真昼の光は嘘をつく

 

 

 

 

 雲の白さ一つない、純粋な空色

 世界が青で染まっている

 この世に自分しかいないのではないか

 そんな錯覚も起こさせる程に

 

 

 

 

「おや」

 視界一杯の青空を遮るものも、やはり青。

「サボりですか?先輩」

 空と同じ色の髪が一筋、さらりとこぼれた。

 

 

 

「おぬしこそどうした、優等生?」

 問えば、クスリと目を細めて覗き込んでいた顔を引いた。

「授業が早く終わったので。もう昼休みですよ」

「だからといって屋上に入っても良い理由にはならんぞ」

 ここ屋上は生徒立入り禁止区域。

「あなたの悪い所が移りましたね」

 下界にざわめきが戻ってきた。

 

 

 

 

 断りを入れずに横に着く。

 後ろで一つに纏めている紐を解いて、髪を自由にした。

 屋外で仰向けになって空を見る。

 この解放感を知ったのは最近の事。

 

 この、年下の先輩に出会ってから。

 

「今日はどうしたのですか」

「これ程の天気に室内におるなどというも勿体無い真似ができるか」

「飛び級組の方とは思えないお言葉で」

 くすくす、と笑い声が風に響いた。

 

 

 

 この人にとても会いたかった

 この人をずっと探していた

 

 

 もしもこの人に会えなかったのなら、

 僕はこれからもずっと 寂しかった

 この先 ずっと  寂しかった………

 

 

 

 

「予鈴が鳴ったぞ」

 ひょい、と先程と逆の体勢で覗き込まれる。

 陽に当たると赤く透ける髪と、深く優しい双眸。

「行かなくて良いのか?」

 引き込まれるような暖かな色だ………。

 

「あなたは?」

「言ったであろう、勿体無いと」

「そうですね、いい空ですからね」

「加えてもう一つ、要素が増えたからのう」

 戻るのは惜しいよ。

 解かれた長い髪をひとすくい、静かに口付ける様が見えた。

 

「それじゃ、僕も戻れないじゃないですか」

「嫌か?」

「いえ………勿体無いですから」

「そうか」

 

 

 

 本鈴が鳴る

 水が引くように静かになる地上

 いっそ、滑稽なほどに

 

 

 作り物のように平和な光景。

 真昼の光の下では皆偽りを演じる。

 

 

 例えば

「楊ゼン」

 今、僕の名を呼ぶ優しい声とか

 降りてくる、貴方の唇や

 

 

 予定調和

 これも、貴方の決めた筋書きでしょう?

 

 

 それでも

 

「楊ゼン」

 

 それでも、いい

 

「何も、考えるでないよ」

 深い瞳に引き込まれる。捕われる。

 

 

 

 

真昼の光は嘘をつく

 

 

とても上手な絵を描いてる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一回やってみたかったがおそらく封神ではしないと思っていた学園モノ。

年齢のイメージ的には大学とかの方が良さそうだとは思ったのだけど、大学はサボりが目立たないから高校。

楊ゼン二年で太公望三年(年齢的には一年)ってとこかな。楊ゼンも飛び級しようと思えば飛び級できるんだけどあえてしていない。(免許持ってるのに道士名乗ってた人だしね)

…………いや、ただ単に師叔を先輩って呼ばせたかっただけといえばそれだけなのですが。

 

タイトルは谷山浩子より。でもBGMは笠原弘子の「おちてきたリンゴ」でしたわ。

 

 

back