[300B Single]
 12AX7-12BH7A-300B-F2007-83
    更新日:2008.10.18


  このデザイン、何処かで見たような? そう、そのとおりです。


  【序】
   3直熱管の音質は球アンプマニアの間では定評が有りますが、そのほとんどはプ
  レミアムが付いてしまい常用するにはいささか気が引ける思いがします。
  現在プレミアム無しに買える3極直熱管と言えば、中国、ロシア製の2A3、300Bが挙
  げられます。
   と言うことで、プレミアム無しで使える中国製 NL-300Bを題材として、「魅惑の
  真空管アンプ」の300Bシングルアンプを範にとった回路で、ドライバー回路を少々
  イミって常用アンプに仕上げてみました。

  【シャーシ】
   300Bの様な大型のST管を配置する場合はシャーシを大きくするか、モノラル構成
  にするところですが、今回は鈴蘭堂SL-8HGにステレオ分を何とか載せてコンパクト
  にまとめる事を考えました。 同社製品にもう一回り大きいサイズのシャーシがあ
  りますが、SL-8HGの縦横比の方が格好良く見えると思います。

  【電源トランス、出力トランス】
   トランスは全てタムラ製でF2007,PC3004,A4004を使用しました。これは、デザイ
  ン的にEdアンプに対抗するためで、性能に対する信頼はもちろんの事、ダークグレ
  ーの色調は前述したシャーシの色調と非常によく合うと考えての選択です。また、
  トランスの背の高さが300Bより高いので見た目のバランスが取れます。

  【3段増幅回路】(回路図はここ)
   引用した回路は「魅惑の真空管アンプ」の75-76-300Bという組み合わせのシング
  ルアンプです。初段、ドライバー段は原回路に近いゲイン配分とするため同程度の
  μを持つMT管を選び、12AX7A(1/2)-12BH7A(1/2)-300Bという構成にしました。
  同書でよく使われている手法でHigh-μ、Middle-μ、Low-μという組み合わせです。
  SL-8HGのサイズに収めると考えた場合、ST管で揃えるのは無理で、GT管かMT管とい
  う選択になりますが、GT管では適当な規格の物が無いのでMT管を使用しました。
   双3極のMT管なので、特性は良いですが、片側づつ使うとチャンネルセパレーシ
  ョンは悪くなります。

  【300B動作条件】
   廉価版(?)とは言えせっかくの300Bですから、あまりプレート電圧を下げてし
  まうと「 2A3 アンプと何が違うの?」という話になってしまいます。 300Bの動作
  条件は規格表から、下記条件を選択しました。

300B動作条件
Plate
Voltage
Grid
Bias
Plate
Current
Load
Resistance
Output
Power
Filament
Voltage
Filament
Current
400V -84V 80mA 3Kohm 12W 5V 1.2A
【参考文献】   ・WESTERN ELECTRIC TUBE DATA Second Edition,March 1994 ANTIQUE ELECTRONIC SUPPLY   (注意)上記文献はあくまでも「WESTERN」の300Bの規格であって、近年の中国、ロシア製300B      の規格として適用出来るかどうかはわかりません。   【300B動作条件】    廉価版(?)とは言えせっかくの300Bですから、あまりプレート電圧を下げてし    ここで、回路図記載の電圧は測定値で電源トランス400Vタップを使用した時の値   ですが、その後エージングが進むにつれて300Bの電流が90mAを越える様になったの   で360Vタップに切り替えました。また、電源トランスのPC3004から取り出せる電力   がぎりぎりだったため、かなり過熱していました。どちらかといえばPC3004はモノ   ラルアンプ向きなのであまり無理をすると取り返しのつかないことになります。    次にフィラメントは電源トランスのタップの都合によりDC点火としました。AC点   火とDC点火についての音質や寿命の違いは意見の分かれるところですが、私の場合   はSN比を最優先としています。また、レギュレータICを使用する予定でしたが、シ   ャーシ内取り付け場所が無くなり断念しました。   【電源回路】     B電源整流はシャーシ上の見栄えと電位降下を少なくする目的から安価な製造年   が新しい軍用の整流管83を使用します。 ちなみに、プリヒート用のスイッチは   過去の経験から無くても問題なさそうなので入れていません。    これは、製造年が新しい83は水銀の量が少なく、水銀の滴によるトラブルを少な   くしているからだと思います、従って、製造年が古い83は水銀の量が多いので使わ   ない様にします。   【シャーシ加工】    タムラトランスを4個載せるのでSL8-HGの 2mm厚の天板では重量オーバー気味で   す。 そこで、内部に3mm厚のL型アルミで補強しついでに部品を取り付けるスペー   スを確保しました。従って、シャーシ本体に余計な穴を穿けなくてすむので手間が   省け、外観がすっきりします。 ちなみにフレームの背面はパーツを取り付けず、   部品による余分な出っ張りを無くします。   写真左 背面に出っ張りがないので、アンプを倒して簡単にチェックできます。   写真右 部品の取り付けに使用したターミナルボード。   【組み立て】    シングルアンプと言えども3段増幅回路でステレオ分のパーツはかなりの数であ   るのでよく考えて部品を配置しなければ収まりきらなくなります。    今回は、ターミナルボードを使い左右のチャネル分のパーツを纏め、配線し易い   場所に収めました。   【調整】    測定器を持っていないので詳細な調整が出来ないのですが、各部の電圧確認とノ   イズの有無を耳で確認しています。    12BH7がどの程度300Bをドライブ出来ているか心配なので、オシロにてサイン波   を確認したところ特に問題は無いようです。    その後、「無線と実験」誌にて黒川さんが12BH7Aの動作データを公開されていま   すで参考に出来るかと思います。    調整箇所は特にありませんが、ゲインに余裕があるので NFBを掛けて音質調整が   できます。   【所感】    自分なりに音質、見栄え共にうまくいったと思います。球のプレミアムがないの   で酷使できる点が魅力的です。私の打算では8〜10W位出るはずなのでほとんど   のフルレンジスピーカは問題なくドライブできます。 【参考文献】・「魅惑の真空管アンプ上巻」浅野 勇 監修 誠文堂新光社

戻る