5-2 保全差押
[1]要件
次のすべての要件に該当するときは、税務署長は、保全差押金額を決定することができる。
この場合においては、徴収職員は、その金額を限度として、その者の財産を直ちに差し押えることができる。
なお、保全差押金額とは、その確定をすると見込まれる国税の金額のうちその徴収を確保するためあらかじめ滞納処分を執行することを要すると認める金額をいう。
(1)納税義務があると認められる者が不正に国税を免がれ、又は国税の還付を受けたことの嫌疑に基き、国税犯則取締法の規定による差押若しくは領置又は刑事訴訟法の規定による押収、領置若しくは逮捕を受けたこと
(2)その処分に係る国税の納付すべき額の確定後においてはその国税の徴収を確保することができないと認められること
[2]手続
(1)国税局長の承認
税務署長は、保全差押金額を決定しようとするときは、あらかじめ、その所属する国税局長の承認を受けなければならない。
(2)保全差押金額の通知
税務署長は、保全差押金額を決定するときは、その金額を納税義務があると認められる者に書面で通知しなければならない。
(3)保全差押に代わる交付要求
[1]の場合において、差し押えるべき財産に不足があると認められるときは、税務署長は、差押に代えて交付要求をすることができる。
この場合においては、その交付要求であることを明らかにしなければならない。
[3]効力
(1)税額確定後の効力
保全差押又は担保の提供に係る国税につき納付すべき額の確定があったときは、その差押又は担保の提供は、その国税を徴収するためにされたものとみなす。
(2)換価の制限
保全差押をした財産は、その差押に係る国税につき納付すべき額の確定があった後でなければ、換価することができない。
(3)差押金銭の供託
税務署長が保全差押をした金銭がある場合において、その差押に係る国税につき納付すべき額の確定がされていないときは、これを供託しなければならない。
[4]担保の提供及び差押の解除等
(1)差押の制限
保全差押金額の通知をした場合において、その納税義務があると認められる者がその金額に相当する担保を提供してその差押をしないことを求めたときは、徴収職員は、その差押をすることができない。
(2)差押の解除、担保の解除
@徴収職員は、保全差押を受けた者が担保を提供して、その差押の解除を請求したときは、その差押を解除しなければならない。
A徴収職員は、保全差押金額の通知をした日から6月を経過した日までに、その国税につき納付すべき額の確定がないときは、その差押又は担保を解除しなければならない。
B徴収職員は、保全差押を受けた者又は担保を提供した者につき、その資力その他の事情の変化により、その差押又は担保の徴取の必要がなくなったと認められることとなったときは、その差押又は担保を解除することができる。
[5]無過失賠償責任
保全差押に係る国税の納付すべき額として確定をした金額が保全差押金額に満たない場合において、その差押を受けた者がその差押により損害を受けたときは、国は、その損害を賠償する責に任ずる。
この場合において、その額は、その差押により通常生ずべき損失の額とする。