超常現象




それはもう10年以上も前のこと。
当時花の独身貴族(死語)だったるふ
いつもの通勤コースを通って会社へ向かっていた時の話。

いつも通り車を走らせるるふ
午前7時過ぎのこの時間はまだまだ車は少ない。

自宅から出てほどなく行くとあるカーブにさしかかる。
そう見晴らしも悪くなく、ぱっと見は別になんてことないのだけど、
このカーブ、実はほぼ90度の直角。
信号が少なく、直線が多い上に通る車も近くの国道より少ない。
ついついスピードを上げてしまう条件が揃っている。
しかもこのカーブの手前には橋があるため、下って来た勢いで更に加速し、
カーブにさしかかる頃にはかなりのスピードがでてしまうのだ。
過去何回か曲がりきれずに
クラッシュ
したバカがいるらしい。
だんだん厳重になるガードレールと
道路に刻まれたブレーキの跡が
ソレを物語っている。

橋を下って減速するるふ号。
ここで速度を落とさないとカーブを曲がるのはキツい。

と、そんなるふの車の横をしゃーっと追い越して行く影。

へっ?と思い見ると、一台の車がスピードを上げたまま抜き去って行った。

(↓のセリフはコナンモードでお読みください♪)

「ぉぃぉぃ。 そんなに急いでどうするんだぁ、おっちゃん。」


まぁ、たしかにどう見てもスピードの出そうにない車だし、
追い越したくなるのもムリはないだろう。

当時るふが乗っていたのは
親類から格安で提供してもらった軽の中古車。
スデにおシャレに変身していたニューモデルのソレとは違い、
新車当時は輝いていたであろうそのボディーはもはや色褪せ、
黄ばんでいるとでも言った方がお似合いなくらいだった。
助手席のシートは側面が破れて中のスポンジが丸見え。
足元は配線コードがムキだしで味もそっけもない。
かわいらしく飾り立てたぬいぐるみや造花等の類も一切なく、
まちがってもナンパ車には使えそうにない。
いや、ナンパ車に使う気など毛頭ないが。
ソレ以前にナンパされる相手がいないと言った方が正しいか。

だからって追い越すのはカーブ曲がってからでも遅くないだろうに。


と、見る間にカーブへさしかかったその車のブレーキランプが光る。
が、何事もなかったかのように車はそのまま曲がっていった。

”ちっ、上手く抜けていったか”
イケナイ妄想にちょっと心躍らせたるふだったが、
その期待はアエナク水泡に帰した。

だが、その直後
ききぃ〜〜
というブレーキの音。

なんだろう?猫でも飛び出したかな?
そう思いカーブを曲がるとそこにはさっき追い越した車の姿。
しかしナンかおかしい。

・・・・・・・・ってなんで横向き?

この車横走りする新型車なのか?

・・・・・まさか、欽ちゃん走りでもするつもりか?

ンなワケはない。

と、次の瞬間目の前で起こった信じられない光景!



飛んだ!


飛びやがった!

車のクセに!

あっという間もなく左側の田んぼ目掛けて一気にジャンプする車。


ぉおおおおおおお!

するとあろうことか、なんとソイツは
空中で旋回!
右へ進路を変えていくではないか!
そう、るふの車が走るのと同じ方向へだ。

その後車は滑るようにまだ青々とした稲穂の海へ沈んで行く。
それはさながらスキーのジャンプ競技の着地をみるかのような
美しい光景だった。
そして見事着水♪

すっげぇぇぇぇぇぇ!!

その間、時間にしたら約数秒。
思わずつられて脱輪してしまいかねない程 見入っていたるふ

車は見事に道路と平行に並んでいたのだ。

その横を追い越しざまにふと運転席を見る。

そこには両手でしっかりとハンドルを握って
硬直したままのおっちゃんの姿があった。

おおぅ、無傷だ!
スゴイよアンタ!
チャチなカースタントよりよっぽど見せてくれるじゃん!

くくく・・・・・・・・・。
世の中にはすんごいおバカがいるもんだ。

満足気にその場を去るるふ。(そのままかい・・・・・)


会社に着くやいなや、早速誰彼構わず朝の出来事を自慢気に語る。
しかし、誰も信用しない・・・・。(そりゃそうだ)
あまりにも現実離れしたその話は話す相手全員に否定され、
思わず自分の記憶に自信をなくしかける・・・・。

その日の夕刻。
帰りに同じ道をまた通りかかる。
現場へさしかかりふと見ると、そこにはもう何もない。

アレ?
おかしい?
やっぱり夢だったのかな・・・・???

しかし、その時ソコにクッキリと残っていた稲穂の倒れた跡!

やっぱりアレは幻ではなかったのだ。

・・・でもコレって・・・・どこかで見たような・・・??




・・・・・・・・・・・・そうか!

やっと疑問が解決した。






「ミステリーサークルって
こんな風にしてできるのかあ」
(違うだろ!)


その後あのカーブに
更にガードレールと速度注意の看板が増えたことは言うまでもない。