贖罪
〜鎮魂の詩〜
…君は僕で 僕は君… −− へいわのかみさまはおおいそがし。 かがみをみるひまもなく、まいにち らっぱをふきます。 へいわのかみさまのらっぱは、みんなをしあわせにします。 へいわのかみさまはおおいそがし。 かがみをみるみまもなく、ふしぎなみずをまきます。 ふしぎなみずは みどりのやまをつくり、はたけをみのらせ、おはなばたけをつくります。 へいわのかみさまはおおいそがし。 かがみをみるひまもなく、みんなになまえをつけます。 きみのなまえはオットー。 きみのなまえはハンス。 きみのなまえはトマス。 きみのなまえはヨハン。 ヨハンはおれいに、じぶんのぼうしをかみさまにあげました。 かみさまはおおよろこび。 そのぼうしをかぶったじぶんがみたくて、はじめてかがみのまえにたちました。 でもかがみにうつったのは、あくまだったのです。 かがみのなかのあくまがいいました。 きみはぼく、ぼくはきみ。 どうしよう。 このあくまがいたらみんながへいわにくらせない。 どうしよう。 どうしよう。 こまったかみさまは… −− 「へいわのかみさま」written by Klaus POPPE in「Monster」by 浦沢直樹 小学館 君の行動、君の存在、君の全てが、君の罪。 君という不完全な存在を生み出し、指示を出し、動かしたのが僕の罪。 贖罪を…。 君の存在は消去される。 それが、贖罪。 君の罪。 僕の罪。 それらの、つぐない。 君の存在の消去を悼む。 君という哀しい存在を生み出した自分を恨む。 君を守りきれなかった自分を責める。 君を消去する僕を…許して欲しい。 それでも。 君は僕。 僕は君。 君という存在は消えようとも、僕の中で生き続ける。 いつか、新たな存在として生まれ落ちる事もあるかもしれない。 いつか、再会を願って。 さようなら、君。僕の映し鏡。 |