1-2 国税と被担保債権の優先関係
[1]国税優先の原則
国税は、納税者の総財産について、別段の定めがある場合を除き、すべての公課その他の債権に先だって徴収する。
[2]留置権の優先
(1)内容
留置権が納税者の財産上にある場合において、その財産を滞納処分により換価したときは、その国税は、その換価代金につき、その留置権の被担保債権に次いで徴収する。
この場合において、その債権は、質権、抵当権、先取特権又は担保のための仮登記の被担保債権に先だって配当するものとする。
(2)証明方法
(1)の規定は、その留置権者が、滞納処分の手続において、その行政機関等に対し、その留置権がある事実を証明した場合に限り適用する。
この証明は、留置権がある事実を証する書面又はその事実を証するに足りる事項を記載した書面を売却決定の日の前日までに税務署長に提出することによってしなければならない。
[3]不動産保存の先取特権等の優先
(1)内容
不動産保存の先取特権等が納税者の財産上にあるときは、国税は、その換価代金につき、その先取特権の被担保債権に次いで徴収する。
(2)証明方法
(1)の規定は、登記をすることができる先取特権以外の先取特権については、その先取特権者が、強制換価手続において、その執行機関に対しその先取特権がある事実を証明した場合に限り適用する。
この証明は、滞納処分にあっては、その先取特権がある事実を証する書面又はその事実を証するに足りる事項を記載した書面を売却決定の日の前日までに税務署長に提出することによってしなければならない。
[4]質権又は抵当権の優先
(1)内容
@法定納期限等以前に設定された質権又は抵当権の優先
納税者がその財産上に質権又は抵当権を設定している場合において、その質権又は抵当権が国税の法定納期限等以前に設定されているものであるときは、その国税は、その換価代金につき、その質権又は抵当権の被担保債権に次いで徴収する。
A譲受前に設定された質権又は抵当権の優先
納税者が質権又は抵当権の設定されている財産を譲り受けたときは、国税は、その換価代金につき、その質権又は抵当権の被担保債権に次いで徴収する。
(2)証明方法
(1)の規定は、登記(登録及び電子記録を含む。以下同じ。)をすることができる質権以外の質権については、その質権者が、強制換価手続において、その執行機関に対し、その設定の事実を証明した場合に限り適用する。
この証明は、滞納処分にあっては、質権設定の事実を証する書面又はその事実を証するに足りる事項を記載した書面を売却決定の日の前日までに税務署長に提出することによってしなければならない。
この場合において、有価証券を目的とする質権以外の質権については、その証明は、次に掲げる書類によってしなければならない。
@公正証書
A登記所又は公証人役場において日付のある印章が押されている私署証書
B郵便法の規定による内容証明を受けた証書
C公証人法の規定により交付を受けた書面
(3)証明をしない優先質権の特例
(1)@の質権を有する者は、(2)の証明をしなかったため国税におくれる金額の範囲内においては、(1)@の規定により国税に優先する後順位の質権者に対して優先権を行うことができない。
(4)優先額の限度等
@内容
(1)により国税に先立つ質権又は抵当権の被担保債権の元本の金額は、その質権者又は抵当権者がその国税に係る差押又は交付要求の通知を受けた時における債権額を限度とする。
ただし、その国税に優先する他の債権を有する者の権利を害することとなるときは、この限りでない。
A増額登記
質権又は抵当権の被担保債権額又は極度額を増加する登記がされた場合には、その登記がされた時において、その増加した債権額又は極度額につき新たに質権又は抵当権が設定されたものとみなして、(1)の規定を適用する。
[5]不動産賃貸の先取特権等の優先
(1)内容
不動産賃貸の先取特権等が納税者の財産上に国税の法定納期限等以前からあるとき、又は納税者がその先取特権がある財産を譲り受けたときは、その国税は、その換価代金につき、その先取特権の被担保債権に次いで徴収する。
(2)証明方法
(1)の規定は、登記をすることができる先取特権以外の先取特権については、その先取特権者が、強制換価手続において、その執行機関に対し、その先取特権がある事実を証明した場合に限り適用する。
この証明は、滞納処分にあっては、その先取特権がある事実を証する書面又はその事実を証するに足りる事項を記載した書面を売却決定の日の前日までに税務署長に提出することによってしなければならない。