って言うんだ。
明日はいい天気だな。
だから私も笑って答える。
そっか、今日は夕焼けなんだ。

*トラック4
ドサッ。誰かとぶつかる
きゃっ。
う〜、痛いよ〜〜。目がちかちかするよ〜〜
あっ、えーと、ごめんなさい。大丈夫でしたか?
沈黙
えと、あの、もしかして、すごく怒ってますか?
はははっ、先輩。俺だって。
えっ、浩平君?
こんにちは、みさき先輩。
うーん、ひどいよ〜。こんにちはじゃないよ〜。
もしかしたらぶつかった人が気絶したんじゃないかって、本当に心配だったんだよ。
悪かった、本当にわるかった。ごめん。
ふぅ。わかったよ。許してあげるよ。
でもその代わり、必ずお返しするからねっ。
勝負は中断しちゃったけど、せっかくだから屋上にでも行くか。
歩き出す二人
屋上にどっちだ先に来るか、勝負はちょうど引き分けだね。
最初が浩平君で、次が私。
だからさー、先輩のほうが屋上に近いだろ。だから俺の勝ち。
ずるいよ〜。言ったでしょ、ハンデだって。
そうだな。
女の子だから(浩平)
女の子だからね(先輩)
ふふふふっ
笑い出す二人
ガタン。扉を開く。吹きつく風。
やめよう。ここは人間の来るところじゃない。
寒かったの?
寒かったなんてもんじゃない。キタキツネとかシロクマが生息していそうな寒さだ。
そっかー。もうそんな季節なんだね。
早いよな時間が経つのも。
卒業まで、あっという間なんだろうね。


思い出は、いつも夕焼けに通じている。
私の思い出は、真っ暗なスクリーンに映し出されて、大好きな世界を映し出す。
学校と、空。
でも……それはきっと、夢。


*トラック5
そうだ、これから商店街へ行かないか?
今は年末だから、クリスマスの飾り付けとかで、賑わっていると思うんだ。
きっと楽しいんじゃないかな。
そうだよね……
よし、だったら行こう。先輩。
あっ、うっ。
 うずくまる先輩
先輩?
ごめんね浩平君。浩平君がひっぱるから転んじゃったよ。
ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ。
うん、わかってるよ。
今日は、これから用事があるからだめなんだよ。
 すたすたすたすたすた 家に向かって歩き出す先輩
誘ってもらえて嬉しかったよ。バイバイ、公平君。
 ガチャ、ギィー 川名家扉開く バタン


そう……ぼくはたいせつなものをもっていたんだ。
なにを、あなたはもっていたの?
おもいだせない。けっしてうしないたくなかった、なにか。
おもいだせないなら、それはたいせつなものじゃなかったんだよ。
ちがう。たいせつなものだ。
ぼくは、そのことをきみにつたえるために、ここにきたんだ。

