わたくし流モダンジャズ道
モダンジャズとの邂逅 マイルスデイビス ソニーロリンズ ジョンコルトレーン お気に入りのアーティスト モダンジャズにかける私の夢 エピローグ

V モダンジャズにかけるわたくしの夢


持つべきは・・・ジャズともだち

持つべきはジャズともだち こうしてここまでジャズジャイアンツたちを見てくると、最近のジャズシーンはどうなっているのか、また、どう感じているかについての私見・・・早い話が、わたくしの独断と偏見について披露しないといけませんね。
 このベージの表題も、だんだんと熱くなってきて、なんと「ジャズにかけるわたくしの夢」なぞと言う、青っぽい書生じみたものを書こうなんて、まじめに考えたりしたのですが、この歳になって今さら夢もなかろうと、ここでハッと醒めたしだい。

 ということで、内容はまぁ、わたくしの「最近のモダンジャズ考」くらいに思っていただいて、どうぞ軽く流してください。

 ところで、冒頭から自己満足的な写真、まことにもって恐縮です。わたくしの隣り(左)に座っておられるのが、近くにお住まいの畏友のNさんと、氏ご自慢のリスニングルームなのです。
 実はわたくしと同じハム仲間なのでありますが、地元では知る人ぞ知る ジャズレコードのコレクターでもあるのです。

 ブルーノートを中心に数千枚、壁際の棚にぎっしり。それもオリジナル盤にこだわって全国を歩かれて集めたという、つわものなんですね。日ごろ知りたいことがあるときは、とにかくまずはお教えを乞う、わたくしの心強い師なのであります。
 それこそ、ジャズ談義で時間が経つのも忘れて、いつも長居となって奥様にご迷惑をおかけしてしまうのですが。
 持つべきは、いつでも語れるジャズともだちですよね。ジャズが何倍も楽しくなるというものです。

 そして、最後は、共にジャズが好きになった原点であるキングオブスイング、ベニーグッドマン楽団の話に及び、あのころのグッドマン(クラリネット)、ジーンクルーパ(ドラムス)、テディーウイルソン(ピアノ)には、もうホント泣けるよね、となるのであります。
 ・・・というわけで、この日お宅に持参したのは、なぜかビルエヴァンスをはじめとした、ピアノが主体のレコードなのでありました。


そして、もう一度ビルエヴァンスを

 上記の写真に写っている2枚のレコード、うち1枚、ちょこっと見えるのが前章で紹介したオリジナルジャケットでない「サンディーアットザビレッジヴァンガード」(再発輸入盤)と、もう1枚がエヴァンスが亡くなった1980年9月15日の後に、急きょリバーサイドから出されたアルバム「メモリーズオブビルエヴァンス」なんですね。

レコードジャケット写真35 後者の追悼アルバムには、スコットラファロと組んでいたころのビルエヴァンスの絶頂期の4枚のレコードの中から何曲かセレクトされて入っているので、残念ながら既発のものとダブるのです。
 しかし、うれしいことに、ここには「エクスプロレイションズ」の同日セッション(1961.2.2)から「ボーイネクストドア」と、ビレッジヴァンガードでの演奏(1961.6.25)から「ポーギー」の2曲が未発表のテークとして新たに収められているんですね。この2曲はこの盤でしか聴けないのです。

 ところが、もっと驚くことにもう一枚、スコットラファロのラストレコーディングとなったあの1961.6.25録音のビレッジヴァンガードでの収録曲の中から、オリンキープニュースが未発表テープを探し出してくれて、1984年リリースされたレコードがあるのです。

 このアルバムが「不思議な国のアリス」(左のジャケット写真35)なんですね。普通はレコードが出されると収録テープというのは処分されるそうですが、幸運にもこのテープ1巻が残っていたというのです。
 この日は午後と夜あわせて5回のステージで13の曲目を、延べ23回(曲)* 演奏したというのですが、エヴァンスにしてはめずらしくすべてがご満悦だったと言うんですね。
「ワルツフォーデビー」と「サンディー・・・」のアルバムに各6曲、「メモリーズオブビルエヴァンス」に1曲、上記アルバム「不思議な国のアリス」に7曲が収められたということは、当日の演奏で聴けないのは結局3曲(Gloria's Step, All Of You, My Man's Gone Nowの別テーク)だけということになるんですね。

