[海外製ユニットを使ったスピーカシステムの製作]


   

■■■ コンセプト 2003.7.11 ■■■
   最近のオーディオ誌をぺらぺらとめくって見ると、奇抜なデザインのスピ   ーカシステムがたくさん掲載されています。古典的なフルレンジスピーカを   扱ってきた自分にとっては全くの別世界で、メーカーも初めて知るものばか   りです。 さらにそれらのスピーカシステムは能率が極端に低く、ハイコン   プライアンスでふかふか(ストロークが大きい)の新素材コーンが使われて   いて、見た目にも違和感を覚えるのですが、デザインという視点で見た場合、   とてもユニークで面白いと言えます。   これらのユニットは OEMメーカがオーディオメーカーに生産供給していて、   各メーカーでスピーカシステムに取りつけられブランド品として販売されま   す。しかし、これらのスピーカシステムは恐ろしく高額で、ヴィンテージス   ピーカが楽々買えてしまえるくらいです。一方、スピーカシステムに使われ   るユニットはアマチュアでも容易に入手でき、価格もせいぜい1〜2万円程   度です。要するに箱が問題というわけで、自分で綺麗な箱を作ってやれば工   作テクニック次第で似たような物は作れるという事です。で、この木工工作   というのが大問題なのですが。。。   という事でVifaとSEASのスピーカユニットを使って2Wayスピーカシステム   を作る事にしました。    VifaとSEASについてはこちら参照して下さい→Vifa/SEAS    で、目に留まったスピーカユニットは以下のとおりです。    メーカーも製造国も異なるのですが両者共フェーズプラグを持つユニット   で、視覚的にも気に入ってしまいました。    ちなみにフェーズプラグそのものは目新しい物ではなくホーンツィータに   古くから付いています。また、フルレンジではローサーが古くから採用して   います。
タイプ 型番 サイズ 種類 インピーダンス メーカー 製造国
ツイーター XT25TG-30 1cm phase plug付き
リングドーム
4ohm Vifa デンマーク
ウーハー W14CRY 14cm phase plug付き
ポリプロピレンコーン
8ohm SEAS スウェーデン
   尚、詳細なspecデータは上記のサイトで入手できます。    アンプを含めたシステムで考えた場合、ウーハーの能率が 86dB/W 程度し   かなく実に頭の痛い話です。実はこのユニットに限った事ではなく他のユニ   ットもだいたい似た様なもので、ツイーターは 90dB/W 以上が一般的なので   ウーハーはダブルで使うのが常套手段の様です。    ここでは、ウーハーは1個しか使わないので能率の悪い方に合わせて2Way   としなければなりません。この様な能率の悪いスピーカの場合、音質とパワ   ーを兼ね備えたアンプが必要で自分のアンプを試す機会となりそうです。    球アンプマニアの常套句のような「3極直熱管小出力シングルアンプ+高   能率フルレンジ一発」の全く逆、「多極傍熱管大出力プッシュプルアンプ+   低能率2Wayスピーカ」を合言葉にパワーを突っ込んで能率の悪さをカバーし   ようという算段です。     さてさて、どうなることやら。。。
■■■ ネットワークの設計 2003.8.18 ■■■
   2wayスピーカのネットワークは一般的に6dB/Octタイプと 12dB/Octタイプ   が考えられます。12dB/Octタイプは遮断特性が急峻な反面、クロスオーバー   周波数付近の周波数特性にディップやピークを生じ易いのが特徴です。   「何だ、それでは6dB/Oct タイプの方がお金も掛からず簡単で音が良いんじ   ゃないかい?」と言われそうなのですが、今のスピーカは 12dB/Oct のネッ   トワークを基本として作られている様なのでここは”郷”に従います。    どうせ 2wayにするのなら凝りに凝ったネットワークにして楽しもうという   考えです。    ネットワークの計算式はFOSTEXのカタログや小冊子に掲載されているので、   それに従っていけば誰でも簡単に回路を作る事が出来ます。簡単なパッシブ   フィルタと同じなので原理を知っていれば自分で考えても構いません。    ここでの主な設計ポイントは以下の通りです。 ・クロスオーバー周波数 ・能率の調整 ・インピーダンスの調整    先ず、クロスオーバー周波数ですが、ウーハーの上限が3.5KHz、ツイータ   ーの下限が1.5KHzなので、2.5KHzに設定しました。    次に、能率はウーハーが86.5dB/W、ツイーターが91.5dB/Wなので 5dB差が   有り同じ音圧を得るのにウーハーは、ほぼ倍の入力パワーが必要です。    一般的にはウーハーを2個並列にしてインピーダンスを4ohm、能率を+6dB   となって丁度良い様にユニットは作られています。しかし、予算の関係上(^^;    ウーハーは一個しかありませんから、その分揃ツイーターの能率を抵抗で抑   えてインピーダンスを8ohmに揃える事になります。    ネットワークの回路はこちら。    覚書として計算式を以下に書いておきます。 ☆ハイカット    ウーハーのインピーダンス:R=8ohm    高域遮断周波数:fc=2.5KHz   L1[mH]=(296×R)÷fc=(296×8)÷2500=0.947[mH]   C1[uF]=14800÷(fc×R)=14800÷(2500×8)=0.740[uF] ☆レベル調整とローカット    ツイーターのインピーダンス:R=4ohm    低域遮断周波数:fc=2.5KHz   アッテネータとツイーターを合わせて総合インピーダンスが8ohmとなる   様にした場合、   8ohmで1の電力を消費するとして-6dB分の電力は比率で0.25   つまり 10・log 0.25= 約-6 dB    例えば入力電圧8Vを8ohmに加え8Wを消費しているとして4ohmで比率0.25   分の電力2Wを消費するとすれば、     P=V×V÷R V=√(P×R) から電圧:Vを求めると2.83V。    