以前から手元に置けるFMチューナーを1台欲しいなぁと思っていたところ、ネットオークションで'70年代
黎明期のオーディオを彷彿させる素晴らしいデザインを持ったビクター製の FM/AMチューナーJT-300を見つ
けました。ジャンク品という事でしたが届いた物の状態は良く期待できそうです。大したメンテはしていま
せんがデザインが良いので紹介を兼ねて報告します。
[確認]
オーディオ雑誌の古いバックナンバーを調べて見ましたが、手掛かりとなる物はありませんでしたが、IC
とLEDが全く使われていないことから推測して、製造後40年くらいは経過しているのではないかと思います。
いずれにせよかなりの骨董品です。
中の状態を見ると全くメンテナンスされてなかった様子ですが、内部の汚れや埃もそれほど酷くはなく、
通電してみると何の問題もなく動作します。
まず、出力のRCAのピンコネクタがハンダの部分で断線しかかっていたので、ハンダを付け直しました。
ケーブルごと外して筺体にコネクタを取り付けても良かったのですが、ここを交換したからと言って音質が
良くなるわけではありませんし、オーディオ黎明期丸出しの「チープ感」も重要です。ここはオリジナルを
尊重すると言う事でそのままにしました。
豆電球が周波数パネルに4個、チューニングメーターに1個使われています。嬉しい事に4個の電球がそ
のままでどれも切れていません。
メンテナンスなどされていないはずなので当時の電球がそのままなのでしょう。
電球の表面が汚れていたので汚れを拭うとこれまたぴかぴかに。パネルが少し明るくなりました。
赤いチューニング用のインジケータランプはLEDかと思ったらこれも小型の豆電球が1個使われていました。
パイロットランプはゴム系の接着剤?か何かで固定されていた様なのですが、経年劣化で液状化して溶け
落ちていました。これは全て取り去り、ゴムブッシュを加工して取付けました。
[機構部品の点検]
これだけのパネルデザインですから、ダイヤルとバリコンとパネルを糸で繋ぎ動かす仕掛けはかなり複雑
です。一部、シャフトが少し曲がって糸と糸が接触してこすれていましたので、曲がりを直しました。万が
一の事を考えて糸の張り方は記録しておいた方が良いでしょう。
[清掃]
ぞうきんでの水拭きはあまりよろしくないのですが、やはり埃と汚れが物凄いので、良く絞ったぞうきん
で拭きました。基板部分はさすがに拭けないので筆で埃を払います。
[部品の変更]
電気回路の方は、ICが一切使われておらず、全てディスクリートのパーツが使われています。
初歩のラジオの製作記事に載ってそうなラジオに毛が生えた程度の回路(失礼!)に見えます。
でもディスクリートの良い所は壊れていても個々のパーツ単位で交換できる事で上手くメンテナンスをし
て行けば末永く使えそうです。。
電解コンデンサーはかなり古いタイプのものが使われています。オリジナリティは尊重したいのですが、
流石に耐用年数は過ぎた物は怖く、今は動いていても後々周辺部品を巻き添えに突然死する危険もあるわけ
で、ここは思い切って全部交換する事にしました。
どうせ交換するならという事で、耐用年数の長いOSコンやグレードの高い電解コンデンサーを使いました。
これによって、音質は良くなりましたがアナログちっくな風味を損なわれませんでした。
もっとも、近年製造の電解コンデンサーはメタリックな風貌なので交換後は基板の上で見事に目立って浮
いて見えます。
もちろん、容量、耐圧の変更はご法度、あくまでも修理・補修のみに留め改造はしません。
[アンテナ]
この時代のアンテナ端子は鉄筋コンクリートのマンションがあまり無かった時代なので、FM用アンテナ
には平衡フィーダー用の300Ω入力端子があるだけで、今の様に75Ω入力のFコネクタは付いていませ
ん。AM用のアンテナ端子が無く外付けのバーアンテナで受信しますから、マンション内では設置場所が無
く不向きです。
幸いにも家宅捜査の結果インピーダンス整合器が出てきたのでこれを取付け、FM放送の受信は難なく解
決。AMは一先ず保留。
[動作確認・試聴]
さてアンテナケーブルを取り付けセッティングしたところで、秋月電子のデジタルアンプを接続しました。
ジャンク品ですが、きちんと改造すると10W+10Wのパワーアンプとして使え、音質もなかなかの逸品
です。ちょっとした音だしの実験の場合でもすぐに使えて重宝します。
チューニングのつまみを回すとパネルのメーターがくるくる回り、マジックアイに似たアナログ的な操作
感が実に魅力的です。エリア周辺のFM各局も問題なく受信できます。
音質の方はオーディオ向けのチューナーというよりはラジカセやミニコンポに近い音ですが、OSコンをか
なり投入したので、それなりにクリアな音質に変わったと思います。
さすがに PLLシンセサイザー搭載のハイエンドの機種と比べると隔世の技術の差があるわけで、音質の評
価は割り引いて考えるべきですが、この懐かしい音で懐かしい曲がかかったりすると、あたかも古き良き時
代にタイムスリップした様な錯覚を覚えてしまいます。
深夜の就寝前のひと時、灯りを消してパネルの灯りの中で聞くラジオは格別です。先日などは、期間限定
で復活したNHK-FM「クロスオーバーイレブン」の放送に出くわし思わずにやり。ネットラジオでは味わえな
い感覚だと最後に申し上げておきましょう。
完