 なんとこの追悼アルバムには、すでに発表されている7曲の別テークが入っているのです。これがまたどれもすばらしいもので、エヴァンスとラファロのファンにはもうたまビルエヴァンストリオとオリンキープニュースらないですよね。
 因みに、オリンキープニュース自身が本盤のライナーノーツでつぎのように書いている。(spring 1984)

 「あのとき何か重大な突発事故が起こり、録音できなかったならと考えるとゾッとする。スタートして間もなく電気が30秒間切れて、録音不能になった最初の演奏(GLORIA'S STEP)のことを鮮やかに思い出す。

 しかし、どんな不都合も二度と起こらなかったし、音楽に関してはスタート時から、あらゆる点で失敗するはずもなかった。当時私が記した"エヴァンスとラファロの間に見られる強力で桁はずれで、創造性に富んだ相互関係(the strong,unusual,and richly creative interrelation)"は、演奏全体にわたって際立っている。(brilliantly)

 また、このコンビのの素晴らしさを強調するあまり、ポールモチアンを軽んじてしまうわけにはいかない。彼は適切でユニークなトリオ・コンセプトの開発のために、目立ちはしないものの不可欠な貢献(quite essential contributions)をしている。ユニットのサウンドがこれ以上だったことはないかもしれない。もしそうだとするならば、彼らはその最高到達点で終焉を迎えたのだ。ショッキングなアイロニーだが、このセッションが彼らの最後の共演になった。10日後、ラファロはハイウェイの自動車事故で死亡したのである。」と。(同盤ライナーノーツの坂口紀三和氏翻訳から引用)


 右上写真は、リバーサイド「メモリーズオブビルエヴァンス」のLPジャケット写真から引用。
 左からオリンキープニュース、スコットラファロ(ベース)、ビルエヴァンス(ピアノ)、ポールモチアン(ドラムス)。

 当日の夢のような熱演のほとんどすべてが聴けるなんて、ファンにとってはこれ以上の幸せはないですね。この盤には Alice In Wonderland, Detour Ahead, All Of You, Gloria's Step, My Romance, Jade Visions, Waltz For Debby の7曲の別テークが収められています。1961ビルエヴァンス・ビレッジバンカードコンプリート盤

 しかしです。うれしいことに近年に再発されたCD盤「BILL EVANS THE COMPLATE LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD 1961.6.25」には、これらの別テークがボーナストラックと称してほとんどすべて入っていて、聴くことができるんですね。(左写真 3枚組コンプリート盤ボックス)

 また、今年(2005.9.15)は、ビルエヴァンスが亡くなってから ちょうど25年が経つんですね。リバーサイドから、1956-1963年に収録した彼の名演147曲を網羅した こんなビッグ企画の記念CD全集も出されたんですよ。

 こうしてエヴァンスをじっくりと聴いていると、あのジャズの帝王マイルスデイビスのモードジャズも、エヴァンスがいて、はじめて完成したんだ、とつくづく思いますね。
 そういう意味でも「カインドオブブルー* 」 は、ホント、マイルスとエヴァンスのフィーリングとエモーションが共鳴し合って、至宝とも言うべき作品がてきあがったんですね。
 これは奇跡でも偶然でもなく、必然的に生まれた作品ということになるのでしょう。

*CBS 1959.3-4録音のアルバム(マイルスデイビス編参照)。このアルバムのためにマイルスは、すでにグループを退団していたエヴァンスをわざわざスタジオに呼び寄せたという。


ピアノトリオは、いつの時代もジャズの花

 最近、CDショップをのぞくと、ピアノトリオがとにかく目白押しですね。なかでもエディーヒギンス(1932- )がご高齢にもかかわらず、またがんばっておられる。この方は、昔、来日したこともあり、トリオで活躍していたんですね。

 そして、わたくしがまっ先に思い出したのが、あのジョーンズ兄弟のうちのひとり、ハンクジョーンズ(1918-2010)のことでした。
 彼は、1975年に、トニーウイリアムス(ドラムス)とロンカーター(ベース)と組んで、グレートジャズトリオを結成して活躍したんですね。
 再出発するについて、彼はピアノタッチを強くするために指の強化訓練(猛特訓)をしたそうです。このシリーズのレコードは当時よく売れたようですし、モダンジャズ界にもいい刺激を与えることになったのです。
 そして、とにもかくにも力強いジャズで、わたくしたちファンを楽しませてくれたのでした。