つまり、ツイーター4ohmに並列に抵抗をつけて合成値が2.83ohmになる   ようにすれば8V入力時に 2.83V×2.83V÷4ohm=約2Wとなります。   L2[mH]=(170×R)÷fc=(170×2.83)÷2500=0.192[mH]   C2[uF]=85300÷(fc×R)=85300÷(2500×2.83)=12.056[uF] ☆補正回路    ウーハー側の高域インピーダンス上昇を補いフィルター特性の狂い   を補正します。    コーラルのカタログから以下の通りになります。     C3[uF]=R(@10KHz)÷4=18÷4=4.5[uF] ☆使用パーツ   コイル:FOSTEX製空芯コイル     コンデンサ:フィルムコンデンサ(JUNK品の寄せ集め)   抵抗:セメント抵抗
■■■ エンクロージャの設計・製作 2003.11.2 ■■■
SEASの資料を基にエンクロージャとダクトのサイズを設計しました。 ☆ウーハーのデータ    SEASの資料はWebから入手できます。ここ。   抜粋した値は以下の通りです。    mo=10g    Qo=0.28   fo=42Hz     実効振動面積:80cm2 ☆ダクト開口面積    ダクト開口面積は大きめにし、実効振動面積の0.4〜0.5くらいに設   定し、35cm2としました。ダクト開口サイズは7cm×5cmです。 ☆ダクトのチューニング周波数    FOSTEXの一覧表に基づいて選択しました。Qo が0.28なので fcは   fo:42Hzから1.3倍高い周波数に設定しました。 ☆エンクロージャ内容積   資料に記載されている指定エンクロージャ内容積12L以上です。大き   めに設定しました。実効エンクロージャ内容積は18L程度です。    寸法計算は以下の通りです。    18.2(W)×38.2(H)×30(D)=20.85L    吸音材分を10%見込んで18Lくらい?です。 ☆ダクト長   FOSTEXの計算式から求めました。    L=((30,000×35cm2)÷(55Hz^2×18L))-0.825×√35cm2     =14.4cm    エンクロージャの材料は24mm厚のパイン集成材です。このエンクロー   ジャサイズでは補強が要らない程十分な厚みです。裁断は店に図面を渡   して行ってもらい、細部の加工はトリマーとドリルで自分で行いました。
■■■ 塗装と仕上げ そして試聴 2004.4.4 ■■■
   表面の鑢がけはマウスポリッシャー(B&D)という工具を購入し、#120位   の荒目の紙やすりで表面をならしてから”との粉”で目止めをしました。    色は木の下地を活かした白色にしようとしましたがこれが大失敗。   塗った後、表面の塗料を拭き取りながら木目に擦り込むと書かれていた   のですが、それをやらなかった為、残った塗料がむらになってしまいま   した。紙やすりで削ろうとしてもだまになってしまい目詰まりを起こし   削るのに一苦労でした。透明のニスを重ね塗りし、乾燥させてから紙や   すりで削りながらならし、再び塗装をして仕上げました。   (それでも、かなりむらが出来てしまいましたが。。。(^^;;;;;    BOX の背面は木ネジで止め開け閉め出来る様にし、メンテナンスが出   来る様にしました。吸音材はグラスウールを適当なサイズにはさみで切   って木工ボンドで貼り付けました。  【試聴】    能率の低いSPである事を考慮し、6BQ5 PushPull アンプを使用し、   CDプレーヤーを直結しました。久しぶりに聴くHiFiサウンドで、昔失敗   した2WaySPとは全く別な音がしました。その頃作ったアンプの質を考え   ると、SPのせいだけでは無かったのかもしれません。    能率が低いと言いながらもボリュームをちょっと上げただけで十分な   音量になります。使い勝手から言えばむしろこの位の能率の方が良いの   かもしれません。ネットワークの繋がり具合はと言うと違和感が全く無   く巧く行ってる様に思います。    高音、低音ともに良く伸びているので、アンプの方をもう少し広帯域   にしないといけない様ですが、幸いにもWE-141型プリがあるのでそれを   適用するつもりです。    いろいろとCDを聴いて見たところ、ソフトドームツィータのお陰なの   かとても品良く鳴るので人によっては物足りない様に感ぜられるかもし   れませんが、聴き疲れがしないというのは有り難い話です。    フェーズプラグを持つユニットを組み合わせるという安直なコンセプ   トだったのですが、音質、視覚共に成功(自分成りに)したと思ってます。    反省すべき点としては2つのユニットのフェーズプラグの位置を調整   し位相を合わせるともっと良くなったかもしれません。    P-610に出会って以来ずっとヴィンテージSPを求め続けてきたのですが、   ここに来てまたオーソドックスなSP作りがやりたくなって来ました。   今回使用したVifaやSEAS以外にも面白いOEMユニットが多数発売されてお   り、興味が尽きる事はありません。                           終了
【参考文献】   ・初歩のラジオ・編 Hi-Fiスピーカーとその活きた使い方 誠文堂新光社     ・STEREO 1999/2000/2001/2002/2003.7 (毎年のスピーカ工作特集)   ・Audio別冊 スピーカの完全自作V 電波新聞社   ・FOSTEX カタログ 
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