前提条件………不二兄弟・跡部・佐伯は小学校時代同じテニススクールに通っていた
「わぁ、二人ともすごーい」
「当然だろ」
「まあ努力してるからね」
「そうだね。二人とも頑張ってるよね。どんどん上手くなったもの」
「センスは不二が一番だと思うよ。飲み込みは俺たちの中で一番早いし」
「でももう君達に抜かれちゃったけどね」
「だから当然だっての。オマエみたく向上心の薄い奴に、さんざん練習してきた俺達がいつまでも負ける筈ねーだろ」
そんな会話を一歩引いたところで聞いている裕太(10歳)。
向上心は人一倍。ただし生まれて10年、一度たりとも兄に勝った試しなし。
しかもテニスに限らず。
「ひどいなぁ、僕だって頑張ってるよ?そりゃ君達には適わないだろうけど」
「そういう台詞は血豆潰してから言いやがれ。ったく、何だよこの綺麗な手はよ」
「うーん、そう言われると反論できないけど、でも………」
一歩引いてる不二裕太(10歳)、じっと己の手を見る。
「あ、そろそろ帰ろうか裕太」
思い出したかのように振り返る自慢の兄(11歳・そうだよ一つしか変わらないってのに)
にこにこと邪気の無い笑顔で自分の手を取り歩き出す。
「お腹すいたね。夕御飯なんだろう?」
他愛も無い話を振ってくる兄の右手は、勿論何もやっていない者と比べれば豆もあり皮も硬いのだが、今現在重ねられている己の左手よりも遥かに『綺麗な』手をしている。
「…………………………」
「裕太も随分上手になったよね。綺麗なフォームになってきたし」
歩みを止める不二裕太(10歳)、褒められたところでこの兄に勝った事なし。
「?どうしたの裕太?」
「うっ、うわああああああぁ!!」
生まれて初めて(ちょっと誇張)、自慢の兄(信じ難いが年子)の手を振り解き走り出した不二裕太(しつこいようだが10歳児)。
「裕太!?」
呆然とかわいい(彼の中では一切誇張なし)弟が夕日をバックに走り去るのを見届け、よくできた(むしろ出来すぎた所が欠点な)兄は呟いた。
「第二次反抗期には早いよ………?」
と。
「「不二………」」
跡部・佐伯両名が呆れた様に、弟に同情するように(多分コレは無い)名を呼ぶ声だけが夕暮れに虚しく響いた。
なんてね。
まぁ跡部・佐伯両名だって、本当に幼馴染(つーか同じテニススクールメイツ)だとしたら不二を周助ではなく不二と呼んでる時点で裕太はあまり目に入ってない訳で、何も言う資格ないけど。いやどうせ言うようなハートフルな奴らじゃないだろうが。
不二は、天然白で「僕何か悪い事言ったかな?」というタイプでもいいし、
黒で「裕太は泣きそうな顔が可愛いんだよねv」とか言っててもよし。
自覚ない分白の方が後々タチ悪いと思うけど。