column  CQ hamradio創刊号の怪?

はじめに ・・創刊700号おめでとう


 日ごろ重要な情報源として愛読させていただているCQ出版社発行の月刊誌「CQ hamradio」が、このほど(2004年10月) 創刊700号を迎えたとのこと、心よりお祝い申しあげたい。
 私どもハムにとっては、まさにCQ誌に育てられ、そしてCQ誌とともに歩んできたという思いがある。

 平成11年(1999年)に長野ハムクラブが創立50周年[設立は昭和24年(1949年)8月] を迎えたとき、クラブの歴史をまとめる必要に迫られ、このときは本当に大勢のOM方から昔の貴重な資料を多数お借りすることができたのですが、どういうわけか古いCQ誌だけがなくて、結局は同社が発行された「アマチュア無線のあゆみ」を大いに参考にさせていただいたことを思い出している。

 後になって古いCQ誌をいただく幸運に恵まれ、その中になんと創刊号まで私の手元にある(と、今まで喜んでいた)のですが、たまたま冒頭のCQ誌10月号(創刊700号記念号34ページ)で、JA2RM:氷室貢二OM が書かれた当時のご苦労話を大変に興味深く読ませていただき、とくに CQ hamradio 創刊号の表紙写真 に注目したのです。

 創刊号の写真そのものは、先の「アマチュア無線のあゆみ」216ページにもありますが (後で気がついた。ただしこれはモノクロ写真) 、今回 まじまじと眺めていておかしいことに気づきました。

 余談ながら創刊号の写真といえば、ラジオ工房の内尾悟さんのホームページにもカラーで掲載されています。内尾さんも、いろいろなラジオ雑誌の創刊号をコレクションされておられる。


CQ ham radio 700号CQ誌2004.10創刊700号記念号34.35頁 CQ誌1948.7No.1-4合冊
CQ誌2004年10月号創刊700号記念号の表紙と、本誌に掲載されたJA2RM:氷室OMの記事。 CQ誌創刊号発行のころのご苦労話が胸を打つ。
右側の掲載写真がCQ誌創刊号の表紙。(これは本物です) 昭和21年(1946年)9月1日発行。
因みに、2号は10,11月号として11月に、3号は翌22年3月、4号は 5月に発行された。通巻2号から4号までの表紙を、、機会があればぜひ見てみたいものだ。
手元にある赤と黒のツートーンカラーのCQ誌創刊号の表紙(と思って喜んでいた)。
右下部に、No.1 No.2 No.3 No.4合冊の文字が見える。中身はそれぞれに表紙こそないが、本物。 発行は、昭和23年7月1日となっている。定価120円、送料10円。科学新興社刊。1冊に通巻1号から4号まで入っている。


創刊号は ・・・2種類??


 何がおかしいか、それば私の手元の無線雑誌 CQ hamradio の最初のものは、No.1 からNo.4 までの合併号となっているのです。No.5 からは単本で発行されています。表紙は赤と黒のツートンカラーです。しかも No.1, No.2, No.3, No.4 合冊とはっきり印刷されています。下部には日本アマチュア無線連盟とある。

 おやっ と思って裏表紙を見ると広告も入っているし、定価120円、送料10円とある

 上部の日付を見ると、なんと昭和23年6月25日印刷、昭和23年7月1日発行である。表紙を開くと目次のところには、「第1巻第1号昭和21年9月号通巻1号」と書いてある(発行は昭和21年9月1日)。出版元は科学新興社です。 「・・・??」

 パラパラとめくっていくと32ページの後に また1ページ、下部の目次には「第1巻第2号通巻第2号」発行は昭和21年11月1日、以下同じように「第2巻第1号通巻第3号」発行は昭和22年3月1日、「第2巻第2号通巻第4号」発行は昭和22年5月1日、と4冊分がまとめて入っている。
 中身はどうも本物?(同じ版で後日印刷されたとは思えない)のようです。

 紙はもちろん、終戦直後の物不足を反映してざらざらした今にも破れそうな茶色の紙です。そのため印刷もかすれています。これは経年変化のせいだけではなく、私どもの年代の方には忘れたくても忘れられないのですが、小学生のころの教科書、ノート類はみんなこのような状態でした。(これは余談)

 No.5 からは単本となっていますが、No.9 までは科学新興社発行で、No.10 からは出版元が CQ出版社に代わっています。定価も当時の物すごいインフレを物語るように頻繁に変わっています。
 因みに 第1号 定価4円 送料30銭、第2号 定価5円 送料30銭、第3号 定価7円 送料30銭、第4号 定価12円 送料50銭 となっています。発行も毎月ではなく、飛んでいます。この辺の事情は(JARLに携わった方々の並々ならぬご苦労話などが)先の氷室OMの掲載記事にくわしく掲載されていますので、どうぞご覧ください。


