4-6 換価の猶予

[1]要件
次のすべての要件に該当するときは、税務署長は、その納付すべき国税につき滞納処分による財産の換価を猶予することができる。
なお、税務署長は、換価の猶予をする場合には、原則として担保を徴さなければならない。
(1)納税の猶予の適用を受けている国税でないこと
(2)滞納者が次のいずれかに該当すると認められる場合において、その者が納税について誠実な意思を有すると認められること
@その財産の換価を直ちにすることによりその事業の継続又はその生活の維持を困難にするおそれがあるとき
(2)その財産の換価を猶予することが、直ちにその換価をすることに比して、滞納に係る国税及び最近において納付すべきこととなる国税の徴収上有利であるとき

[2]手続
滞納者の申請を要せず、税務署長の職権で行う。
なお、税務署長は、換価の猶予又はその期間を延長したときは、その旨その他一定の事項を滞納者に通知しなければならない。

[3]猶予期間
原則として1年以内の期間を限り猶予される。
この場合において、税務署長は、その猶予をした期間内にその猶予をした金額を納付することができないやむを得ない理由があると認めるときは、その期間を延長することができる。
ただし、その期間は、既にその者につき換価の猶予をした期間とあわせて2年をこえることができない。

[4]分割納付
換価の猶予をする場合には、その猶予に係る金額を適宜分割し、その分割した金額ごとに猶予期間を定めることを妨げない。

[5]担保の提供
税務署長は、その猶予に係る金額に相当する担保を徴さなければならない。
ただし、猶予に係る税額が50万円以下である場合又は担保を徴することができない特別の事情がある場合は、この限りでない。
この担保の額は、差押財産があるときは猶予金額から差押財産の価額を控除した額を限度とし、納付委託により担保の提供の必要がないと認められるに至ったときは、その認められる限度においてその担保の提供があったものとすることができる。

[6]効果
(1)換価の制限
猶予期間内は、税務署長は猶予に係る国税につき財産の換価はできないが、交付要求、参加差押又は新たな差押はできる。
(2)差押の猶予又は解除
税務署長は、換価の猶予をする場合において、必要があると認めるときは、差押により滞納者の事業の継続又は生活の維持を困難にするおそれがある財産の差押を猶予し、又は解除することができる。
(3)果実の換価等
税務署長は、換価の猶予をした場合において、その猶予に係る国税につき差し押えた財産で、次のいずれかに該当するものがあるときは、(1)にかかわらず滞納処分を執行し、その財産に係る換価代金等をその猶予に係る国税に充てることができる。
@天然果実を生ずる財産について取得した天然果実
A有価証券、債権又は無体財産権等について第三債務者等から給付を受けた財産で金銭以外のもの
また、第三債務者等から給付を受けた財産のうちに金銭があるときは、その金銭をその猶予に係る国税に充てることができる。
(4)時効の不進行
換価の猶予に係る国税の徴収権の消滅時効は、その猶予がされている期間内は、進行しない。
(5)延滞税の免除
@換価の猶予に係る国税の延滞税のうち、猶予期間に対応する部分の金額の1/2に相当する金額は、免除する。
A税務署長は、納税者が一定の要件を満たすときは、免除されなかった部分の延滞税について納付が困難と認められるものを限度として、免除することができる。
(6)納付委託
換価の猶予に係る国税については、一定の要件を満たしたときは、納付委託をすることができる。

[7]換価の猶予の取消又は猶予期間の短縮
換価の猶予を受けた者が次のいずれかに該当する場合には、税務署長は、その猶予の取消又は猶予期間を短縮することができる。
この場合には、その旨を滞納者に通知しなければならない。
(1)繰上請求に該当する事実がある場合において、その国税を猶予期間内に完納することができないと認められるとき
(2)猶予税額を分割納付する場合において、その定められた猶予期間内に納付しないとき
(3)税務署長がした担保の変更等の命令に応じないとき
(4)(1)から(3)を除き、その者の財産の状況その他の事情の変化によりその猶予を継続することが適当でないと認められるとき