6G6-G 単管アンプの製作 〜マグネチックスピーカ向けアンプ〜    更新日:2018.3.17

【序】  部屋に堆積する部品のインベントリをしていたところ今は廃れてしまったマグネチック型スピー カが出て来ました。出て来たといっても昔買った物をしまっていただけの話で、秋葉原のジャンク 屋並みにいろんな物が出てくるのに我ながら呆れてしまいます。。。  今のスピーカはダイナミック型、磁石が固定でコイルが動いて音を発する仕組みになっています が、昔はコイルが固定で磁石が動いて音を発するスピーカもあって、マグネチック型スピーカと呼 んで区別されていました。安価な真空管式ラジオによく使われていたのですが、高能率アンプが普 及しダイナミック型スピーカが安くなって普及するにつれ、このスピーカは廃れてしまいました。 現在では両者を区別する必要なくなりダイナミック型という呼称も使われなくなりました。
 今回その自宅で発掘されたマグネチックスピーカを鳴らす為の真空管アンプを作ってみる事にし ました。マグネチックスピーカ自体、非常に音質が悪いので、あまり凝ったアンプを作っても仕方 がないのですが、使い道の無さそうな部品をかき集めてみるとアンプが成立してしまいました。  Hi-Fiサウンドとはまた違った世界、ひまネタとお考え頂ければ幸いです。
【6G6-Gという真空管】  6G6-Gはあまり馴染みがない真空管かもしれませんが、ラジオ用6ZP1クラスの5極出力管と言えば ピンとくる方は大勢いらっしゃるかと思います。  マグネチックスピーカ向けの小出力管をいろいろ検討していたところ、1W程度の出力の真空管 と言えば、やはり6ZP1が良さそうなので、6ZP1を購入してアンプ製作を計画をしました。ところが 手持ちの真空管に 6G6-Gという5極管がある事に気付き、ネット検索で出て来たオペレーションデ ータを見ると 6ZP1とほぼ同じ条件で使える事が解りました。  従って、 6ZP1を終段に備えたラジオの回路図を引っぱり出してそのまま6G6-Gに適用してありま す。以下にオペレーションデータを示します。
Operating Condition
tube Plate
Voltage
Grid
Bias
Plate
Current
SG
Current
Plate
Resistance
Load
Resistance
Output
Power
Filament
Voltage
Filament
Current
6G6-G 180V -9V 15mA 2.5mA 175Kohm 10Kohm 1.1W 6.3V 0.15A
6ZP1 180V -10V 15mA 2.5mA 130Kohm 12Kohm 1W 6.3V 0.35A
 ヒータ電流は半分以下ですが、プレート電流が同じでかなり高率の良い球です。ラジオの出力段  として最適ですね。
【マグネチックスピーカ】   マグネチックスピーカはインピーダンスが高いのでインダクターを負荷としてコンデンサを介  して接続するのが一般的です。ラジオ技術の '00年5月号によれば 12K,7Kのタップを持つ出力ト  ランスを負荷代わりに利用しており、自分もそれに倣って手持ちのジャンク品で使えそうな出力  トランスを使いました。 昔は直結してDC電流をスピーカに流して使用していた例もあり、かな  りいい加減でも鳴ります。ただ今回は断線が怖いのでDC電流は流さず、コンデンサを介して繋ぎ  ます。入力は1Wくらいで過大な信号を加えたりしない様注意が必要です。
  ちなみに、購入時のマグネチックスピーカは可動部についている磁石が片方に寄っていて、ま  ともな音が出なかったので、半田で固定している部分をずらしてギャップを調整しています。  しかし後で考えてみれば、トランスを使わず直接DC電流を流すようにすればこの調整は不要だっ  たのかもしれません。 【入力トランス、出力トランス】   入力トランスはタムラ製のジャンク品で、ネットオークションで二足三文で売られていた物で  す。単段アンプで組み上げたところ、やはりゲインが不足していましたので入力トランスを使用  する事にしました。シャーシのスペースを埋めるという意味もあります。   出力トランスは、これも以前にネットオークションで手に入れたものですが、送られてきたト  ランスを見て唖然としてしまいました。インダクタンスと電流規格値が記載されていたのでてっ  きりチョークトランスだと思っていたのですが、そこにはOUTPUTトランスと書かれてあり、2次  巻線のタップが出ていました。恐らく、測定器か何かから取り外されたものだと思いますが、特  殊な仕様のトランスらしく、詳細不明です。
  画像左;入力トランス、画像右:出力トランス  「使い道はないな〜」と思っていたところ「破れ鍋に綴蓋」、マグネチックスピーカのチョーク  負荷として使える事に気付きました。組立てた後で2次側も普通のスピーカに繋いでみるとこれ  も問題無く使える事が判った次第です。ちなみに、このジャンクトランス、外す時に配線をカッ  トすれば良いものを端子ごとペンチでカットされていて悲惨な状態でした。恐らく知識の無い方  が扱ったのでしょうが、このトランスに限った事でなく、ネットオークションでは度々目にする  のでこれは止めて頂きたいなと切に願います。
【電源トランス】   電源トランスは丹青通商で入手したジャンク品です。両波整流の 230V-25mA、ヒーター巻線は   6.3V2Aがひとつだけです。 かなりチープなトランスで、ネジは曲がった状態、端子は今にもも  げてしまいそうなくらい貧弱なものがついていて、取り扱いには注意が必要です。 【回路図】   ジャンク部品を元に作った回路がこれです。
 注意すべき点としては整流後の電解コンデンサは10uF以内に抑える事です。入れ過ぎると電源ト  ランスが断線します。   前述のとおり、6G6-Gに180V掛けてプレート電流が15mA、ヒーターは 6G6-Gが6.3V0.15A、84が 6.3V0.5Aなので電源トランスの定格内、ミニアンプとして十分です。 【シャーシ】   このシャーシは昔、アンディクスオーディオさんで購入したジャンク物です。プリキを折り曲  げて作ったと思われますがサイズもぴったりです。
【その他部品】   その他の部品は絶滅種のデッドストック品を使いました。例えばスピーカーに接続する3Pの  コネクタ、スイッチ付き500KΩのボリュームが有ります。
【試聴】   試聴といっても所詮は安物のマグネチックスピーカです。パソコン音源にして鳴らしてみまし  たが、デジタル音源だと悪さが目立って余計に聞きづらい気がします。。(汗) Lo-fiっぽさを  保ったままそれなりのサウンドにするのは難しい様です。   その後、出力トランスの2次側をダイアトーンのP-610に繋ぎ替えて音だしをしてみたところ、  意外に良い音がします。特に、出力トランスの一次側のインダクタンスが40Hもある上にP-610の  箱がバスレフ式なのでかなり低域寄りのサウンドになりました。こちらの方が Lo-fiっぽさが良  く出ています   さて、音質は予想通りの結果ですが、お遊び用としては面白いアンプになった様に思います。  例えば、インターネットラジオを昔のラジオっぽく鳴らすとか、 DSP式のFMラジオを繋ぎっ放し  でも面白いかも知れません。。。。といったところで閑話休題。
【参考文献】 ・ラジオ技術 2000年4月号 懐かしの真空管ラジオ          岡本 薫 著  

戻る