[WE-101Fプリアンプ]            更新日:2011.6.11
 

1.コンセプト
  このアンプはラジオ技術 1990.10月号に掲載された新(あたらし)さんのアンプを
 自己流に電源回路を工夫しアレンジしたものです。
  WE-100番台シリーズの真空管はとても人気が高く、WE-101D に至っては価格が一本
  2万円近くまで跳ね上ってしまいました。 この球、元々電話回線等の通信用ですか
 ら 100〜200V程度の比較的低い電圧で使うのが前提でパワーアンプ向きではありませ
 ん。しかし、信頼性が高く、最大定格に余裕がある事から200V以上の電圧を掛ければ
 1Wそこそこのパワーが取り出せるの様です。WE-300B よりも音が良いとも言われる
 この球、無理をしても使ってみたいのがマニアの心情というところでしょう。
 別頁に示す通り、WE-101D を使ったシングルパワーアンプを製作しましたが、高能率
 のスピーカの力を借りなければそこそこの音量が出ないというのでは、実用的なパワ
 ーアンプとは言えません。
  そこで、WE-101DかWE-101Fあたりを使ってプリアンプをつくり、それでWE-101の音
 にイコライジングしておけば、後段に繋がるパワーアンプが音質を保ったままパワー
 を補ってくれるのではないかと言うのが本アンプの狙い目です。そして、プリアンプ
 程度の動作条件ならば、 WE-101D,Fは規格内の動作条件で使え負担が少なくなります。
 また、プリアンプに出力トランスを使う事で、トランス結合の音質を楽しむ事が出来
 ます。 下表にマニュアルから抜粋したWE-101Fの動作条件を示します。


