[クラングフィルムのユニットを使ったメインスピーカシステムの製作]
                              
更新日:2012.2.2


【序】
  1998年、初めてクラングフィルムの KL42006を入手して以来、実に13年の歳月が
 過ぎてしまいました。オーディオだけに集中すれば良かったのに関係無い趣味で遊び
 過ぎたせいです。その結果、買った物の始末が付けられず、堆積した結果、身動きが
 とれない程に。。。
  結婚して引っ越した後、工作部屋がさらに手狭になり、仕掛品の始末を早々につけ
 ないとどうにもならなくなってしまいました。
 
  長年夢抱いてきたオーディオシステムを最終形態として完成させるため、延び延び
 になっていたメインのスピーカシステムに着手する事にしました。 パワーアンプは
 既に最終形態のものを製作済みですから、残るはプリアンプとスピーカです。
  スピーカは場所をとる上にボックス製作は休日の昼間くらいしか工作できず時間が
 掛かりますから、オーディオシステムを完結する上で最優先となりました。

  紆余曲折、図面作成に半年、製作に一年を要しましたが、ようやく念願かなって
 KL42006を稼動させる事ができました。

  スピーカシステムを製作といっても単にスピーカボックスを製作するだけの話なの
 ですが、最初から最終形態のスピーカシステムを目指し、作り直しを恐れていたので、
 なかなか製作に踏み切れずにいました。
  しかし、それでは何時まで経っても先に進めない訳で、宝の持ち腐れになってしま
 いますので、作り直しても良いくらいの気持ちで、金銭的リスクも考えつつ、安い木
 材を使って箱を試作する事にしました。
  今回作った箱での不満は次回に反映させればよく、図面を描き直して特注する事も
 考えつつ、先ずは作る事にしました。

  使用するユニットはクラングフィルムの KL42006で、以前モノラルのシステムとし
 て平面バッフルを製作していましたが、平面バッフルでの使用はやはり制約が多く使
 い勝手の悪さから断念しました。バッフル板はパイン集成材を使いかなり出費したに
 も関わらず廃棄したのです。

  ところで、「あれ? KL42006は一本しか持ってなかったのでは?」とこのHPを何度
 か訪れた方は疑問に思うかもしれませんが、実は3年前に偶然ペアを入手する機会が
 ありステレオを構成する事ができました。結婚式&新婚旅行前であったのにも係わら
 ずカミさんは快く承諾してくれたのでチャンスを活かす事ができました。

【設計】
  設計といっても計算式や指定箱があるわけではないので直感的に見積もって図面を
 ひくしかありません。オイロダインですと最低でも2m四方のバッフル版が必要です
 から相当なサイズが見込まれます。
  密閉は考えられませんから、後面開放か、あるいはバスレフ箱ということになりま
 す。ある程度低域は伸ばしたいので、背圧がかかり過ぎない程度に空気を抜くという
 考えで開口面積の大きなバスレフにしました。
  クラングフィルムのスピーカ相手にバスレフを適用するなどと、マニアから顰蹙を
 買いそうなのですが、置き場所がなく今後活用し続けていく上で止むを得ない状況で
 考えた挙句、出来上がった図面がこれです。



 
前面と後面のバッフル板は取外せるようになっていますので、手持ちのビンテージ
 ユニットをあれこれと付け替えできます。
  また、後面開放も出来るよう裏板も取り外し可能になっています。但し、設置場所
 の後ろの壁との距離を必要としますので、場所をとってしまいます。
  


【KL42006ユニットについて】
  KL42006 というユニットは30cm口径の汎用のフルレンジスピーカで、手持ちの
 文献を見る限りではオイロダインに搭載されているユニットより古く1920年代頃
 から製造され持ち運び可能なPAスピーカやモニタースピーカなど汎用的に使われて
 いた様です。
  少量生産の物ですから、現存しているユニットも同じ型番でありながら異なる形状
 だったり、ボイスコイルのインピーダンスが200Ωや15Ωがあったり、コーン紙
 もリペアされたものがあり状態は様々です。完全に同じ状態の物をペア組みするのは
 かなり困難なようで、テレフンケン製の KL42006もあるとの事なので、どういった経
 緯で製造されていったかは浅学の自分には解りません。