 たったったっ 走ってくる先輩
はぁ、はぁ、はぁー。
先輩。どうしたんだ、忘れ物か?
図書館に本を返すのを忘れていたんだよ。
うちに帰ってから思い出して、戻ってきたの。
こういう時、家が近いと便利だよなー。
 ペラリ 本をめくる
先輩、これって?
うん。点字の本だよ。
へぇー。
前には読めなかったんだけど、最近読めるようになったんだよ。
やっぱり読めた方が良いからね。ちゃんと勉強したんだよー。
テスト期間なのに返しに行くのか。大変だよなー。
くすっ、返却日は先週だったんだよ。
浩平君はどうしたの。今、帰り?
ああ。俺も図書室へ行くところ。
試験勉強に行くの?
まあ、そんなもんだ。じゃあ、行こうか。
 こつこつこつこつ 歩き出す浩平
そっちの階段じゃないよー。
もしかして、図書室に行ったこと無いの?
言われてみれば、一度も無いな。
くすっ、珍しいね。
確かに。
こっちだよ、付いてきて。
 たったったったっ 走り出す二人
そんなに走って大丈夫なのか?
っ、はぁ、はぁ。私は走るの好きだよ。
っ、はぁ、はぁ。付いたよ。
 ガラガラガラガラ 図書室の扉開ける。
へ〜、結構立派なんだなー。
 ざわめく図書室。
図書室ではお静かにって、壁に貼ってない?
うーん。いきなり図書室が嫌いになりそうだ。
浩平君だって悪いんだよ。テスト期間中だから余計にね。
ちょっと待っててね。本を返しに行って来るから。
 こつこつこつこつ 歩き出す先輩
すみません、この本返却したいんですけど。
 ガラガラガラ 扉開く
おまたせ。
怒られてたのか。
うーん。そんなことないよ。
流石に半年遅れたときは怒られたけど。
もしかして、延滞の常習犯じゃないのか?
うーん、そうかもしれない。
ちゃんと返却日前に持ってくるんだけど、机に入れたまま忘れちゃうんだ。
忘れっぽいからね。
先輩って、しっかりした感じに見えるんだけどなー。
落ち着いて見えるし。
そうだったんだ。知らなかったよ。
そういえば、さっきの図書委員とは知り合いなのか?
うんう。全然知らない人だよ。
もしかしたら、廊下ですれ違ったくらいはあるかも知れないけどね。
親しそうに喋っていたから、知り合いかと思った。
私、目が見えないからね。
相手のことをよく知ろうと思ったら、話すしかないんだよ。
言葉と言葉を交わして、それで相手のことがわかって、私のこともわかってもらう。
私には、それしかないからね。
そっか。
うん。でも結局は人と話すのが好きだからと言うのが、一番の理由だけどね。
そうだ、浩平君の住所、教えて。
住所?
うん、浩平君に年賀状を書こうと思って。
もう、そんな時期なんだなー。
うん……あっという間だよ。
 パラパラ、ザッ。(生徒手帳を取り出す)
ここに書いてくれるかな。
じゃあ、俺も先輩に年賀状を書くから、住所を教えてくれるか。
うん、嬉しいなー。
楽しみにしてるよ。浩平君の年賀状。
あんまり期待しないでくれ。そんな凝ったものは出来ないから。
それでも嬉しいよ。
じゃあ、今日辺り年賀葉書を買っておくよ。
うん。


夢は、私を幸せの場所へと運んでくれる。
まるで、風に乗った花の種が、暖かい島に辿り着くように。
だけど、いつまでもそこに居ちゃいけないときだってある。
その夢は、偽りの現実だから。


みさき先輩。
雨……やんじゃったね。
雨が好きなのか?
雨は濡れるから嫌いだよ。
でも、振っていて欲しいときもあるよ。
 沈黙
みんな、この空の向こうに居るんだよねー。
みんなって?
お友達だよ。クラスのね。
さっきまでみんな一緒にお喋りしてたんだけどね、雨が止んだらみんな行っちゃったよ。
先輩は一緒に行かないのか?
 沈黙
でもな、こんなとこに居ても、仕方ないと思うぞ。
私もそう思う。
だったら一緒に帰ろうか。家まで送っていくよ、先輩。
そうだね……ありがとう、浩平君。行こっか。
 すたすたすた 帰路へと進む二人
今日はね、良いことだってあったんだよ。
そうなのか?
だって……浩平君と会えたからね。


すぎていくきせつ。こころにのこるいたみ。たいせつなものがあった、ばしょ。
ここにはすべてがあるよ。あなたがのぞんだものはすべて。
ここでは、あのなつのひはけっしておわらない。
えいえんにつづくものなんてない。いつかおわるよ。
このせかいはおわらないよ。もうおわっているんだから。
たしかに、ここにはすべてがある。ぼくがのぞんだものはすべて。
ここでは、あのなつのひはけっしておわらない。
えいえんは……ここにある。


