胸の穴

胸に、大きな穴があいている。
随分昔から。
長いこと、大きな穴を抱えて、生きてきた。
胸の穴から、空疎感・厭世観・無気力感その他の負のエネルギーが漂ってきて、身体を、精神を蝕んでいく。

何回も、何回も、何回も。
幾度となくその穴を埋めようとしてきた。
でも、埋まらない。
もしかしたら、死ぬまで一生埋まらない。

欠けた、半身。
人間は、一人では不完全な生命体だ。
生まれつき、半身を失って生まれてくる。
だからこそ、完全なる一つになろうとしてあがくのか。
それが、人生なのか。
男は女を、女は男を、選び、探し、結ばれ、子をなし。
それが人間という種に与えられた本能という名のプログラムなのか。

「一人にして完全なる生命体」への憧れ。
生命の連環から外れ、孤独にして人生を送れる者への憧れ。
両性具有、アンドロギュヌス−違う。これらの身体的特徴では−

もっと純粋な−孤高な魂。
胸の穴を埋めることができれば、そうなることができるのだろうか。


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