  今でこそ雑誌の記事でクラングフィルムのスピーカの実態が明らかになってきてい
 ますが、購入時は文献もなく、某ショップで偶々クラングフィルムのスピーカを試聴
 する機会に恵まれたため、購入を決意する事ができました。
  但し、その当時はWE-755Aがプレミアム価格であったのに対し、KL42006はまだそれ
 程プレミアムが付いておらず比較的安く買う事ができました。

 

【フィールド用電源について】
  このユニットは励磁型ですのでスピーカの電磁石を駆動するために1本あたり220V
 100mA程度の直流電源が必要となります。


  電源の回路図はこれです。 秋葉原で手頃なトランスを見つけたの新規購入し、そ
 れ以外は手持ちのパーツを利用しています。また、115Vタップは他でも使用するので
 外部に出してあります。

1次:0-100-115V、2次:0-200-220-240V、電力容量40VA

  見ての通り、整流してフィルターを入れただけの単純な回路で、チョークトランス
 はジャンク箱を漁り、大昔に買った1.25H350mAの物でアンプには使いづらいものを使
 用しました。整流後の抵抗は電圧調整の為に入れてあります。
  電解コンデンサはアンプに使うつもりの物を使用しましたが、250Vくらいの耐圧の
 物が使えますので容量を大きく採る事もできます。
  もっとも、負荷は「一定な抵抗+インダクター」ですからそれ程神経質になる必要
 はなく、リップルがあっても影響は殆ど出ません。
  安全のため、ヒューズは100mAの物を各チャンネル毎に設けています。
 メーターは2個分の合計の電流値を指し、個別には測定していません。

  それから、感電しないための工夫はもちろん必要ですが、ボイスコイルに誤って直
 流200Vを繋ぐ事がない様にする工夫も必要です。貴重なスピーカを一瞬で破壊してし
 まう様な事は何としても避けなければなりません。
 
【組立て・調整】
  スピーカボックスの製作に関しては工房も道具も充分でない状況での製作で、いつ
 もかなりのストレスを感じながら製作しています。
  補強を追加して塗装をしてどうにか聴ける程度にしたというところでの完成です。
 音のランクを上げるには良い木材が必要で、ボックスの容積もぎりぎりのサイズであ
 る事を申し上げておきます。
  ボックス内は画像の通り板を一枚橋渡ししてその上に電磁石のフレームを固定する
 様にしています。
  
 
【ネットワーク】
  KL42006 の周波数特性のデータは持ち合わせていませんので、視聴しながらツイー
 タを合わせ込むことを考えました。
  もちろん、KL42006 に匹敵するツィータを買うとなると気が遠くなる事を始めなけ
 ればなりませんから、無茶を承知で手持ちのFOSTEXのT90Aを繋ぐ事にしました。
  手持ちのコーラルの FLAT10U 用に使っているネットワーク(といっても高域側の
 自然減衰を利用したコンデンサ1個とレベル調整の抵抗のみですが。。)を当面の間
 代用しています。
 
【感想】
  手っ取り早く、現在稼働中のファインメットコアのトランスを使った6BQ5プッシュ
 プルアンプを繋いでの試聴です。このアンプにCORALのFLAT-10Uを繋いで鳴らしてい
 ましたが、音質の良さは手持ちのアンプの中でも群を抜いており、KL42006 との相性
 を確認したかったからです。

  クラングフィルムの本当の音を知らないので客観的に評価出来ないのですが、自分
 では50点くらいの及第点は取ったつもりです。材質が安物で箱が脆弱なのでJAZZとか
 ロックを音量を上げて鳴らしたい場合は作り直しが必要でこれからの課題です。。。
 しかし、自分が普段聴いている音楽であれば何ら問題ない様です。特にファインメッ
 トコアの音質が活きてきておりかなりクオリティの高い音だと感じました。
  オーディオマニアでないカミさんも「音が綺麗」と評しており、自分も満足してい
 ます。自分の求める音が確かにここにある事が確認できました。


【参考文献】
  ・Hi-Fiスピーカの活きた使い方 誠文堂新光社
  ・プレミアムオーディオVol.3 誠文堂新光社


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