*トラック6
 ガヤガヤガヤ 2学期の終わりを告げる喧噪
「また明日ー」は無いと思う(苦笑)


先輩?
まだ居たんだね、浩平君。
ちょっと、用事があったんだ。
先輩は?
私は、何となくね。
みんな居なくなっちゃったね。
そうだな。
だから、浩平君が声をかけてくれて、嬉しかった。
明日から冬休みだからな。
みんな、遊び回るつもりなんだろう。
浩平君は帰らないの?
これから商店街にでも寄ろうと思ってるんだけど、良かったら先輩も行かないか?
 返事は無い
だめか?
ごめんね、浩平君。
っ…………だったら、ここでやろう。
ここで?何を?
クリスマスパーティだよ。
パーティ?
多分うちに帰ったら、昔使ってたクリスマスの飾りとかが残っていると思うんだ。
せめて電飾のツリーくらいは飾って、それからお菓子とジューズくらいは用意して。
そうしたら、十分クリスマスの雰囲気は味わえると思うんだけどな。
浩平君に迷惑が掛かるよ。
俺は何も予定がないから、全然構わない。
私で良いの?
ああ。
だったら、ここで待ってるね。
すぐに戻ってくるから。
うん、待ってる。


私のスクリーンに映るものは夢。
夢はいつか覚めなければいけない。
だって、それは嘘だから。
本当の闇。
何も見えない暗黒を煮詰めたような、真っ黒な闇。
でもいつからだろう。
そこに灯りが灯る。
小さな灯り。
優しい温もり。


 たったったっ 走ってくる浩平
浩平…君?
悪い、遅くなった。
くすっ、うんう、私も今来たよころだったから。
えっ?
くすっ、一度言ってみたかったんだよ、今のセリフ。
っははは。
どうして笑うんだよ。
 ガサガサッゴト 手に持った袋を置く
メリークリスマス、先輩。
メリークリスマス、浩平君。


えいえん……えいえんってなに?
おわらないこと、つづいていくこと、いつまでもそこにあること。
おわらないこと、つづいていくこと、いつまでもそこにあること……
そうだよ。
じゃあ……これはなに?


そうだ、一応蝋燭があったんだ。
 ガサガサッカパッ 蝋燭を取り出す
どんな蝋燭?
仏間にあった蝋燭。幼馴染みの家から徴収してきた。これしかなかったらしい。
仏壇から取ってきたの?
とりあえず、机の上に立ててみたけど……
うふふふっ、っ、
何だよ、先輩、突然。
きっと、凄く変な光景だろうなって、想像しちゃった。
 っ、コホン 気を取り直す先輩
ねえ、蝋燭に火を点けてみようよ。
少しはクリスマスらしくなるかも知れないし。
そうだな。
一応、蛍光灯は消した方が良いと思うよ。
そうだな。
 スタスタスタスタ、カチッ
 シュッ、シュボッ
クリスマスに見えるかな?
現状維持って所だな。
そっか。
ごめんな、こんなものだけで。クリスマスらしいもの、全然集められなくて。
約束、守れなかったな。
あのね。約束って、結果じゃなくて、守ろうとしたかどうかが大切なんだと思うんだよ。
浩平君は、私のために頑張ってくれたんだよね。
だから、私は嬉しいよ。
ほら……蝋燭、暖かいよ。
だから、私はこれで十分だよ。

次に会えるのは、来年かな?
その時はまた、元気に挨拶してね、浩平君。
ああ。
ありがとう、浩平君。


指先に触れる、『あけましておめでとう』の文字。
浩平君の文字。
浩平君が、私に残してくれた言葉のかけら。
私は、蝋燭の火を守るように、そっと両手をかざして守る。
その思い出が、決して消えてしまわないように。