CQ誌1947.6No.5 CQ誌1947.9No.6 CQ誌1947.11No.7 CQ誌1948.1No.8 CQ誌1948.4No.9
CQ誌通巻第5号。昭和22年6月1日発行。定価15円、送料1円50銭。ただし、定価のところは30円と訂正してある(通巻8号まで)。 HAM RADOIO回路集として6V6-807、3バンド(3.5,7,14M)60W送信機が掲載されている。 CQ誌通巻第6号。昭和22年9月1日発行。定価15円、送料1円50銭。HAM RADOIO回路集としてハリクラフター社のスーパースカイライダーSX-28(15球通信用受信機) が掲載されている。 CQ誌通巻第7号。昭和22年11月1日発行。定価15円、送料1円50銭。日本で聞こえる短波放送局一覧表とか、VHF,UHF用のコンバーター回路が掲載されている。JARLバッジ予約受付(正員30円 準員20円) なんていうのもある。 CQ誌通巻第8号。昭和23年1月1日発行。定価20円、送料1円50銭。表紙写真の説明がある。J2AHI には2人のオペレーターがいる。1人は Colvin少佐(カリフォルニア出身)で、もう1人は 戦後の日本における唯一の XYLハム(Colvin夫人) とある。 CQ誌通巻第9号。昭和23年4月1日発行。定価30円、送料3円。アメリカ各社の通信用受信機配線図特集となっている。
ハマーランド
Super-Pro,HQ-120,
ナショナル
NC-100A,One-Ten,
ハリクラフター
S-20R,,S-36など。


創刊号の怪とは ・・・三つのなぞ?


ならば 創刊号に似て非なるこの合併号発行の怪 とは何か? まずは@発行元の怪。CQ出版社は NO.10 から科学新興社に代わって発行していますから、No.1 からNo.4 だけをなぜ合冊して科学新興社が出したのか? 各冊で出してもいいし、No.9 までをまとめて出してもよさそうなものです。ただ、手元の No.5 から No.9 までは単冊で、No.8 まで定価のところに ご丁寧にもそれぞれに 30円と青色の訂正ゴム印が押してある。

 つぎは A発行年月日の怪、なぜこの時期になって出したのか? この時、No.11(昭和23年7月1日発行、定価30円 送料6円)が CQ出版から発売されています。しかも、この合冊本の定価が 120円、送料10円と発売当初よりかなり高い設定です。

 そして、Bどういう経緯で、誰になんの目的で発売されたのか?

 考えられるのは、当時の JARL役員、盟員から強い要望があって増刷し、限定販売したものなのか?
 しかし、この時期はまだ 盟員がなかなか集まらなくて募集に躍起となっていたとある。当時は情報不足もあり 地方までなかなか行き届かなかったようですから(このころはまだ、全国のどこの本屋にも置いてあったわけではない)、発売部数が伸びず、かなりの部数が残ったと考えるほうが自然かもしれない。
 そんなことを考えると財政面でも 出版社の資金繰りがかなり悪くなっていたと思われるから、そんな限定発行、販売をする余裕はなかったであろう。とすると、No.1 から NO.4 の中身の在庫一掃と資金捻出の一挙両得をねらった 科学新興社のアイデイアの産物であったのか。私どものような地方でも手に入ったことを考えると(本の値段からして誰でも買えたというわけではなかった)なんらかの告知を出していたのではないか、などなど思いを馳せれば馳せるほど興味がつきない。秋の夜長の頭の体操を楽しみながら・・・。


CQ誌1948.6No.10 CQ誌1948.7No.11 CQ誌1948.8No.12 CQ誌1948.9No.13 CQ誌1948.10No.14
CQ誌通巻第10号。昭和23年6月1日発行。定価30円、送料1円50銭。この号からCQ出版社発行に代わる。アマチュアラヂオの工作法ABCと題して送受信機自作のためのノウハウが連載されている。大正15年6月に日本アマチュア無線連盟が発足したという思い出記事もある。 CQ誌通巻第11号。昭和23年7月1日発行。定価30円、送料6円。 現JARL原昌三会長の50Mcコンバーター製作記事が掲載されている。Q符号表なんていうものもある。
広告欄の真空管価格をご参考までに。UX42 195円, UX2A3 485円, 6ZDH3 245円, KX80 125円, KX5Z3 285円。
CQ誌通巻第12号。昭和23年8月1日発行。この号から第三種郵便物に認可されている。定価40円、送料3円。電気蓄音機のピックアップとフォノモーターについて説明したオーディオ記事掲載がめずらしい。 CQ誌通巻第13号。昭和23年9月1日発行。定価40円、送料3円。 この号から表紙に10月号と入いる。そして表紙の解説がおもしろい。左下の大型の電磁ラッパから輻射された電磁波を導波管の先についた小さい電磁ラッパで受け導波管で曲がりくねった道を伝える様子(両端の電球が点く) を図案化したものと。デザインはもちろん亀倉雄策氏。 CQ誌通巻第14号。昭和23年10月1日発行。定価40円、送料3円。
じつは、この表紙の裏側に CQ誌創刊号の怪 の謎を解く鍵が隠されていた。表紙の写真は、GE社のライトハウスメガトロンとのこと。送信管の一種でしょうか。
アマチュア無線の黎明期を書いたJARL今昔譚という連載もの も掲載されている。


ついに、怪のなぞが解けた!


