リスクマネジメント(risk management)とは危機管理の意で、発生の可能性がある危険を察知し、それを未然に予防したり、発生してもそれを許容範囲内に抑えたりする活動であるといえます。
一般的に、よく認識されている例としては、火事、交通事故や盗難が挙げられますが、経営は、これらの他にも、市況、相場を始めとして様々なリスクにさらされています。
会社経営では、労働基準法、労働安全衛生法、労働保険・社会保険等の様々な法規制をクリアしなければなりません。
例えばサービス残業は、日常の状態の積み重ねであることが多いためか、そのリスクはほとんど認識されていない感がありますが、ある日突然に労働基準監督署の調査や臨検を受けて労働基準法違反が明らかになれば、状況によっては賃金の時効が2年間であることから、従業員数が数十名の会社であれば、たちまち過去2年分を遡った未払残業手当として1千万円を大きく超える割増賃金を所定の期日までに支払わなければならなくなることも考えられ、また、こうした民事責任の他に刑事責任を問われる可能性さえあります。(刑罰が科される可能性があるということです。)
最近では、労働基準監督行政により、これらの適用が強化されつつあり、労働者の権利意識も高まりつつありますので、サービス残業のリスクはますます大きくなっています。
もう少し話を進めると、こうした会社では日常においても従業員の不満がうっ積しており、やる気の欠如(責任感がない、創意工夫をしない等)、すぐ退職してしまい能力ある人材が育たないといった状況も多いのではないでしょうか。他社との競争で切磋琢磨していかなければならないビジネス社会において、このことには、むしろ、いっそうの危機感をもつ必要があるといえるでしょう。
退職金制度については、かつての高利回り運用を前提とした退職金支払い負担ができなくなってきているにもかかわらず、退職金規程等で高水準の退職金支払いを規定したままになっている場合には、財務的には支払い困難でも法的には支払い債務が発生してしまいます。退職金制度は労働者の退職後の生活にとって極めて重要ですので、この場合には在職中の待遇を含めて十分に総合的な検討を行なって、できる限り労働者の理解を得られるように退職金規程等の見直しを図るべきでしょう。
また、労災事故など、前述以外の各種の経営リスクに対しても備えが必要です。
リスクマネジメントは、会社だけでなく、そこで働く従業員の安心にもつながります。