3-3 差押の通則など

[1]督促を要する差押
(1)原則
滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納しないときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
(2)繰上差押
国税の納期限後督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき、繰上請求の事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
(3)第二次納税義務者又は保証人についての適用
第二次納税義務者又は保証人について適用する場合には、督促状を納付催告書とする。

[2]超過差押の禁止
国税を徴収するために必要な財産以外の財産は、差し押えることができない。

[3]無益な差押の禁止
差し押えることができる財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び徴収すべき国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の金額の合計額をこえる見込がないときは、その財産は、差し押えることができない。

[4]果実に対する差押の効力
(1)天然果実に対する効力
差押の効力は、差押財産から生ずる天然果実に及ぶ。
ただし、滞納者又は第三者が差押財産の使用又は収益をすることができる場合には、その財産から生ずる天然果実については、この限りでない。
(2)法定果実に対する効力
差押の効力は、差押財産から生ずる法定果実に及ばない。
ただし、債権を差し押えた場合における差押後の利息については、この限りでない。

[5]一般の差押禁止財産
滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に欠くことができない生活用具、滞納者の業務に欠くことができないもの、滞納者の精神的文化的生活の尊重のためのもの又は社会保障制度の維持等のためのものなど一定のものは、差し押えることができない。

[6]給与の差押禁止
(1)内容
給料等については、次に掲げる金額の合計額に達するまでの部分の金額については、差し押えることができない。
(イ)給料等につき源泉徴収される所得税に相当する金額
(ロ)給料等につき特別徴収される地方税に相当する金額
(ハ)給料等から控除される社会保険料に相当する金額
(ニ)最低生活費保障額
(ホ)体面維持費
(2)同一期間内に2以上の給与等がある場合
滞納者が、同一期間につき2以上の給料等の支払を受けている場合には、最低生活費保障額及び体面維持費については、その合計額につき、一定の方法により差押禁止額を計算する。

[7]条件付差押禁止財産
次に掲げる財産は、滞納者がその国税の全額を徴収することができる財産で、換価が困難でなく、かつ、第三者の権利の目的となっていないものを提供したときは、その選択により、差押をしないものとする。
(1)農業に必要な機械、器具、家畜類、飼料、種子その他の農産物、肥料、農地及び採草放牧地
(2)漁業に必要な漁網その他の漁具、えさ、稚魚その他の水産物及び漁船
(3)職業又は事業の継続に必要な機械、器具その他の備品及び原材料その他たな卸をすべき資産

[8]相続等があった場合の滞納処分の効力
(1)滞納者の死亡等の前に行われた滞納処分
滞納者の財産について滞納処分を執行した後、滞納者が死亡し、又は滞納者である法人が合併により消滅したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
(2)滞納者の死亡後に行われた滞納処分
滞納者の死亡後その国税につき滞納者の名義の財産に対してした差押は、その国税につきその財産を有する相続人に対してされたものとみなす。ただし、徴収職員がその死亡を知っていたときは、この限りでない。
(3)信託受託者の任務終了後、新受託者の就任までの滞納処分
信託の受託者の任務が終了した場合において、新たな受託者が就任するに至るまでの間に信託財産に属する財産について滞納処分を執行した後、新たな受託者が就任したときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。
(4)信託受託者である法人の信託財産に属する財産についての滞納処分
信託の受託者である法人の信託財産に属する財産について滞納処分を執行した後、その受託者である法人としての権利義務を承継する分割が行われたときは、その財産につき滞納処分を続行することができる。

[9]仮差押等がされた財産に対する滞納処分の効力
滞納処分は、仮差押又は仮処分によりその執行を妨げられない。

[10]保険に附されている財産に対する差押の効力
(1)差押財産が損害保険に附されているときは、その差押の効力は、保険金の支払を受ける権利に及ぶ。
ただし、財産を差し押えた旨を保険者に通知しなければ、その差押をもって保険者に対抗することができない。
(2)徴収職員が差押に係る(1)の保険金の支払を受けた場合において、その財産がその保険に係る事故が生じた時に先取特権、質権又は抵当権の目的となっていたときは、その先取特権者、質権者又は抵当権者は、民法における物上代位の権利の行使のためその保険金の支払を受ける権利を、その支払前に差押をしたものとみなす。

[11]差押調書の作成等
徴収職員は、滞納者の財産を差し押えたときは、差押調書を作成し、その財産が次に掲げる財産であるときは、その謄本を滞納者に交付しなければならない。
(1)動産又は有価証券
(2)債権
(3)第三債務者等がある無体財産権等

[12]質権者等に対する差押の通知
次に掲げる財産を差し押えたときは、税務署長は、次に掲げる者のうち知れている者に対し、その旨その他必要な事項を記載した差押通知書により通知しなければならない。
なお、(2)の財産を差し押えた場合において、その仮登記が担保のための仮登記と認められるときは、その旨をあわせて記載しなければならない。
(1)質権、抵当権、先取特権、留置権、賃借権その他の第三者の権利(担保のための仮登記に係る権利を除く。)の目的となっている財産…これらの権利を有する者
(2)仮登記がある財産…仮登記の権利者
(3)仮差押又は仮処分がされている財産…保全執行裁判所又は執行官

[13]保険者に対する差押の通知
差し押えた財産が損害保険に附されているときは、差し押えた旨を保険者に通知する。

[14]差押の解除
(1)法定解除
徴収職員は、次のいずれかに該当するときは、差押を解除しなければならない。
@納付、充当、更正の取消その他の理由により差押に係る国税の全額が消滅したとき
A差押財産の価額がその差押に係る滞納処分費及び差押に係る国税に先だつ他の国税、地方税その他の債権の合計額をこえる見込がなくなったとき
(2)裁量解除
徴収職員は、次のいずれかに該当するときは、差押財産の全部又は一部について、その差押を解除することができる。
@差押に係る国税の一部の納付、充当、更正の一部の取消、差押財産の値上りその他の理由により、その価額が差押に係る国税及びこれに先だつ他の国税、地方税その他の債権の合計額を著しく超過すると認められるに至ったとき
A滞納者が他に差し押えることができる適当な財産を提供した場合において、その財産を差し押えたとき

[15]税務署長又は国税局長による滞納処分の執行
(1)滞納処分の引継ができる場合
税務署長又は国税局長は、差し押えるべき財産又は差し押えた財産がその管轄区域外にあるとき(国税局長については、その管轄区域内の地域を管轄する税務署長の管轄区域内にあるときを含む。)は、その財産の所在地を所轄する税務署長又は国税局長に滞納処分の引継をすることができる。
(2)手続
滞納処分の引継があったときは、引継を受けた税務署長又は国税局長は、遅滞なく、その旨を納税者に通知するものとする。