PEN45プッシュプルアンプ製作
 6SL7GT-PEN45-6106
               更新日:2021.8.13
【序】     2004年に刊行された「完結編魅惑の真空管アンプ」に PEN45という真空管を使    ったアンプの記事があります。真空管のスケールとして6V6Gにルックスも特性も近いという    事で取り上げておりましたが、欧州管は日本では入手が困難で製作記事も浅野さんの記事以    外は見た事がありません。ところが、最近になって秋葉原の某ショップの店頭に PEN45の姿    がある事に気づき、つい手を出してしまいました。。。(^_^;)     2018年 9月のノグチトランスさんの廃業を機にアンプ製作を再開したのですが、自分のお    気に入りの部品の入手状況が極めて悪くなっており、懐の状況も悪化しているため手持ちの    ストック品を上手く使いながら、あと何台作れるかという状況になってきました。とは言え、    部屋を埋め尽くさんばかりの部品のストックはあるので、作れるうちに作っておこうという    わけです。念のために申し上げておくと決して「終活」などではありません。笑
魅惑の真空管アンプ上下巻刊行後に故・浅野勇さんが製作、無線と実験誌に掲載された記 事を纏め、「続々魅惑の真空管アンプ」が発刊されたのが早くも10年前。バックナンバーを 入手しないと見れなかった製作記事がカラー写真と共に復刻されて、御子息の浅野正さんも    座談会等で参加し、当時のエピソードを語るというなかなか内容の濃い本である事が判りま    す。     この本に取り上げられている真空管もなかなかのマニアックなもので、いずれも製作記事    の少ない真空管が取り上げられていて、興味が尽きません。さて、 6V6クラスの真空管に過    度な期待はもともと寄せていなかったのですが、珍しく秋葉原で PEN45が出ているのに気づ    き、若干高めなお値段でしたが、稀少真空管の音質を堪能したくなり手を出しました。     その後、何とかソケットを入手、丁度良いMARICのトランスも揃ってのアンプ製作となりま    した。
【PEN45】     英国の MAZDAが製造していたビーム出力管で、スペックも外形も 6V6-Gに似た球で、「続    々魅惑の真空管アンプ」の記事中でも 6V6-Gと比較されている真空管です。ただ、ST型のビ    ーム管、出力が10W程度というところでスケール感は似ていますが、ヒーター電力は4V,1.75A    の7W、一方の6V6はというと6.3V,0.45Aの2.835Wと倍以上電力を喰いますので、放熱に注意が    必要です。 【規格比較】
規格
Tube Plate
Voltage
Screen
Voltage
Grid
Bias
Plate
Current
gm Plate
Resistance
Load
Resistance
Output
Power
Heater
Voltage
Heater
Current
PEN45 250V 250V -8.5V 41.5mA 9000μ - 5200ohm 4.85W 4V 1.75A
6V6 250V 250V -12.5V 45mA 4100μ 50000ohm 5000ohm 4.5W 6.3V 0.45A
    表面についている銀色はシールド塗装でして、稀にこのシールドを剥がしてしまう方を見    かけますが、必要あって付いてるものなので止めた方が無難かと思います。
【回路】     「続々魅惑の真空管アンプ」に掲載されている PEN45アンプの回路は、前段、位相反転段    にECC35を使用しています。ただ、このECC35も入手困難でして、記事中にある通り6SL7で代    用しています。定数は変える必要はなく、後々ECC35を入手した時に差し替えも可能です。     ちなみに、PEN45は6V6の様に300V掛けれませんのでP-K分割ではちょっと動作条件が苦しく    なるので片側反転増幅となっている様です。 【PEN45のソケット】     このPEN45のソケットはUS8ソケットに似ていますが、寸法が微妙に異なっており、マツダ    オクタルとかロンドンオクタルという呼称のソケットが必要です。取り扱ってるショップも    少なく、PEN45よりも入手困難です。見つからない場合は加工可能なUS8を探すか、自作とな    ります。     ちなみに、オムロンの US8ソケットと姿形が似ているので視覚的な統一感を出すために採    用しました。こちらの方は現行品で容易に入手可能です。
    【左】マツダオクタル、【右】がオムロンのUS8ソケットです。     ところで、入手した PEN45のソケットですが、全く半田が乗らないので、事前に半田メッ    キを施しました。それから、オムロン製の US8ソケットを始めて使ったのですが、なかなか    シッカリしていて良いと思います。
【電源トランス】     次に電源トランスですが、シャーシはLEADのMK-300なので省スペースの密閉型のPC-121を    使用しました。これも絶滅希少品種のトランスですが元はジャンク扱いの代物を清掃、再塗    装して使いました。 【出力トランス】     これは、MARIC(松尾電機)のトランスで、偶然手に入れたものを使用しています。    仕様が解らなかったので、測定して調べたところ、10KΩP.P.用と判明しました。PEN45の適    合負荷は 8KΩ程度ですが、6V6同様に多少大き目でも使えます。
【入力トランス】     初段、位相反転段が双3極管の6SL7を使用しているため、入力トランスは不要ですが、シ    ャーシ上のスペースが空いて間が抜けた感じになるので、スペースを埋めるために採用しま    した。片割れジャンクなので、躊躇せず使ってみました。
【整流管】     手持ちに 5Y3が無かったのでBendixの6106で代用しました。此処は傍熱型の整流管の方が    良いでしょう。それから最近知ったのですが、現行品SOVTEKの 5Y3は傍熱型になっていまし    てお勧めです。
【完成】     さて、気になる音質ですが、実を言うと MARICのトランスを使用したアンプを作ったのは    これが初めてで、噂に聞いた。。いや、噂すら聞こえてこなかった幻のトランスという事で    緊張が走ります。(このHPでは 7581Aプッシュプルアンプを先に公開してますが、実際作っ    たのはこのPEN45が先です。)     整流管が6106なので電源オン後2分くらい音は出ません。待つ間はかなり怖いです。    漸く音が出て、一安心。しかし、直ぐにその音がかなりグレードの高いものである事が判り    ます。そのグレードの高さがPEN45だからなのか、MARICのトランスから来るものなのか判別    できませんが、少なくとも6V6とは全く違う音です。
【参考文献】 ・完結編 魅惑の真空管アンプ                   浅野 勇著  

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