The valley is cute.
Because the barren air does that.

The valley is cute.
Therefore as for there
the winter being cold, summer hotly so.









あなたは生きているような。

でも視線を合わせる人が減ったような。

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過去Doc一部あります。






橋本インソムニア(ただいま凍結中)

インソムニア1
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インソムニア2
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風が流れる川
315本の薔薇

 

彼女は飲み屋でナンパされた。

彼は高級そうなスーツを嫌みなく着こなしていて相当な遊び人だな。と思った。

彼女は友達と二人だったし、アルコール臭い息でしつこく話しかけてくる彼を適当にあしらっていたがあまりにのしつこさに口論となった。彼女は非常に気が強くこの手の男が嫌いだった。それは自分の外見が非常に軽く見られやすいという彼女曰くある種の被害妄想に近いものがあったせいだという。

結局、店の主人が間に入るまで罵り合いが続いたのだけど、どこでどうなったのか最終的に彼は彼女の友達の電話番号を手に入れたのだという。後でその事実を知って彼女は目眩がするような脱力感に襲われた。

彼女はその頃昼はデパートのバイト、夜は水商売のバイトをかけもちしていた。
彼は実はとある広告代理店の営業をしていた。
ま、どちらも虚業と言えなくもない。

彼と彼女の再会はわずか一週間の後。

彼女の働く店に彼はやってきた。片手にはセロファンで包まれた一輪の薔薇。
彼女はあらゆる意味でのけぞった。


お詫びの印といって花を持ってくるくっさいタイプの男は苦手な納豆の次くらいに嫌いだし、彼女の居所を彼女の友人から聞き出したのも気にくわない。彼女の友人のキモチを考えれば立つ瀬もないというものだった。一番気にくわないのは、あれは酔っぱらっていたからという言い訳が男らしさのかけらもないヤツだと思った。

彼女は薔薇を受け取るとそのまま叩きつけ出て行きやがれと彼を追い出した。
その後に支配人の鉄拳制裁ときっついペナルティがついたが彼女は後悔の気分は微塵もなかった。

ところが彼はまた現れた。
二度目は彼女は受け取ったがあなたのせいでひどい目にあったと告げると、彼は深く頭を下げて立ち去った。
それからまた現れた。
またしばらくすると現れた。
いつも片手に薔薇の花が一輪あった。

彼女が降参するまでそれは続いた。つまりは根負けしたわけだけど陥落するまでゆうに半年かかったというから、彼もそれなりにガッツがあったといえるかもしれない。逆に半年で受け入れた彼女も彼に好感を持ったと言うことなのだろう。

彼が彼女に会う長い出費期間はこうしてやっと終わったわけだけど、それからも必ずしもうまくいったわけではなかった。なんせ夜も昼も働いている彼女とサラリーマンの彼はすれ違いだらけで、まともに会うのにも一苦労だった。やがて彼女は片方の仕事をやめたが、やめたのは昼の仕事の方だった。週一回でも会えれば良い方だった。

ただ彼は彼女と会うときは必ず薔薇を一輪手に持ってきた。薔薇の種類は時々変わっても一度として欠けることなく深夜であろうが多忙であろうがだ。彼女が突然彼の家にやってきた時はさすがにムリだったが、彼が彼女に会うときはいつも薔薇を手にしていた。

ここで一つの事実がわかる。突然彼がやってくることはない。準備しなければならないから。
つまり彼と彼女のつきあい方はちょっとした線が引いてあるような所があったのだろう。

時々彼女は彼に聞いた。その花はいつまで続くのかしら?と。
彼は胸を張ってずっと続くと答えた。

ある意味それは彼の性格をよく表しているとも言えた。彼は思いの外几帳面で固い部分があった。面白いことに彼は薔薇が手に入らない日はどうやら彼女と会うのを断念さえしていたようなのだ。ちょっと偏執気味とも言える。その訳を聞いても彼は「そう決めたのだ」と答えるだけだった。

その薔薇は喧嘩の時は投げつけられ、それを受け取って和解の印となった。穏やかに受け渡しされる日もあり涙が濡らす日もあった。

どんな異様な儀式も繰り返されれば常識になる。やがて彼女が薔薇に興味を失うと彼女の部屋の片隅の一輪挿しへ彼は事務的に直行するようになったがそれでもその儀式は続いた。

その奇妙な儀式が終了したのはその薔薇が315本目のことだったという。
彼女はもちろん何本目か覚えてなかったが彼は315本目だと彼女に告げた。彼が言うのだから間違いはないだろう。

彼女は妊娠した事を彼に告げた。
彼はすかさず結婚しようと彼女に笑った。その日が最後だ。

こうして彼と彼女と薔薇の不思議な恋愛期間が終わったのだった。

それって本当に一度も欠かさず持ってきたのかな?
と、私の隣に座っている私と同い年の男が彼女に聞いた。

彼女はカウンターの向こうでダウンライトの下に顔に濃い複雑な陰影を浮かび上がらせながらハハハっと笑った。
それはもう四半世紀以上も昔の話なのだ。薔薇の彼は病気でもう随分前にこの世を去ったらしい。目の前の彼女はそれから長い歴史とドラマを超えて美しく年老いているのだった。

高級そうなボトルが並ぶ棚を背にして彼女はマドラーを回す手を一瞬止めた。そしてちょっと考える仕草を見せた。

彼女の記憶では3回手ぶらでやってきたことがあるらしい。
一度は彼女の誕生日に東京から最終便で帰ってきた日、残り二回は彼女が病に倒れて連絡してかけつけた時だったそうだ。

いずれも彼は落ち着くとメモ帳に薔薇の花をペンで書いて照れくさそうに彼女に渡した。
彼なりのジョークのつもりかもしれない。けれどその3輪の薔薇が一番嬉しかった。と。

かなり時間を置いて、その次が薔薇の花をやめてくれたことかな。と彼女はほほえんだ。

いい話だねえ。でも良い話だけどちょっとデキ過ぎじゃない?とこの店の常連でもある彼が笑った。
彼女も屈託無く笑って返した。

私は初めての店でずっと黙っていたのだけど、気になって口を開いた。
なぜ薔薇だったんでしょうね。と。
彼女は「さあねえ」と軽い調子で答えた。途中で理由を聞きたくなくなったのよね。と、含みのある笑顔で僕の前に新しい水割りを置いた。

まあ調子に乗ってちょっと話をふくらませすぎかもね。とも。カウンターの他の客も笑った。

だけどだ。
カウンターの隅に生けてある花はやっぱり薔薇なのだった。


昔話だけどそれはやっぱりウソではないような気がする。
昭和のロマンチックなおとぎ話でもないような。

(2005.5.20)




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