6AR5 モニターアンプの製作 6AU6-6AR5-HS7   更新日:2017.1.4

【序】  アナログ式のFMチューナー:JT-300をフル稼働させているのですが、家にある球アンプは 600Ω入力のも のばかり。しかも、キャノンコネクタに統一している環境なのでチューナーの出力を直結できません。とは 言え球アンプマニアがデジタルアンプをいつまでも繋いでおくのは忍びない話です。  しかし、そこで手持ちのジャンク部品を活用して、FMチューナーに見合った高インピーダンス、 RCAピン 入力の小型の真空管アンプを「まかない料理」的感覚で製作開始です。
【ジャンク箱の材料】  まかない料理であるので、手持ちのジャンク部品をかき集めて相談、部品次第で回路図が変わります。 おおよその回路を頭の中に描き、使えそうな物を選んでいきます。最近めっきり少なくなってしまったジャ ンク屋ですが、幸いにも自宅の部屋はジャンク屋並みにいろんな物が堆積していますのでインベントリも兼 ねて発掘開始です。
[6AU6,6AR5]  ジャンク屋にある抜き球を入れた段ボールの中には必ずと言って良いほど混じっている球です。 だいたい一本 100円で売られる事が多いですが、売れ残る事は無いにしろ、最後まで残っている事が多い球 です。ここにあるのは30年前に段ボールごと引き取った中にあったものを再利用していますが、ジャンク 屋そのものが少なくなってきたので、段ボールに入れられた抜き球を目にする機会も少なくなりました。 [HS-7]  山水のHS-7はネームプレートには 42,6F6,6AR5と、適合する真空管しか記載されていないという、昔の おおらかな時代に作られたトランスです。浅野勇さんの著書「魅惑の真空管アンプ」によれば、多極管向け にインダクタンスが高く設定されたトランスであると記されているのですが、取り扱い説明書にも許容電流 値やインダクタンス値といったデータがなく、ならば指定された真空管を使おうじゃないかと言う事で6AR5 の登用です。 [電源トランス]  放送機器に取り付けられていたと思われるジャンクを使用。 '60年代に製造された物で結構深い傷が付い ているのですが、分厚い塗装が施されていて、下塗りまで傷は届いていません。  しかし、物は良いですが、ヒーター巻き線が不足しており整流管が立てられませんので、泣く泣くダイオ ードを使用しました。ダイオード整流にしたところ整流効率が良い上に手持ちに手頃なチョークトランスが 無いためので電圧が400Vまで跳ね上がってしまい、無理を承知で抵抗で電圧を落としています。 [シャーシ]
奥沢の型番O−27、サイズ250mm×150mm×40mm(1mm厚アルミ)です。裏蓋用のタップが施されているので、 別途アルミ板を用意し底板を作ります。放熱孔は要らないでしょう。 [ソケット]
 まかない料理というコンセプトに反するのですが、7ピンMTソケットが手持ちにないため、仕方なくソケ ットを追加購入する事にしました。  会社の昼休みに秋葉原を探し歩き、最初に舶来物を見つけましたが、シールド付きで一個 500円と真空管 より高く割に合いません。別のショップに行くとCHINCH製らしきマイカフェノリックの物が1個250円。 これで良いか。。と思ってたら、足元の箱に一個100円のジャンク品が。。。  機器から取り外した再生品のため少し錆は有るものの、セラミックタイト製のなかなかの逸品です。 さっそく選りすぐりの精鋭10個を集め、こんな良い物を安売りしてくれるのかとばかりに謝礼の千円札一枚 をお店に置いてきました。(笑)  家に持って帰って半田を除去、除光液でヤニを拭き取ると殆ど新品同様です。満足! 【回路図】
6AU6は3結、6AR5は5結のラジオの終段回路をそっくりそのまま採用しています。NFBはざっくりな値で掛け、 調整は音を聴きながら行います。  オペレーションはデータシートそのまま、Vp=250V、Ip=35mA、こんなチビ球1個で出力が3Wも出てくれ るのですから有り難い話です。ヴィンテージスピーカーなら十分な出力です。 【試聴】  ここ最近、ネットオークションで山水のHSシリーズが良く出品されるのを見かけるのですが、殆どが高額 で落札されています。それもそのはず、音質はかなりのもので、今まで経験した多極管のシングルアンプで 良くある感じの音とは異なり、久しぶりにはっとさせられる音を聴きました。 真空管アンプには不向きと思える低能率の2Wayスピーカでもそこそこの音質で鳴ってくれます。  こんな 7ピンMT管ごときで?と思われるかもしれませんが、出力管とトランスの相性はとても重要で、や ってみなければわからないものだと再認識させられました。 【閑話休題:ダイアトーンのP-610】  今回製作した6AR5アンプに里帰りしたダイアトーンの P-610スピーカを繋いでみましたが、これがまた非 常に相性が良く、久しぶりに自分の原点とも言えるロクハンの音に聴き惚れてしまいました。  確かに8インチ以上のスピーカの音に慣れてしまうとロクハンのスケール感に違和感を感じてしまいます がそれでもロクハンの音に慣れてくるとそのスケール感なりの音質の良さがとても心地良く思えます。
 ちなみに、この P-610の箱は取り扱い説明書の指定箱を寸法通りに自作したもので、防振のためにハーフ サイズのレンガにブチルゴムを貼り付け、マグネットに接着しています。 P-610に限らずスピーカ背面への 重量付加は音質改善効果絶大ですので一度試してみる事をお勧めします。
【参考文献】 ・ラジオ技術 1997年2月号 GY-50(UL)PPパワー・アンプの製作  石渡 博著 ・ラジオ技術 2000年5月号 懐かしのラジオ製作(2)        岡本 薫著  

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