WE-101F動作条件
Plate
Voltage
Grid
Bias
Plate
Current
Load
Resistance
Output
Power
Filament
Voltage
Filament
Current
130V -8V 6.8mA 12Kohm 53mW 4.15V 0.5A
【参考文献】   ・WESTERN ELECTRIC TUBE DATA Second Edition,March 1994 ANTIQUE ELECTRONIC SUPPLY   (注意)上記文献によればST管型のFilament Voltageは4.15Vだが、丸型の物は4.1Vとなって      いる。更に、「無線と実験」1982.7月号では4.0Vとなっているが、ここでは4.15Vの      値を採用している。 2.回路   回路図はこちら。手描きですが。。  もうかなり古い話になるのですが、回路に関してお問い合わせがあったので手描きの回路図を  作りました。 WE-101F以外は代替部品がありますのでお好みに合わせて作り替えて下さい。  3.部品について   部品について簡単に説明しておきますと、電源トランス、チョークトランスはUSA  製軍用品で、全て「真空管オーディオフェア」のバーゲンで買いました。ヒーター巻  線が足りませんのでヒーター用トランスを追加して使っています。整流管は6106、電  源回路は電圧の安定と高圧が掛からないよう150Vの放電管:OD3Aを用いて出力トラン  スに過電圧による過電流が流れない様にしています。また、放電管にはショート端子  が付いているので、放電管を外した時は真空管に電圧が掛からない様にします。   それから、出力トランスは UTCの A-25を使用し、15KΩ:500Ω(600Ω)のインピー  ダンスにて使用しています。   T型 600Ωアッテネータはマロリー製の物を使っ  ています。このアッテネータは元々スピーカの音量  調節用に作られた物らしく中は巻線抵抗です。T型   600Ωアッテネータが無い場合はプリアンプの入力  側にボリュームをつければ省略できます。アッテネ  ータにあまりこだわる必要はありませんが、アッテ  ネータは出力側の負荷抵抗となっているので、省略  する場合は出力が開放になって無負荷とならないよ  う注意しなくてはいけません。   それから、パワーアンプに接続する出力ケーブル  は、1m200円程度のマイク用ケーブルにキャノ  ンコネクタを付けて使用しています。マイク用なの で 600Ωのインピーダンスには最適かと思います。   ちなみに私の場合、雑誌やオーディオアクセサリショップの挑発には乗らず、ケー  ブルには最低限のお金しか掛けません。ケーブルに掛けるお金があるならば、もっと  プリアンプの出力回路にお金を掛けるからで、その方が同じ金額を使っても桁違いの  効果が得られると思います。   シャーシはLEADの蓋付きの弁当箱シャーシを塗装して使っていますが、このシャー  シは表面処理がされているので剛性があります。    4.部品の配置 5.製作上の注意点  ★WE-101Fのピンの加工。 WE-101 Fのピンは4ピンですが、UXピンとは異なり4本共  同じ細さで、足が短い上にピンの根元が半田で固められてお  り、専用のソケットが必要です。   専用のソケットを自作してもよいのですが、手持ちにウエ  ハータイプのUXソケットがあるので、ピンを加工して間に合  わせる事にしました。   先ず、寸法5mm、内径3mmの真鍮のパイプを用意し、UXピン  程度の長さにカットします。それを 3.2mmのドリルでくり貫  き内径を広げます。ドリルを横に寝かせて回転さ  せ、ペンチで真鍮を鋏んでドリルの刃に押し当てて加工すれ  ば比較的容易に穴を広げることが出来ます。(言うまでもな  く危険な作業なので注意してください。)  ★3端子レギュレータの使用方法   WE-101F のフィラメントは LM317という可変型3端子レギュレータを使用して   4.15V0.5A を与えています。この3端子レギュレータは、出力電圧を分圧して電圧調   整端子に与える事で出力電圧を1.2V〜33Vまでの範囲で任意に設定できます。   電圧設定の計算式はVout=1.25×(1+R2/R1)です。この時R2は240Ω(固定)で出力端子   と電圧調整端子に接続、R2は4.15Vに設定する場合、560Ωを電圧調整端子 GND(−)に   接続します。一方、固定型は出力電圧はになっているタイプがあります。  ★ USA製電源トランスについて    本アンプに使用した電源トランスは USA製軍用品です。しかし幸いなことに、入力   AC電圧:125,115,105Vに対応した端子が付いています。もちろん、日本の一般家屋の   コンセントはAC100Vなので、105V端子を使用しています。出力電圧を確認したところ   5Vの差は問題ありませんでした。更に、115V端子を昇圧出力として使い、ヒータート   ランスの入力AC電圧:117Vを与え、そこから6.3Vを得ています。ちなみに、これらの   トランスは60Hz仕様でそれを50Hzで使用しているのですが、プリアンプの様に消費電   流が少ない場合、トランスの出力電圧への影響は無く、トランスのうなりや発熱とい   った事も無いようです。  ★インチねじ     UTCトランスに付属しているネジはマイナスのインチネジです。しかし、物によっ   ては長さが短い貧相なネジがついていて厚めのアルミシャーシには取り付けられない   こともあります。秋葉原ではインチネジを取り扱っている店があるのですが、地方の   場合ネジ数本を通販というのもばかばかしい話です。そういう場合はタウンページや    Webで検索して、まず地元のネジ屋さんを探してみることをお勧めします。 5.シャーシ内部の様子 6.音を聴いての感想   スピーカの755Eを用い、パワーアンプと組み合わせた場合の感想について書きます。  主観的にはなりますが。。。(^^;  組合せ その1 WE-101Fプリアンプ vs 300Bシングルパワーアンプ   当初の目的として考えていたこの組み合わせは、予想どおり音質となり、満足のい  く結果となりました。   中国製の 300Bが WE-101Fの音にキャラクタライズされ、WE-101Dパワーアンプが大  出力で鳴っている感じがします。300BアンプはCR結合にしてあまり凝らず、音質に色  付けしない様にしたのは正解かと思います。  組合せ その2 WE-101Fプリアンプ vs Edシングルパワーアンプ   この組み合わせは、WE-101F の音質でありながら、Edがそれを上回るレベルで音質  を塗り替えている感じがします。スピーカの755Eはもう従うしかないといった鳴り方  です。  組合せ その3 WE-101Fプリアンプ vs WE-101Dシングルパワーアンプ   最初、WE-101の音色が色濃くなって素晴らしい音になるに違いないと予想し、最も  面白い「対戦カード」ではないかと思っていたのですが、結果は凡戦に終わりました。    WE-101Dシングルパワーアンプがそのまま鳴っていると言う感じで、 WE-101Fプリ  アンプを繋いだ意味は無い感じがしました。  組合せ その4 WE-101Fプリアンプ vs EL-34 PushPullパワーアンプ   この組み合わせも、300Bと同様にWE-101Fの音質にEL-34のパワーを上乗せした様な  音であると思います。  組合せ その5    WE-101Fプリアンプ vs 6V6GT PushPullパワーアンプ+FOSTEX FE103E   夏の間、あまりの猛暑に300BやEL-34といったヒーター容量の馬鹿でかいアンプに  電源を入れる気が起こらず、この組み合わせにてずっと音楽を聴いていました。   所詮は6V6、他のアンプには及ぶまいと思っていたのですが、聞き込むにつれその  音質が予想を上回っていることに気づきました。   この組み合わせをもってしてひとつの完成形にしても良いのではというくらいです。   自惚れですが、FE-103E を使ってこれほどの音を出せるのは他に無いと思ってるく  らいです。もっと早くにこの組み合わせを知っていればこれまでの無駄使いはなかっ  たかもしれません。 7.今後の展開?   本アンプを使って WE-101Fの音を楽しむには音質の色付けが少ないパワーアンプと  組み合わせれば丁度良いのではないかと思います。中国製の300Bが Western的?な音  を出しているというのも一興でしょうか。   WE-101Fや UTCの A-25の代替品はいろいろ考えられるので、ブランドにこだわらず  いろいろ組み合わせを考えるのも面白いと思います。 【参考文献】   ・ラジオ技術 1990.10月号 ラジオ技術社 WE-101D単管CD用ブースター・アンプの製作     新 忠篤著   ・ラジオ技術 1990.12月号 ラジオ技術社 WE-101D単管CD用ブースター・アンプの改造     新 忠篤著   ・無線と実験 1978. 7月号 誠文堂新光社 ウエスタンWE-101Dシングルステレオ・パワーアンプ 安斉勝太郎著   ・無線と実験 1982. 7月号 誠文堂新光社 Western Electricと真空管の歴史          安斉勝太郎著

戻る