[KT33C クォードU型アンプ]    更新日:2021.9.26
【序】    このアンプは「完結編 魅惑の真空管アンプ」でも紹介されたアンプをデッドコピー   したものです。(ですので、手っ取り早くKT33Cアンプを作りたい方は掲載記事を参照   して下さい)この記事が掲載された「無線と実験」のバックナンバーは知り合い(故人)   の遺品として貰ったもので、後に発刊された「完結編 魅惑の真空管アンプ」で多くの   方がこのKT33Cアンプの製作記事を目にされたと思います。    元々、馴染みがある球ではありませんでしたが、秋葉原のショップで KT33Cが安価で   売られていたのを目にし、見覚えのある型番でしたのでつい手を出してしまいました。   
【回路】    トランスレス球は電源トランスを省略して使用できる球という意味で、AC100Vを電源 トランスを介さず、直結で整流してB電圧が供給して使用できるよう、動作条件が 200V 程度で十分なプレート電流が流れる様に作られています。安価な電蓄用の球ではありま すが、50L6や35L6と同じく立派なオーディオ用途の球なので、アンプに仕立てればまっ とうに鳴ってくれます。    「無線と実験」の製作記事によれば浅野さんはこの球を有名なクォードU型回路で料   理しており、記事の本文にもある通り「KT66の半分の球?」と言うところからクォード   U型回路を採用するという、非常に茶目っ気たっぷりの内容になっています。丁度クォ   ードU型回路に触れるのにいい機会だと考えデッドコピーする事にしました。    このクォードU型回路は2本のEF86の第2グリッドをAC的に結合している所と、位相   反転は抵抗分圧で戻す方式でシンプルな回路です。
【シャーシ】    シャーシはLEADのケージ付きの170×300×40mmのMK-300を使用しました。製作記事の   寸法と同じで、寸法の縦横比が美しく安価ながら良く出来たシャーシです。また、薄手   なので加工し易いですが、表面処理が施されているので、素のアルミより強度がありま   す。    今回は浅野さんのアンプをデッドコピーしたかったので同じサイズのシャーシにして   トランスや真空管を同じ位置関係にしました。
【部品】    このアンプに使用する部品選定において最も困ったのが電源トランスです。トランス   レスの球をトランスアリで使用する場合とても面倒な事が起こります。つまり、200V   前後の低圧向けの電源トランスは入手しづらく(当時の秋葉原では)、ようやく秋葉原   の某ショップのオリジナル製品を見つけて使用しています。    また、出力トランスとチョークトランスはLUX製品など手に入りませんでしたので、   まだ安く手に入ったタムラのF485とA394を使用しました。    外装部品のつまみや電源スイッチ、パイロットランプは殆どが絶滅種ですが、秋葉原   で残存してたものを調達して使用しました。
【KT33C】    KT33Cはガラスの内壁にカーボンが塗られていて、見た目は6V6Gと変わらない外観です。   トップから覗き込むと十字型のプレートといくつも折りたたまれたヒーターが長方形の   スリーブに入れられているのが見えます。ヒーターは25Vですが、中点端子が引き出され   ているので、12.6を印加して使用できます。
【5V4G】    此処で使用した整流管はNL製の5V4Gでした、何故かちっちゃいG管になっています。   違和感があるのですが、ダルマ型なのでそれなりにマッチしたデザインです。
【組立て】    配置は浅野アンプを真似ていますが、同じ部品を入手する事は困難なので、厳密には   デッドコピーとはならず、随所で問題が発生します。浅野アンプは一見簡単そうに見え   ますが、ゲームで言うところの「初見殺し」が随所に仕組まれており、パズルの様に難 解です。    また、回路図通りに作りましたが、製作記事の実態配線図の様に整流管から直接トラ ンスのタップに接続するとリップルが多くなるのでチョークトランスへの配線は行って 戻ってに変更しています。 【試聴】    さて、ステレオ用の対のアンプに適当な物が無いので同じビーム管という事で5B255M   プッシュプルアンプをパートナーにして試聴しました。低圧大電流型の真空管がどうい   う音を出すのか興味深いものがありましたが、そもそもオーディオ用の球ですから、そ   れなりに期待通りの音質は得られていると思います。    弄りしろとして NFBを浅めに掛け直せばもう少し自分の好みに合うかなという感じで   すが、オリジナルを尊重して変えていません。 KT66 でないQuad型回路の応用例という   珍しさと KT33Cというあまり知られてない珍しい真空管が組み合わさったアンプという   事で、なかなか面白いアンプが出来上がりました。   
【参考文献】 ・ 無線と実験 1976年4月号 誠文堂新光社 KT33C A級プッシュプル10Wパワーアンプ 浅野 勇 著

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