1-4 担保のための仮登記と国税の関係
[1]担保のための仮登記により担保される債権の優先等
(1)法定納期限等以前にされた仮登記により担保される債権の優先
国税の法定納期限等以前に納税者の財産につき、その者を登記義務者として担保のための仮登記がされているときは、その国税は、その換価代金につき、その担保のための仮登記の被担保債権に次いで徴収する。
(2)譲受前にされた仮登記により担保される債権の優先
納税者が担保のための仮登記がされている財産を譲り受けたときには、国税はその換価代金につき、その担保のための仮登記の被担保債権に次いで徴収する。
(3)仮登記担保権付財産の譲渡
次のすべてに該当するときは、納税者の国税は、仮登記担保権者から、その者が譲渡財産に係る強制換価手続において、担保のための仮登記の被担保債権につき配当を受けるべき金額のうちから徴収することができる。
@納税者が他に国税に充てるべき十分な財産がない場合において、その者がその国税の法定納期限等後に担保のための仮登記をした財産を譲渡したこと
A納税者の財産につき滞納処分を執行してもなおその国税に不足すると認められること
[2]国税と物上代位権の調整
担保のための仮登記がされている納税者の財産上に、次に掲げる担保権が設定されているときは、その国税は、その仮登記担保権付財産についての清算金に係る換価代金につき、物上代位の規定により権利が行使された次に掲げる被担保債権に次いで徴収する。
(1)不動産保存の先取特権など
(2)国税の法定納期限等以前からある不動産賃貸の先取特権など
(3)国税の法定納期限等以前に設定された質権若しくは抵当権
(4)国税の法定納期限等以前にされた後順位の担保のための仮登記
[3]担保のための仮登記のある財産に対する差押の効力
(1)清算金支払前の差押の効力
担保のための仮登記がある財産につき、滞納処分による差押が清算金の支払の債務の弁済前(清算金がないときは、清算期間経過前)にされたものであるときは、仮登記担保権者は、その仮登記に基づく本登記の請求をすることができない。
(2)清算金支払後の差押の効力
担保のための仮登記がある財産につき、滞納処分による差押が清算金の支払の債務の弁済後(清算金がないときは、清算期間経過後)にされたものであるときは、仮登記担保権者は、その財産の所有権の取得をもって、差押債権者に対抗することができる。
[4]担保のための仮登記の権利者に対する差押の通知
税務署長は、仮登記がある財産を差し押えたときは、仮登記の権利者に対し、その旨その他必要な事項を記載した差押通知書により通知しなければならない。
なお、その仮登記が担保のための仮登記と認められるときは、その旨を差押通知書に付記しなければならない。
[5]換価の制限
(1)不服申立による換価の制限
担保のための仮登記がされている財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立についての決定又は裁決があるまで、することができない。
(2)訴訟による換価の制限
[4]の通知(担保のための仮登記に係るものに限る。)に係る差押につき訴えの提起があったときは、その訴訟の係属する間は、その国税につき滞納処分による財産の換価をすることができない。
[6]用語の意義
担保のための仮登記とは、仮登記担保契約に関する法律に規定する仮登記担保契約に基づく仮登記又は仮登録をいう。