性能は優れていますが、安全性の問題で使いこなし方が難しいリチウムイオン電池に関し、現在の所、具体的な安全性の規格を定めているのは、米国のULと日本の電池工業会です。その両者は、条件が微妙に異なりますが、全般的には、ULのようが厳しい要求をしています。その他、携帯電話メーカーで独自規格を持っているところがいくつかありますが、多くのメーカーはUL取得を採用の条件としています。
日本のDoCoMoは試験項目、試験条件ははっきりしていますが、合格基準が明示されていないようです。
以下は、米国のUL1642 [第3版(1995年4月26日)、1999年6月24日修正版] のリチウムイオン電池への安全性試験の要求事項です。なお、詳細については、ULの原本を参照して下さい。
試験項目 | 試 験 法 | 要 求 |
外部短絡 | 環境温度に戻るまで継続、室温および 60℃ (保護素子つきの場合) 保護素子を動作させない最大電流で再試験 |
破裂、発火なし ケース温度 < 150℃ |
異常充電 | 放電状態から 充電電流:3Ic 充電電圧:規定せず 充電時間:tc=2.5C/3Icまたは48時間の長いほう 充電電流は直列抵抗により調節。 保護素子が動作するときは素子が動作しない最大電流で再試験。 Ic=1C → tc=50分、従って充電時間は48時間。 |
破裂、発火なし |
強制放電(1) | 試験セルは放電状態。試験セルを充電フレッシュセルに接続。 フレッシュセルの数量は[直列数 - 1]。 パックを銅導線で短絡。 試験時間:ケース温度がほぼ室温に戻るまで 保護素子が動作するときは素子が動作しない最大電流で再試験。 |
破裂、発火なし |
圧壊 | 2枚の平板で圧壊。最大力は13kN (1.36トン)。 セルの2面について実施。 |
破裂、発火なし |
衝突 | 15.8mm径の丸棒に9.1kgの重りを610mmから落下。セルの2面について実施。 | 破裂、発火なし |
衝撃 | 初期3msの平均:75g、ピーク:125-175g、3回、3軸、20℃ | 破裂、発火なし。 ベント、漏液なし |
振動 | 10-55 Hz, 1Hz/分, 1.6mm p-p, 1サイクル、3軸 | 破裂、発火なし。 ベント、漏液なし |
加熱 | 5℃/分、150℃で10分間キープ | 破裂、発火なし |
温度サイクル | 温度プロファイルは右図。 10サイクル後7日放置して評価 |
破裂、発火なし。 ベント、漏液なし |
低圧 | <87 Torr (0.11気圧), 20℃, >6時間 | 破裂、発火なし。 ベント、漏液なし |
火炎片(2) | 綿布を試験セルから91cmにセット。 明るい青色炎のバーナー。 セルが破壊されるまで。 |
綿布が発火しないこと |
射出物(2) | 試験セルを金属金網かごで覆う。 かご内でバーナーによりセルが破壊 されるまで加熱。 かご:蓋つき8面。寸法61cm、高さ30.5cm 金網:金属線(0.25mm径) 16-18線/インチ |
電池部品がかごを貫通しないこと |
(1) 組セルで使用する目的のセルのみ
(2) ユーザー交換電池のとき試験する
火炎片および射出物試験を除き、全てフレッシュセル5個、サイクルセル5個について試験。火炎片および射出物試験はフレッシュセル5個について試験
充放電サイクル:90日間の連続充放電もしくは公称サイクル寿命の25%の内の短いほう