VICTORのチューナーを手に入れた際、プリメインアンプがセットでおまけに付いてきました。
恐らく当時のVICTORの廉価版コンポのアンプですから、ネット検索や手持ちの無線と実験のバックナンバー
を調べても情報が全くなく何も出て来ません。
唯一現物のみ、中身を解析して推測するしかないですが、幸いな事にディスクリートの簡単なアンプなの
で容易に回路が辿れます。パネルデザインがJT-300とお揃いなので、壊れていれば中身を入替え、筺体だけ
を再利用しても良いなと考えていたのですが、保存状態が非常に良く埃も無い状態です。恐る恐る通電して
みると何の問題もなく「懐かしい悪い音」がちゃんと出ます。
オペアンプ、DC直結型のアンプが登場する以前のアンプという意味で、いろいろ興味がわいてきましたの
で、音質改善の実験をしてみる事にしました。
早速昼休みに秋葉原でニチコンのファインゴールドを買いに行き、先ずは電解コン入れ替えを行います。
電解コンを入れ替える時は極性を間違えない様細心の注意を払います。
基板には抵抗体が塗られているので、傷つけないようこれも注意が必要です。
一先ず電解コンをマイクアンプの部分を除き全て入れ替えました。
ちなみに、使われていた電解コンは全てELNA製、長い間ご苦労様でした。
試聴1
電解コンを全て入替えたところで一旦試聴しました。リレーが付いていないので電源ON時のポップ音が酷
く、ヴィンテージスピーカにはおっかなくて繋げられません。耐入力の高い2ウェイスピーカを使用して動
作確認と試聴をしています。ただ、このスピーカーとの相性が悪く、加えてPC音源の場合トーンコントロ
ール回路がブーミーな低音を強調し過ぎるためかなり耳につきます。BASSを少し絞り、TREBLEを少し上げた
状態でしばらくエージングです。
エージングが進むにつれ、音がこなれて行き、パーツ交換前との違いがはっきり解るほど音が良くなって
きました。
率直な感想として、素直な音、真空管アンプに似た音です。 この時代のアンプ、特に廉価版のアンプは
「音が悪い」という烙印を押されて廃れてしまいましたが、高品質、高音質のパーツが簡単に手に入る現在
において、古い時代のシンプルな回路は逆に活きてくるはずです。
各所に使われているマイラコンデンサーを高音質の物に入れ替えればもう少し音質は向上するかもしれま
せん。特にトーンコントロール回路は致命的です。調子に乗ってマイラコンデンサーもポリプロピレンコン
デンサーに入れ替える事にしました。
パネルを外したのでついでに洗浄。ニッパー犬のVICTORロゴが素晴らしい!オーソドックスなパネルデザ
インですが、今作るとしたらこれだけでもかなり高価な物になります。
マイラコンもご苦労様でした!
試聴2
最初に聴いた音を思い出しつつ試聴しましたが、マイラコンデンサー交換により、最終的にかなりクリア
な音質に変化しました。本当に真空管アンプのような音がします。それでいて、音自体は昔ながらのステレ
オコンポの面影を残していて、チューナーと同様、古き良きオーディオ全盛の時代にタイムスリップした様
な錯覚を覚えてしまいます。近々、イコライザ―アンプの音質も確認したいと思います。
完