ホームズの他

 シャーロック・ホームズの作品を読んでから、他にエラリー・クイーンやアガサ・クリスティなどたくさんの推理小説を読みました。その中での一番のお気に入りは、都筑道夫さんの作品群です。特定の名探偵と言うわけではないのですが、コナン・ドイルとひと味もふた味も違った、正統派の「推理」小説として印象に残ります。(ドイルさん、ごめんなさい)ここでは、都筑道夫さんの作品について紹介していきたいと思います。



都筑道夫(つづき・みちお)さんの紹介
 1929年(昭和4年)、東京生まれ。早稲田実業を中退し、47年より雑誌編集に従事、かたわら時代小説を書きはじめ、その後、翻訳を手がける。56年早川書房に入社、「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」日本語版の初代編集長をつとめる。61年「やぶにらみの時計」で文壇にデビュー、都会派ミステリの旗手として注目を集める。著書に「七十五羽の烏」「なめくじ長屋捕物さわぎ」「退職刑事」など多数。


都筑道夫さんの作品について
 都筑さんの作品は非常に数が多く、作品の中に登場する探偵たちも大勢います。推理小説としての作品についてと、わたしの好きな探偵について述べます。
 都筑さんの作品は、特に初期のものはしっかりとしたストーリーと、事件の起こる必然性や理論的な解決といった点で、正に「推理」小説と言ってよいものだと思います。読者の知らないところで裏の物語が展開していたり、金田一さんのようなドロドロとした血縁の因縁や、引田天功のようなトリックなど、「推理」としてのアンフェアな事柄を全て廃して、合理的・論理的に事件を提示し解決していける小説が都筑さんの作品でした。中には、「雪崩連太郎」のシリーズのように、わざと異界を中心に据えた興味深い作品もありますが、本格的なものは、純粋に知的なゲームとして楽しめる緻密な内容になっています。最近の推理小説は、人気作家が大量生産しているせいか、筋の通らない内容や表現が目立ってきているように思います。○○旅行シリーズなんてものは、旅の深みも推理の深みも感じられないものが多いですから。都筑さんの初期の作品は、とにかく読み応えのある小説たちでした。
 その中でも、わたしは「七十五羽の烏」「最長不倒距離」「朱漆の壁に血がしたたる」の三部作(勝手に言いますが)が、傑作中の傑作ではないかと考えています。そして、この三作品の中で探偵を努めるのが、物部太郎と片岡直次郎のコンビです。ホームズとワトスンのコンビとはだいぶ趣を異にしますが、名前といい性格といい変わった探偵たちです。この探偵たちについては、また機会がありましたらまとめてみたいと思っています。



都筑道夫の作品リスト

出版社書 名発刊年
角川文庫悪魔はあくまで悪魔である1976
十七人目の死神1976
キリオン・スレイの生活と推理1977
阿蘭陀すてれん1977
キリオン・スレイの復活と死1977
黒い招き猫1978
吸血鬼飼育法1978
キリオン・スレイの再訪と直感1978
紙の罠1978
悪意銀行
悪夢図鑑1 あなたも人が殺せる1979
悪夢図鑑2 感傷的対話1979
悪意事典1 魔女保険1979
悪意事典2 幽霊売ります
悪業年鑑1 スリラー料理1980
悪業年鑑2 ダジャレー男爵の悲しみ
七十五羽の烏1980
最長不倒距離1980
朱漆の壁に血がしたたる1980
ダウンタウンの通り雨
苦くて甘い心臓1981
血みどろ砂絵1981
くらやみ砂絵1982
からくり砂絵1982
あやかし砂絵1982
きまぐれ砂絵1982
かげろう砂絵1982
都筑道夫ひとり雑誌 第1号1983
都筑道夫ひとり雑誌 第2号
都筑道夫ひとり雑誌 第3号
都筑道夫ひとり雑誌 第4号
都筑道夫スリラーハウス
危険冒険大犯罪1984
妖精悪女解剖図1985
まぼろし砂絵
おもしろ砂絵1986
キリオン・スレイの敗北と逆襲1989
頭脳大テスト第一巻〜第三巻1983
集英社文庫暗殺教程
怪奇小説という題名の怪奇小説1980
雪崩連太郎幻視行1980
雪崩連太郎怨霊行1980
犯罪見本市1981
全戸冷暖房バス死体付き1982
びっくり博覧会1982
殺されたい人 この指とまれ1982
銀河盗賊ビリィ・アレグロ1983
猫の目が変るように1983
サタデイ・ナイト・ムービー1984
光文社文庫証拠写真が三十四枚1987
世紀末鬼談1987
西洋骨牌探偵術1986
いなずま砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ1988
死体置き場の舞踏会 西連寺剛の事件簿1998
ベッド・ディテクティヴ
目撃者は月1998
中公文庫やぶにらみの時計1975
東京夢幻図絵1978
新潮文庫酔いどれ探偵1984
泡姫シルビアの華麗な推理1986
昨日のツヅキです1987
25階の月1988
徳間文庫退職刑事1980
退職刑事 21981
退職刑事 31985
未来警察殺人課1982
講談社文庫三重露出1978
夢幻地獄四十八景1980
にぎやかな悪霊たち1982
文春文庫名探偵もどき1983




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