*ジャケット写真36 ハンクジョーンズのダイレクトフロムL.A.レコードジャケット写真36
 チュニジアの夜、ラウンドアバウトミッドナイト、サテンドール、マイファニーバレンタインの4曲が収められている。本アルバムはトリオを再結成して6作目になりますかね(そのうち1枚には渡辺貞夫さんが加わっている)。
 このときハンクは、なんと59歳なんですが、年齢差を感じさせない息の合った力強い演奏を聴かせてくれる。 East Wind 1977.10.6録音

(2010.5.18緊急追記)まことに残念な悲報が入りましたね。2010.5.16、ニューヨーク・マンハッタンのホスピスで彼は亡くなったという。91歳だという。最近まで元気に演奏活動を続けていたのに・・・ 心からご冥福をお祈りいたします。

 ジャズピアノはいつの時代も、花形なのです。現在のジャズシーンもいま花盛りですね。
 でも不思議なことに、昔からピアノトリオのベストアルバムというか名盤が、あるようで、なかなかこれがないのですね。ビルエヴァンスなぞは、奇跡ですね。サイドにまわったときの名盤はそれこそたくさんあるのに、です。
 そんな中から数枚、わたくしなりきにセレクトしたのであります。ちょっと古かったかな?

レコードジャケット写真37 *ジャケット写真37 バドパウエルトリオ
 バドパウエル(1924-1966)は、いわゆる1940年代のバップムーブメント(開祖)のひとりなんですね。ピアニストで彼の影響を受けなかったひとは一人もいないんではないでしょうか。
 このレコードでは、やはり1947年に吹き込んだA面が圧巻です。最速でアドリブを演奏するパウエルは、まさに神がかっているとしか思えませんね。この人を称してアメージングパウエルとはよく言ったものです。

 また、この速さに正確無比についていけるマックスローチ(ドラムス)も驚きですが。この時代に、このピアノこそ来るべきジャズだと言った人も、またエライ! でも、今聴いても緊張感とスリリングがあって、やはりすごいですね。
 ベースはカーリーラッセル。B面は1953年録音で、サイドがジョージデヴィヴィエ(ベース)と、アートテーラー(ドラムス)。「パドパウエルの芸術」 Roost 1947.1.10 1953.9録音。

 バドパウエルと言えば、パリに移住する直前の作品「ザシーンチェンジス」(BLUE NOTE 1958.12.29録音)の中の『クレオパトラの夢』はあまりにも有名ですが、円熟したハードバップを聴かせてはくれるものの、残念ながらこの絶頂期の冴えとか、スピード感は比べようもありませんよね。

レコードジャケット写真38 *ジャケット写真38 デュークジョーダン(1922-2006)
 手元にわたくしは、「ジャズラボラトリーVOL.1デュークジョーダン」(1955.3.7録音) のタイトルで、なんでもシグナル原盤だというおもしろいレコードを持っています(残念ながら、手元のものは再発ものですが・・ 左のジャケット写真38にマウスポインタをあててみてください

 A面には、デュークのピアノに、ジジグライス(アルトサックス)、オスカーペティフォード(ベース)、ケニークラーク(ドラムス)のカルテットで、ここで模範演技とも言えるような完璧な演奏をデュークとジジが聴かせてくれるのです。
 そして、期待しながらB面に針を落とすと、なんと、曲目はA面と同じですが、ジジグライスがいない。なんでもこれは、練習用のミュージックマイナスワンレコードと言うんだそうで、早い話が、楽器演奏(この場合は、サックス)のカラオケ版ですな。