 後日、丹念に最初からもう一度本を読み直してみたところ、なんと本文ではなく広告欄に大いなる?発見をしました。CQ hamradio No.14 (第3巻第7号通巻第14号、CQ出版社 昭和23年10月1日発行) の表紙裏に科学新興CQ hamradio No.14掲載広告社の広告が掲載されているではないか(右写真)。
 「CQバックナンバー、No.1〜No.4 合本(送共)120円、 No.5〜No.9 各冊(送共)30円」と。

 なんのことはない、少なくとも No.8 もしくは No.9まではこの広告を見て取り寄せたことは間違いない。
 合冊の意味も定価の訂正もこれで分かる。前述の推理も当たらずとも遠からず、まんざらでもないと思った次第。
 そうすると No.1〜No.4 だけは中身を刷り過ぎて裁断もされず積み残し、倉庫か何かにあった、そして表紙だけ新たに刷り直し 製本したものなのか。

 本は、中身だよと言われそうですが、この手元の合併号を見るにつけ、黄色い表紙の創刊号でないのが、実に残念! 復古本という形での発行ができなかったものか。 ・・・CQ誌創刊700号という慶事のときに、まことに不謹慎きわまりないことと ひんしゅくを買いそうだが、合冊発行にかかわるこの辺の真相を どなたか存じておられれば、ぜひ聞いてみたいものと思う。

 いずれにせよ、当時の JARLの先輩たちが無線局開設(再開)に向けて、占領軍を相手にいかに血のにじむようなご努力をされていたか、また地方でも私ども長野ハムクラブを立ち上げたころのOM方が、無線の知識と技術の向上のかたわら、どれほど再開を夢見ていたことか、このことは決して忘れてはならないと思う。
 無線局再開はそれから数年後の昭和27年まで待たねばならなかったのですから・・・。

 CQ hamradio の創刊当時のことは CQ出版社のホームページ「アマチュア無線の歴史」にもくわしく載っている。


エピローグ ・・・OM方から うれしいお便り

高橋敏夫OM力作の著書「DXの歴史」

 うれしいことに、CQ誌創刊号からNo.4 までの各表紙のきれいな画像を、「DXの歴史」の著書(月刊ファイブナイン発行、右写真)をお出しになられた JA1BWA:高橋敏夫OMからわたくしのためにわざわざ送っていただき、氏のご好意により下記に掲載させていただいた。

 高橋OMは、創刊号から最新号まで全巻をお持ちとのことです。その他の無線関係の雑誌も創刊号からお揃えのようで、本当にうらやましいかぎりです。
 OMは、これらの貴重な資料を保管する立派な書庫までもお持ちで、氏のHP(下記)で拝見することができます。ご配慮に心からお礼を申しあげます。ありがとうございました。

 下写真
左から、昭和21年9月発行CQ誌創刊号(No.1)、昭和21年11月発行第1巻第2号(No.2)、昭和22年3月発行第2巻第1号(No.3)、昭和22年5月発行第2巻第2号(No.4) です。

 また、お近くにお住まいのJA0EQL:北原OMからも、もう一冊ちょっと変わったCQ誌創刊号が手元にあるよ、とのおもしろいお話をいただきました。なんと、最初のページの巻頭言は初代会長の八木秀次さんではなく、当時の原昌三JARL会長さんがお書きになってるとのこと??
 じつは、昭和50年4月に 富士山麓朝霧高原グリーンパークで開催された「第1回全日本ハムペンション*」 の参加者に記念品として配られたものだとのことでした。(原会長さんはその挨拶文をお書きになっていらっしゃる)  表紙はもちろん、中の印刷の不鮮明なところまで見事に復刻されているんだそうです。
 いやぁ、びっくりしました。北原OMも古い無線関係の書籍などをたくさん集めておられます。
  (2005.3.16 エピローグ追記)

 *
この大会、じつは現在毎年開催されている恒例の「ハムフェア」の前身であるという。


CQ誌1946.9No.1 CQ誌1946.11No.2 CQ誌1947.3No.3 CQ誌1947.5No.4

 (秋の夜長の謎解き ・・・CQ誌創刊700号発行を祝して。2004.10.20記 Copyright (C) 2004-2013 TOKU All Rights Reserved.)

  関連資料リンク

  写真に見る長野ハムクラブ50年史
  ラジオ工房内尾悟さんのホームページ ラジオ雑誌創刊号
  CQ出版社アマチュア無線の歴史 1940年代年譜表
  JA1BWA:高橋敏夫OMのホームページ
  JA0EQL:北原OMのホームページ
  

   本ページ冒頭へ     表紙(コンテンツ)へ