おひさま

 

 

 

「買い物行くけど、行かない?」

 屋内にいる事が多くなったクラピカにも、声を掛けることにしている。

「いや………私はいいよ」

「あ、そ」

 ここであっさり引くべきか、しつこく誘うかでいつも迷う。

「えー、行こうよクラピカ。ね?」

 迷ってる間にゴンが動くのもいつもの事。

「………わかった」

 このやりとりに、何か不愉快なものを感じるのは一瞬だけ。

 

 

 

 買い物帰りの寄り道。

 草の上に既に転がっているのは勿論ゴンだ。

 荷物も放り出して、

 生もの無くて良かったと思いながら後に続く。

 後ろでわずかに戸惑う人に笑って見せて。

 

 

 

「そうそう、んな事あったよなー。あとさ……」

 この頃、思い出話が好きになったみたいだ。

 話せるような思い出が増えたのか、それともオレの心境か。

 なんにしろたいした変化だな。

 これは皆、ゴンの影響だけど。

 引きつける、変化させる。

 だけどもその中心はそのままに。

「お前って変っわんないよなー。だからずっと好きだけど………っておい」

 寝てるし。

 こんの野生児。

 

 まあいっけどさ、と視線を上げるとその向こうにいた奴とバッチリ目が合う。

「…………」

「…………」

 しばらくお見合い状態、の後クラピカが吹き出した。

「あーもう、笑うなら堂々と笑えよ!我慢は体に良くないぞ!?」

 恥ずかしさのため我ながら言ってる事が謎。

「お…お前っ…相変わらず肝心なところで要領悪っ……」

「だああ、笑いながら喋んな!なんかムカツク!!」

「言ってる事が違うぞ」

「いいんだよ!大体――――」

 怒鳴ろうとするのを遮って、近づいた綺麗な顔にドキリとする。

「起きる」

 目線でゴンを示して、穏やかな声で。

「オレ達の気配なら、余程の事がなきゃ寝てると思うけど?」

「念のため、な」

 声に劣らぬ穏やかな眼差しは、最近になって得られたもの。

「一世一代の告白だったのにな?」

 クス、悪戯っぽい瞳も同じく。

「そんなんじゃねーよ」

「そうか?」

「そうだって。意外と、簡単に言えるものみたいだから」

 こんな具合に。

「え…………」

 耳元に口を寄せ、静かに短い単語を告げた。

「ね?」

「………成程」

 

 

再び、空を向いて転がる。

 強すぎない日差しが心地良い。

 

 

「キルア」

 向く気はないから、声だけを聞く。

「何」

「『おひさま』は近付いたか」

 

 その子供じみた表現が何を指すか

 判らないほど遠くには、いない

 

「………うん、多分ね」

「それは良かった」

 

 

「良かった………」

 身を起こして、ゴンを見下ろす瞳が柔らかだった。

 恐る恐るといった呈で伸ばされる手を見る。

「大丈夫、だよ」

 その『おひさま』は壊れ物でもなければ、アンタを燃やし尽くしもしないから。

「………そうだな」

 

ふわふわと、少しだけ髪を撫でて、また遠く視線を移した。

眺めるものが、遠い。

 

 オレは今、どこにいるんだろう。

 

「オレは、友達に近付きたいとは思うけど」

 放っておくと、距離をおかれると思い、

 その金の髪に手を伸ばす。

「アンタを離す気はないから」

 サラリとした感覚に、クラピカは身を引くでもなく目を瞑る。

「………欲張り」

「そーだよ、悪い?」

「いや………」

 琥珀色の瞳が覗く。

 

 さっきと逆

 耳元で紡がれる、短い音

 

「慣れてきたじゃん」

「進歩はしないとな」

「ふぅん」

 

 お互いにくすくすと忍び笑いを洩らしながら。

 流れのままに口付けた。

 

 目を閉じれば、草の匂いや風の流れ。

 大事な人の気配と、ゆるやかに交わされる温度と。

 おひさまの存在

 

 あたたかく照らす陽の庇護のもと

 もう少しひたっていてもいい

 

 

 

 傍にいるだけで

 ばかみたいに幸せ

 

 

 照らされている間は許される

 どうかこれからも

 こんな自分でも暖めてくれるように

 

 

 

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイトルは、岩男潤子というか谷山浩子というか………?

個人的には岩男さんの方がいい味していた(というか可愛かった)と思うのですが、ウチにあるのは谷山さんの方。無論こっちも大好きです。レベルはこっちの方が上だと思いますし。

余談ですが岩男さんのラジオでこれを聞いた時、思音嬢は「君は僕の……王子様?」(正しくはおひさま)と不思議がっていました。『僕』の『王子様』はやばいね。その後「王妃さま?」と続いたものです。

この曲はもろにゴンに捧げたくなります。絶対キル→ゴンだなぁと。しかしクラ受以外書く気はなかったのでこうなりました。あくまでカップリングとして絡むのはキルクラオンリーです。

微妙な問題ですが、私の中で恋人よりも友人の方がランクが上なのですよね。しかもキルアやクラピカ、ゴンに信仰心すら持っていそうなので。

あくまで『おひさま』はゴンであって、2人は共犯というか……別に悪いことしてないけど。まあ同類。

そんな私のゴン観話でした。時間は数年後……かな?ちょっとクラピカが燃え尽きているので多分。

 

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