7-10 中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例(簡易課税制度)
[1]中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例
(1)選択の届出及び効力
事業者(免税事業者を除く。)が、その納税地の所轄税務署長にその基準期間における課税売上高が5千万円以下である課税期間(分割等に係る課税期間を除く。)について簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、その提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が5千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、簡易課税制度の規定が適用される。
ただし、その提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の一定の課税期間である場合には、その課税期間以後の課税期間について適用される。
(2)計算方法
課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、原則にかかわらず、その事業者のその課税期間の課税標準額に対する消費税額から売上げに係る対価の変換等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に、[2]に掲げるみなし仕入率を乗じて計算した金額とする。
この場合において、その金額は、その課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。
(3)選択不適用の届出及び効力
@届出書の提出
簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、簡易課税制度の選択の規定の適用を受けることをやめようとするとき又は事業を廃止したときは、簡易課税制度選択不適用届出書をその納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
A届出の制限
簡易課税制度選択届出書を提出した事業者は、事業を廃止した場合を除き、簡易課税制度の選択の規定が適用されることとなった課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、簡易課税制度選択不適用届出書を提出することができない。
B届出の効力
簡易課税制度選択不適用届出書の提出があったときは、その提出があった日の属する課税期間の末日の翌日以後は、簡易課税制度の選択の届出は、その効力を失う。
(4)届出に関する特例
@内容
簡易課税制度の選択の規定の適用を受けようとする事業者が、やむを得ない事情があるため簡易課税制度選択届出書をその規定の適用を受けようとする課税期間の初日の前日(その課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の一定の課税期間である場合には、その課税期間の末日。以下同じ。)までに提出できなかった場合において、その納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、簡易課税制度選択届出書をその課税期間の初日の前日にその税務署長に提出したものとみなす。
A申請書の提出
この承認を受けようとする事業者は、簡易課税制度選択(不適用)届出に係る特例承認申請書を、その事情がやんだ後相当の期間内に、その納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
B却下
税務署長は、申請書の提出があった場合において、やむを得ない事情がないと認めるときは、その申請を却下する。
C通知
税務署長は、申請書の提出があった場合において、その申請につき承認又は却下の処分をするときは、その申請をした事業者に対し、書面によりその旨を通知する。
D不適用届出書
簡易課税制度を選択している事業者が、その規定の適用を受けることをやめようとする場合に提出する簡易課税制度選択不適用届出書についても上記の規定を準用するものとする。
[2]みなし仕入率
(1)1事業のみを営む場合
@第一種事業…90% A第二種事業…80% B第三種事業…70% C第四種事業…60%
D第五種事業…50%
(2)2以上の事業を営む場合
@原則
2以上の事業を営む事業者の仕入率は、売上げに係る消費税額のうちに第一種事業から第五種事業に係る消費税額にそれぞれの仕入率を乗じて計算した金額の合計額の占める割合とする。
A特例
(イ)2以上の事業を営む事業者で、その課税期間における課税売上高のうちに特定1事業の課税売上高の占める割合が75%以上である場合には、その特定1事業に係る仕入率により計算することができる。
(ロ)3以上の事業を営む事業者で、その課税期間における課税売上高のうちに特定2事業の課税売上高の合計額の占める割合が75%以上である場合には、その事業者の仕入率は、売上げに係る消費税額のうちに次に掲げる金額の合計額の占める割合とすることができる。