 余談はともかく、このレコードは、そういうものではありませんが、やはりトリオで演奏するA面がおすすめです。
 彼は、作曲家としてのほうが有名ですかね。たとえばジャズメッセンジャーズが演奏した「危険な関係のブルース」なんて言うと、誰でも知っている曲になりますね(歳がばれるかな)。この人のピアノも端正で美しいピアノを聴かせてくれます。パウエルの影響もかなり受けていますね。 
 サイドメンはパーシーヒース(ベース)に、アートブレイキー御大(ドラムス)。B面にセシルペイン(バリトンサックス)、エディバート(トロンボーン)が加わる。 Signal 1955.10.10 11.20録音
 寂しいことに、何度も来日し親しまれたデュークジョーダンも、2006年8月8日死去との訃報が入りました。享年84歳、衷心よりお悔やみ申しあげたい。

レコードジャケット写真39 *ジャケット写真39 ソニークラークトリオ
 ソニークラーク(1931-1963)も「クールストラッティン」という超ベストセラー?のおかげで、知らない人がいないんですね。

 ところで、あのジャケットに出てくる素敵なおみ足は、じつはソニーの奥さんだったって知ってやはった?(これって冗談じゃなくて、ホンマですねん*)この人も、くろうと好みのするピアノ職人ですよね。
 と言ったって、別にピアノを作る職人じゃないんだよ。八っつぁんー。あれっ、ここは、ジャズ落語のサイトじゃないよネ。でもジャズと落語って、なんで昔からこう相性がいいんですかね。落語家がジャズのライブで司会するというのは昔からあったんですが、最近はジャズピアノまで披露しちゃう時代ですから、驚ろいちゃいけません。

 相性といえば、先日戸隠へおソバを食べに行ったら、なんと店内にモダンジャズが流れているじぁーありませんか。そして、そこのソバが、腰の強さといい、切れといいちょうど良くて、口の中にふあっと新ソバの香りが広がり、ほんの一瞬ですが甘味が舌に残るんですね。
 舌触りといい、喉もとを通るときの感触が、またなんとも言えないんですよね、これが。やっぱ信州ソバ、それも戸隠ソバは最高やねん。きっとつなぎはジャズピアノかなんかの音色を使っとるとちゃうん。(ひょっとして、このひと関西方面から来たソバ通? ここらでおアシ(お後)がよろしいようで・・脱線はハイッ、ここまで)

 この人も、やはり正統バドパウエル派のひとりなんですね。サイドメンは、マックスローチのドラムスに、ジョージデヴィヴィエのベースとくりゃ、そりゃあアンタ、出来はもう決まっとるねん。(懲りずに、まだやっている) それにしても、ソニーのこの喜びよう、とはしゃぎようは、なんなのでしょう。そうそう、このジャケットデザインもおもしろいですね。でもフリージャズじゃないんですよ。 Time 1960.3.23録音

*
ブルーノートのジャケット制作を一時期一手に引き受けていたグラフィックデザイナーのリードマイルス(1927-1993)の話として、ソニーの奥さんではなくて、じつは彼のアシスタントだったとかいう記事が、かつてプレイボーイ誌に掲載されたことがあるという。
 確かにソニーの奥さんという話、出来過ぎの感無きにしも非ずですが、今となっては真相は分かりませんよね。でも、やはり奥さんだったという話のほうが私はロマンがあって好きですねぇ。(この件に関しては、ありがたいことに大勢の方から貴重なご意見を頂戴しました。それにしても皆さん、本当にお詳しいです! 2007.12.5追記)  

レコードジャケット写真40 *ジャケット写真40 トミーフラナガンのオーヴァーシーズ
 あのロリンズの大傑作「サキコロ」でのピアノでおなじみのトミーフラナガン(1930-2001)。このレコードは、昔、超がつく幻の名盤だったんですね。これはもちろん再発盤です。
 玉がコロコロところがっていくような美しいシングルトーンは、そのメロディアスなフレーズとともに、一度聴いたら忘れられませんね。

 ジャズ喫茶でも盤が擦り切れるくらいのリクエストがあったと思います(回数に制限があったかも)。このレコードヒットの裏に、ドラムスのエルビンジョーンズの好演があったことも忘れてはなりませんね。ベースはウィルバーリトル。みんないい調子でやってますね。調子=ちょうし=ミュージシャン言葉で言うと「しーちょう」=C調=ハ長調=明るい、軽いかな。

 余談ながら、超貴重盤で幻の名盤の元祖といわれるPrestigeから発売された当時のこのオリジナルジャケットは、一面にあふれるアルファベットのC(over"C")だったんですね。ジャケット写真40にマウスポインタをあててみてください。
 スウェーデンのストックホルムで録音されたもの。 Metronome 1957.8.15録音

