「ときめかないカップル」
俺が甘かった。続き書けって言ったけど、まさかこんな話になるとは…。

私立きらめき高校(なんて名前だ)には、恐ろしい伝説が伝わっている…。
卒業式の日、校庭のはずれの「伝説の樹」の下で告白された男は、既に彼女がいようがホモであろうがインポであろうが、そして相手が嫌いな相手だろうがストーカーだろうが顔面が土砂崩れを起こしたような女だろうが、例外なくその女とつきあわなければいけない、という伝説である。
しかもこの伝説には語られてはいないが、実はさらに続きがある。それは、「伝説の樹の下で待っています」という匿名の手紙をもらった時点で既に運命は決まってしまい本人の意志に関係なく伝説の樹の下まで行かなければならないという事実だ。故に、「手紙なんかもらったって行かなきゃいいじゃん」と舐めてかかった男は全員罠にはまった。呪いのビデオ(さ○子)や不幸の手紙も真っ青である。
そして、俺もその例外ではなかった。
まさか、あれだけの所業を積んできて、手紙を書いてくる根性のある奴がいるはずがない、とたかをくくっていたのが全ての失敗だった。
…そうして、俺は藤崎しおりとつきあう事になったのだった。

有名一流大学の「一柳大学」に合格し、サークルにも入り、俺には薔薇色の大学生活が待っているはず…だった。しかし、横3m以内からピッタリ離れようとしない藤崎が俺の大学ライフを思いっきり狂わせてくれる。オールラウンドサークルに入り、伝説など無視して理想の彼女を見つけようとしていたら藤崎まで一緒のサークルに入ってくるし、俺が「つきあってない」ってなんべん言っても「彼、恥ずかしがりやさんなの」の一言で片付けやがるし、お蔭で彼女持ちだと思って他の女の子は寄ってきやしない。おまけに藤崎にとる冷たい態度を見て、周りからは「田中君って優しそうに見えて結構キツイよねー」とか「しおりちゃんかわいそう」とか、揚句のはてには「田中君ち…実はヤクザらしいよ」「藤崎さん、脅されて無理矢理つきあわされてるんだってー」などとあらぬ噂まで出る始末。まあ、確かに日常的に「クズ」「死ね」「ゴミ」など怖い言葉ばっかり言ってるとしょうがない気もするが、俺は被害者だ。全てつきまとってくる藤崎が悪い。
…最近ではもはや諦めて、とりあえずつきあってる形にはしておいてとっとと嫌われて別れ話にもってこう、という気になった…。

水族館でデート。
「あ、かわいいお魚さん」
「本当だ。新鮮でうまそうだね。活け造りにしてまだ頭とかぴくぴく動いてるのとか食ったら最高だね
「…」(絶句)
(ふっふっふ。ひいてるひいてる。にしてもあれ、本当にうまそうだな。今度築地でも行ってくるか(もちろん一人で))
「…」(頭が良すぎる人間は発想が飛びすぎててちょっと怖いわ…。でもそんなところもちょっぴり好き♪)
「そういや、女体盛りってあるよな?あれ、男だったら一遍やってみたいって思うんだよな」(とどめの下ネタ…)
「…え?…あ…。わ、私で良かったら…」(さすがにちょっとアレだけど、精一杯応えるのがよね)
(なにぃっ!)
「い、いや…遠慮しとくよ…」(やべえよ。こいつマジでオカシイよ。何顔赤らめてんだよ。俺のほうがむしろひくよ。ああ、こんな女ヤダ。心底嫌だ。別れたい別れたい…)

某日…喫茶店にて。
「しおりー。砂糖いる?」
「あ、うん。頂戴」
「ミルクは?」
「ミルク?うん、欲しい」
「あっそう」(と言いつつ砂糖だけ渡す)
「…」
「どうしたの?早く飲みなよ」
「う、うん」(仕方ないのでミルクは自分で取った)
後日…しおりの誕生日。
「はい、プレゼント」
「わあ、ありがとう。何かしら?」
「しおりが欲しがってた物だよ」
「へえ、楽しみー」(と言いつつ開ける)
「………これ………」
「こないだ欲しいって言ってたもんなー」
「う…うん。とっても嬉しいわ、ありがとう…」
ミルク。(小○井のおいしい牛乳1リットル)
(嬉しいけど…なんだか全然嬉しくないわ…(涙))
(フッフッフ、嫌がってる嫌がってる。これでそろそろ別れる気に…)
「の、飲んでもいいかしら?
(なにぃっ!)
「も、もちろんだよ。さあ、どうぞ」
「じゃあ、一気にいくね?
ごきゅっごきゅっごきゅっごきゅっ…(一気に飲み干した)
「ああ、おいしかった。ありがとう、一郎君」(…よね?)
「よ、喜んでもらえて嬉しいよ…」(しまった…っ!こいつ予想外のリアクションしやがる!くそう!来年は醤油一升にしてやる!)

そういうわけで、俺の苦難の道は続く…。っていうか続かなくていいから別れさせてくれ。頼む、作者。次で終わりにしてくれ。

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