1-5 譲渡担保権者の物的納税責任
[1]要件
次のすべての要件に該当するときは、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収することができる。
(1)納税者が譲渡した財産(手形を除く。)でその譲渡により担保の目的となっているものがあること
(2)その譲渡担保の設定が国税の法定納期限等後にされたものであること
(3)納税者が国税を滞納しており、その者の財産につき滞納処分を執行してもなお徴収すべき国税に不足すると認められること
[2]手続
(1)譲渡担保権者に対する告知等
税務署長は、譲渡担保財産から納税者の国税を徴収しようとするときは、譲渡担保権者に対し、徴収しようとする金額その他必要な事項を記載した書面により告知しなければならない。
この場合においては、その者の住所又は居所の所在地を所轄する税務署長及び納税者に対してその旨を通知しなければならない。
(2)譲渡担保財産に対する滞納処分
(1)の告知書を発した日から10日を経過した日までにその徴収しようとする金額が完納されていないときは、徴収職員は、譲渡担保権者を第二次納税義務者とみなして、その譲渡担保財産につき滞納処分を執行することができる。
(3)第二次納税義務に関する規定の準用
次に掲げる事項については、第二次納税義務者に関する規定を準用する。
@繰上差押
譲渡担保権者に対する告知書を発した日から10日を経過した日までに譲渡担保権者について繰上請求の事由が生じたときは、直ちに滞納処分を執行することができる。
A求償権
譲渡担保財産から納税者の国税を徴収したときは、譲渡担保権者から納税者に対してする求償権の行使を妨げない。
(4)換価の制限
@換価の順序
譲渡担保財産の換価は、財産の価額が著しく減少するおそれがあるときを除き、納税者の財産を換価に付した後でなければ、行うことができない。
A不服申立による換価の制限
譲渡担保財産の滞納処分による換価は、その財産の価額が著しく減少するおそれがあるとき、又は不服申立人から別段の申出があるときを除き、その不服申立についての決定又は裁決があるまですることができない。
B訴訟による換価の制限
譲渡担保権者が譲渡担保権者に対する告知に係る国税に関する滞納処分につき訴えを提起したときは、その訴訟の係属する間は、その国税につき滞納処分による財産の換価をすることができない。
[3]納税者の財産として行った滞納処分の続行
(1)譲渡担保財産を[1]の納税者の財産としてした差押は、[1]の要件に該当する場合に限り、[2]による差押として滞納処分を続行することができる。この場合において、税務署長は、遅滞なく、[2]の告知及び通知をしなければならない。
(2)税務署長は、[3](1)により滞納処分を続行する場合において、譲渡担保財産が次に掲げる財産であるときは、それぞれの者に対し、納税者の財産としてした差押を[2]による差押として滞納処分を続行する旨を通知しなければならない。
@第三者が占有する動産又は有価証券 動産又は有価証券を占有する第三者
A債権又は第三債務者等がある無体財産権等の規定を受ける財産 第三債務者又は第三債務者等
(3)税務署長は、[3](1)により滞納処分を続行する場合において、質権者等に対する差押の通知に掲げる者のうち知れている者があるときは、これらの者に対し、納税者の財産としてした差押を[2]による差押として滞納処分を続行する旨を通知しなければならない。
[4]譲渡担保財産が確定的に譲渡担保権者に帰属した場合の続行
[2]による告知又は[3]の適用を受ける差押をした後、納税者の財産の譲渡により担保される債権が債務不履行その他弁済以外の理由により消滅した場合においても、なお譲渡担保財産として存続するものとみなして、[2](2)から(4)を適用する。