*ジャケット写真41 レッドガーランドのグルーヴィ レコードジャケット写真41
 あの歴史的なマイルスの「リラクシン」など4部作のなかで聴けたガーランド節を、このレコードはたっぷりと聴かせてくれる。
 レッドガーランド(1923-1984)の右指が奏でる美しいシングルトーンの間に、絶妙なタイミングで入る左指のブロックコードが、これまたいいんですね。この人の弾くフレーズも、フラナガンと同じでレコードにあわせてなんとなく口ずさみたくなりますね。元ボクサーという異色の経歴の持ち主。

 ポールチェンバース(ベース)と、アートテーラー(ドラムス)が付き合っている。ラストの一曲のみドラムスがアルバートヒースに代わる。もちろん知ってると思うけどサー、グルーヴィって、イカシテルぜー、もうサイコーって言う意味、なんだよね。1923年生まれ。 Prestige 1956.12-1957.8録音

*ジャケット写真42 ウイントンケリーのケリーアットミッレコードジャケット写真42ドナイト
 レッドガーランドとくれば、ウイントンケリー(1931-1971)をはずすわけにはいきませんね。
 マイルスクインテットで活躍した二人は、一方が元ボクサーとして鍛えた力強いタッチであったのとは対照的に、ケリーはあくまでも軽快なタッチでわれわれを楽しませてくれた。

 彼の代表作として、ほかに「ケリーグレート」(VeeJay 1959.8.12録音)、「ケリーブルー」(Riverside 1959.2.19 3.10録音)などがあるが、わたくしはこのミッドナイトがやはり一番好きだ。ポールチェンバース(ベース)、フィリージョージョーンズ(ドラムス)という夢の組み合わせで、大傑作ができないはずはありませんね。 VeeJay 1960.4.27録音

 これらのファンキーでグルーヴィなピアノトリオの音色と旋律を聴いていると、いやでもかつての良き時代(青春時代ですね) へと、タイムスリップさせてくれますね。
 こういうのって、ひょっとするとノスタルジアって言うんですかね。


ジャズは生き物、感動とスリルがもっとほしい

 現在のジャズシーンは、どうみても全体におとなしい感じがするのをわたくしは否めないのです。そして、CD一枚を聴きとおすには、ホントの話、かなりの忍耐を必要とします。
 まぁ、昔のLPならば、片面長くて20分、裏返したりホコリを拭いたりしながら一息ついて、全部聴いたとしても40分です。

 ところが、ぶっ続けて70分を聴かなければならないCDは、リスナーだけではなくて、ミュージシャンにとっても大苦行であることは、十二分に理解できることです。また、スリルと緊張感を持続させるには、相当のアイデアと創造力が必要でしょう。

 それにしてもです。昨今のジャズシーンに感動とか、スリルを感じる機会が少なくなってきていると思いませんか。
 それは、わたくしの感性がにぶってきたということなのでしょうか。コルトレーンのあの激しい晩期のアルバムを、いま聴いてもゾクゾクするところをみると、まだまだそうとは思いたくないのですが…。(残念ではありますが、体力は確実に落ちております)

 現在、才能あるアーティストたちは、受難の時期にあると思うのですね。アーティストたちをフォローすることになるのか分かりませんが、ジャズだけでなく音楽全体が、イージーというか、BGM化してきている世の中も見逃すことができません。
 毎日の生活が忙し過ぎて、昔で言う「ながら族」にみんながなり果てた、ということも大きな要因でしょう。

 前の章で不況のせいにしましたが、レコード会社は売り上げて、なんぼの世界ですから、ファンの責任も重大です。
 ファンがアーティストを育てていくことを忘れてはいけません。やさしいジャズ?がとにかく売れるのですから、これはもうしょうがないのかもしれませんが…。

 かつての、マイナーレーベルががんばった時代、そして、それを支えてきた熱心なジャズファンの物語は、ホントに過去の夢物語になってしまったんでしょうか。
 再発はいつの時代もあったし、新しいファンのためにそれはそれで大事なことではあるのですが、それにしても、最近のCDショップでの、かつて名演とされたジャズレコードの焼き直しCD盤の氾濫?は、少なからず気になるところですね。