[イ]その特定2事業のうち仕入率の高い方の事業に係る消費税額につきその仕入率を乗じて計算した金額
[ロ]残りの消費税額につきその特定2事業のうち仕入率の低い方の事業に係る仕入率を乗じて計算した金額
B事業区分をしていない場合
2以上の事業を営む事業者が課税資産の譲渡等につき事業の種類ごとの区分をしていないものがある場合には、その区分をしていない課税資産の譲渡等は、その区分をしていない事業のうち仕入率の最も低い事業に係るものとする。
[3]事業区分
(1)第一種事業…卸売業
卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業をいう。
(2)第二種事業…小売業
小売業とは、他の者から購入した商品をその性質及び形状を変更しないで販売する事業で卸売業以外のものをいう。
(3)第三種事業…次に掲げる事業(卸売業、小売業及び加工賃などを対価とする役務の提供を行う事業を除く。)をいう。
@農業 A林業 B漁業 C鉱業 D建設業 E製造業(製造した棚卸資産を小売する事業を含む。)
F電気業、ガス業、熱供給業および水道業
(4)第五種事業…次に掲げる事業((1)〜(3)に該当する事業を除く。)をいう。
@不動産業 A運輸通信業 Bサービス業(飲食店業を除く。)
(5)第四種事業…(1)〜(4)以外の事業をいう。
[4]一定の課税期間
[1]に掲げる一定の課税期間は、次に掲げる課税期間とする。
(1)事業者が国内において課税資産の譲渡等に係る事業を開始した日の属する課税期間
(2)個人事業者が相続により簡易課税制度の規定の適用を受けていた被相続人の事業を承継した場合におけるその相続があった日の属する課税期間(相続があった場合の納税義務の免除の特例の規定により納税義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)
(3)法人が吸収合併により簡易課税制度の規定の適用を受けていた被合併法人の事業を承継した場合におけるその吸収合併があった日の属する課税期間(吸収合併があった場合の納税義務の免除の特例の規定により納税義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)
(4)法人が吸収分割により簡易課税制度の規定の適用を受けていた分割法人の事業を承継した場合におけるその吸収分割があった日の属する課税期間(吸収分割があった場合の納税義務の免除の特例の規定により納税義務が免除されないこととなる課税期間に限る。)
[5]分割等に係る課税期間
[1](1)に掲げる分割等に係る課税期間は、次に掲げる区分に応じそれぞれに定める課税期間とする。
(1)新設分割子法人
@設立事業年度
分割等があった場合において、その分割等に係る新設分割子法人の分割等があった日の属する事業年度の基準期間に対応する期間における新設分割親法人の課税売上高として一定の方法により計算した金額(新設分割親法人が2以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係るその金額)が5千万円を超えるとき……その新設分割子法人のその分割等があった日の属する事業年度に含まれる課税期間
Aその事業年度開始の日の1年前の日の前日以後に分割等があった場合
その事業年度開始の日の1年前の日の前日からその事業年度開始の日の前日までの間に分割等があった場合において、新設分割子法人のその事業年度の基準期間に対応する期間における新設分割親法人の課税売上高として一定の方法により計算した金額(新設分割親法人が2以上ある場合には、いずれかの新設分割親法人に係るその金額)が5千万円を超えるとき……その新設分割子法人のその事業年度に含まれる課税期間
Bその事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に分割等があった場合
その事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に分割等(新設分割親法人が2以上ある場合のものを除く。)があった場合において、次のいずれの要件も満たすとき……その新設分割子法人のその事業年度に含まれる課税期間
(イ)その新設分割子法人がその事業年度の基準期間の末日において特定要件に該当すること
(ロ)その新設分割子法人のその事業年度の基準期間における課税売上高として一定の方法により計算した金額とその基準期間に対応する期間における新設分割親法人の課税売上高として一定の方法により計算した金額との合計額が5千万円を超えること
(2)新設分割親法人
その事業年度開始の日の1年前の日の前々日以前に分割等(新設分割親法人が2以上ある場合のものを除く。)があった場合において、次のいずれの要件も満たすとき……その新設分割親法人のその事業年度に含まれる課税期間
(イ)その新設分割子法人がその事業年度の基準期間の末日において特定要件に該当すること
(ロ)その新設分割親法人のその事業年度の基準期間における課税売上高とその基準期間に対応する期間における新設分割子法人の課税売上高として一定の方法により計算した金額との合計額が5千万円を超えること