*トラック7
 ゴーーー 静かに吹く風
みさき先輩。
浩平君だったんだ。お久しぶりだよね。
そうだな、去年のクリスマス以来か。
今、始業式が終わったところ?
ああ。今日は子供時代の感動秘話を、えんえんと聞かされた。
くすっ、あの人は話し好きだからね。
炎天下のグラウンドでなくて、本当に良かったよ……って、先輩は始業式には出なかったのか?
ふふん、さぼっちゃった。
ああっ、裏切り者。
だって、退屈だからね。
それはそうだけど、何だか理不尽に感じるぞ。俺もさぼれば良かった。
くすっ、そういえば、挨拶をまだしてなかったね。
浩平君、あけましておめでとう。
あ、ああ。
そうだ、年賀状ありがとう。それも2枚も。
ちゃんと、読めたのか。
うん。「あけめして」って書いてあったけど。
あれ、どうやって打ったの?点字の筆記具ってすぐには手に入らないよね。
爪楊枝の裏で押したんだ。
くすくすくすっ
笑うなって。
ご、ごめん、ちょっと想像しちゃって。
でも大変だったでしょう?
……ごめんな。
どうしたの?
先輩は俺のために届くように書いてくれたのに。
ありがとう。
えっ?
だって、ちゃんと届いたからね。
俺は自分が許せない。最低な奴だ。
そんなことないよ。だって、嬉しかったから。
本当に……嬉しかったから。 
先輩…
本当に嬉しかったんだよ。
だから、ありがとうだよ。
だから、どんな悲しいこと言わないで。
みさき先輩。あけましておめでとう。今年もよろしく。
ぐすっ。
どうしたの、いきなり改まって。
なんとなくな、言いたかったんだ。
だったら私も。こちらこそ、宜しくお願いしますね。
先輩、ありがとう。


でも、ぼくがのぞんだものはまちがっていたんだよ。
どうして?
それはたぶん、ただしくないことだからだよ。
こどものままでいることも、きずからめをそむけることも。
ぼくは、ぼくじゃないものをまもるために、だいしょうをはらわなければいけないんだよ。
どういうこと?
おとなになるんだよ。


浩平君、どうしたの?
先輩、この部屋なんだ?
 少しの沈黙
社会科資料室だよ。
社会科資料室。立入禁止にしていたら備品とかどうするんだ。
ここはほとんど使っていないんだよ。
昔ね、この中で遊んでいた子供が事故にあったんだ。
だからそれ以来、誰も入れないことになっているんだよ。
事故?
詳しくは知らないけどね。


ときどき、夢を見る。
小さな頃の夢。
明るい空。みんなの笑い声。公園の桜。
全てが鮮やかで、私はその中を走り抜けていく。
どこまでも走っていけそうな気がする。
いつの間にか私は、赤い羽根の鳥になってる。
鳥は好きなところを何処へでも飛んでいける。
でも、その夢はいつも突然途切れる。
バタンッ、と大きな音を立てて扉が閉まる。
扉が閉まってしまったら、何も見えない。


あっ、浩平。
何だ、長森か。
なんだは無いでしょうー。
あっ、えっと……
先輩の、川名みさきさんだ。
こんにちは、川名先輩。
こんにちは。
こいつは長森瑞佳って言う幼馴染みなんだけど、いい年をして未だに世話を焼きたがる奴なんだ。
もういい加減うっとおしい気もするんだが。
なかなか失礼な紹介じゃないか、浩平。
まっ、半分は冗談だ。気にするな。
じゃあ、半分は本気なんじゃないかー。
あっ、またネクタイ曲がってるよ浩平。
いいだろう別に。なあ、先輩。
だめだよ。服装の乱れは心の乱れって。
生徒指導の先生みたいなこと言うな。
 ネクタイを直す瑞佳
はい、これでよしっと。
じゃあね、浩平。川名先輩も。
 立ち去る瑞佳
な?世話焼きだろ。
そうだね……
どうした?
なんでもないよ……うん。


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