 同時代に生きて、同時代の生きたジャズが聴けないなんて、わたくしは想像すらしたくありません。


ジャズ隆盛への提言、辛口の評論家がなつかしい

 昔 わたくしがあこがれた評論家には、ふたつのタイプがありました。
 ひとつは客観的にものが言えるタイプ、こうした人は消費者志向、いや失礼、オレはこう思うがと言っておいて、あとの価値判断はジャズファンにゆだねるタイプと、私見と言いながら歯が浮くようなアーティスト賛辞に終始し、聴き手に押し付けるタイプ、まぁ、いわゆるコマーシャルサイドのひとに分かれますかね。しかしです。

 いまや前者のタイプは絶滅品種(失礼!) で、全体にお優しい感じになってしまいましたね。昔は、かなり厳しく、アーティストなり、発売元を評するつわ者がいて、そうした方たちの評論がジャズを育み、そして、ファンの血となり肉となったんですがね。
粟村政昭著「ジャズレコードブック」
 写真は、なつかしの粟村政昭著「ジャズレコードブック」 手もとの本は 1975.5改訂新版第1刷 東亜音楽社発行 音楽之友社発売。初版は1968.1発行。当時、氏のズバリと切り込む粟村流辛口評論に陶酔したものである。見識あるジャズレコードのバイブルでしたね。

 これは、記録媒体に一緒についてくるライナーノーツにも言えることで、これにはさすが売れないことを書く人はいなかったとは思いますが、それでも、ひと昔前は、もう少し客観的にものを書いておられたような気がします。

 もの申すついでに、個人情報保護とやらでむずかしいのでしょうが、もう少しアーティストのプロフィールとか、状況をくわしく紹介してほしいものですね。昔のレコードについていたライナーノーツは、今でも立派な記録の宝庫(史料)になっていることを忘れてほしくありませんね。(ジャズCDも消耗品となった?それにしてはお安くありませんがね。抑えて抑えて・・)


ちょっと一息、 ジャズレーベルと幻の名盤のこと

マイナーレーペル 昔は、まだ世間に知られずに埋もれていた有能なジャズアーティストたちを、するどい選球眼で発掘し、それぞれにこだわりを持って、それこそ手作りでこの世に出してきたのが、いわゆるマイナーレーベルです。
 それがどんなに中味の優れたレコードであっても、財政的に破綻して身売りされたり、廃業となったケースが多かったのですね。かつて幻の名盤として高値で取引されたりしたのも、こうしたものだったのです。

 今はこうした名盤もメジャーの手で復刻され、いつでも容易に聴くことができるようになったことは、まことに喜ばしいことです。

 Time, Signal, Dial, Roostとか、 Debut, Transition, Progressive などのレーベルは、オールドファンには泣けてくるのではないでしょうか。初期の Prestige, Blue Note などもそうですね。そして、コレクターがオリジナルジャケットにこだわる理由も、実はここにあるんですね。

左写真は、コレクターにとくに人気の高かった、1956年に創立されたシグナルレーベル。わずか1年余りで倒産しサヴォイに身売りされたようだ。先ほど触れたデュークジョーダンなどが吹き込んだんですね。
 後年、CBSソニーからデュークジョーダン、ホールオーヴァートン(ピアノ)のレコード3枚組が復刻再発されたときのカバーから引用。

 ただ、これら原盤(これはマイナーに限りませんが)も、時代によって再発のたびに発売元が変わったりしていて、カタログの記号番号で探そうとすると、そんなのありませんと言うようなややこしいことにもなります。
 したがって、このサイトで取り上げたレコードも、番号ではなく原盤であるレーベル名とタイトルのみの記載としました。

 現在、CDでほとんどのものが手に入ると思いますので、CDショップで、ここに記載された原盤レーベルとタイトル、アーティスト名を言っていただくことで、すぐに在庫を調べていただけると思います。そして、再発されているCD盤にはレコードでは聴かれなかった別テークが結構入っているんですよね。これには異論もあるようですが・・。でも、マニアにとってはチョーうれしい。
 (2005.5.29記 Copyright (C) 2005-2013 TOKU All Rights Reserved.)

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