虫めづる姫君 「堤中納言物語」より

 
物語
 虫好きな姫君が主人公ですが、虫の記録などではありません。世間一般的な考え方や
習慣を否定して我が道を行く虫好きな姫君と、それに振り回される周囲の人々のお話で
す。虫は登場するのですが、姫君の悪趣味を表現する材料となっています。
 理想を持つところまでは良いとしても、世間一般の常識は受け入れることができない、
まあ、若者にはよくありがちな事で、場合によっては未熟な気さえすることがあるので
すが、この姫君もまたそのような年頃のようです。そのような姫君と世間の人々との考
え方のずれを面白く描くことが、この物語の趣旨であるようです。
 もっともらしい理屈を付けて自分を通そうとする姫君、またその理屈に太刀打ちでき
ずに困り果てた親たち、どうにも悪趣味な虫好きの姫君をもてあます付人たち、そんな
姫君を覗き見しようとする近所の若者たち、さまざまな人々の心の動きを巧みに描写し
ながら調子よく語られます。