モダンジャズとの邂逅 マイルスデイビス ソニーロリンズ ジョンコルトレーン お気に入りのアーティスト モダンジャズにかける私の夢 エピローグ


V.モダンジャズにかけるわたくしの夢・・・エピローグ

世界に羽ばたけ! 寺井尚子さん

寺井尚子ツアー2005パンフレット

 何をいまさら、と言われそうですが、すごいひとが出てきましたね。それもヴァイオリンというジャズにはむずかしいと思われる弦楽器なんですね。
 つい先日(2005.5.28)、とうとう長野市北野文芸座で行われた寺井尚子さんの演奏会に行ってきました。
 
 右の写真が当日のパンフレットと最新作のCD盤です。なんでもこの日は、長野が「ダンシングツアー2005」と銘打っての全国ツアーのファイナルステージということで、彼女もかなりリラックスしていて、それこそ自由奔放に熱のこもった演奏を聴かせてくれました。

 彼女にとって東芝EMIに移籍して3作目となるCD「ドリームダンシング」のキャンペーンも兼ねていたんですね。今回は、これはものすごく早いテンポでのソニーロリンズの「オレオ」の曲目が強く印象に残りましたが、ほかにも緩急織りまぜての本格的なジャズを二時間、たっぷりと聴かせてくれました。

 クラシックで鍛えた確たるテクニックとともに、強烈なタッチで、センスもエモーションもどうやらほんものになってきましたね。最後に、彼女のサインをもらい握手までしっかりとしてきてしまいましたが、別にだからといって、ヨイショではありませんよ。

 ぜひジャズの本場、ニューヨークあたりで武者?修行してきてほしいなぁ、と思ったり、彼女を支えるこれはレギュラーメンバーだそうですが、サイドメンも、彼女の熱いヴァイオリンにもっともっと挑んで、からんでいってほしい、なんてぜいたくなおねだりも、ついしたくなってしまいました。
 
 そうすると、もっとドキドキするステージが期待できるんだけどなぁ、と。それにしてもです、これからの日本のジャズシーンに、大きな刺激と楽しみができましたね。ガンバレ、世界の寺井尚子さん!
CDジャケット写真43

*CDジャケット写真43 寺井尚子のドリームダンシング
 今回は、ジャジーな?ジャズに絞って、よくゾやってくれました。既発のアルバムの中では「オールフォーユー」(2001年)での最初の2曲、アントニオカルロスジョビンの「おいしい水」、ディジーガレスピーの「Be Bop」で参った、と思ったのですが、あとは熱演ながら惜しくもわたくしのフィーリングとはちょっと合いませんでしたが・・。
 今回は彼女自らが選曲して作った力の入ったアルバムだそうですが、全曲がフィーリングバッチリ。先日の生(ライブ)を聴いてきて、さらに好きになってしまいましたね、彼女をますます応援したくなりました。こうした元気のいいアルバムは、もっともっと売れていってほしいですね。
 ジャズは決して小むずかしく聴くものではありませんし、何より楽しく聴くことではないでしょうか。うれしいことに、寺井尚子を聴いてジャズが好きになったと言う若い方もふえているようですから、今後がホント楽しみです。 東芝EMI 2004.10-11録音

 朗報! 寺井さん、うれしいことに 2008年1月18日 第33回「南里文雄賞」を受賞されました。(1967年 神奈川県藤沢市生まれ)


ジャズはつまらなくなった? と思ったとき

 わたくしが好きだった油井正一さんがお書きになられた著書のなかで、よく引用されておられたのが、世界的なジャズ評論家ヨアヒムEベーレントの名著「ジャズ(Das Jazzbuch)」(氏自身が翻訳されておられる)でしたね。
 そのベーレントの一節が、今でも自戒の言葉としてときどき思い出すのです。

 要約すると「最近のジャズがつまらなくなった」と思ったときは、みずからの尺度を、もう一度よく吟味してみろというのです。
 ジャズは生きているのだから、この尺度も、時の経過とともに変えてやらないといけないというわけです。
 そうでないと、昔のジャズは良かったという単なる堅物、凝り固まった保守的なファン(もしくはミュージシャン)になってしまうというのですね。

 そうはいっても、この尺度が問題ですが、ベーレントは芸術に合わせろというのです。芸術とは、これまたさらにむずかしいことになってきましたが。
 しかし、現実問題として、良いジャズと悪いジャズというか、まぁ、ひろく薬にも毒にもならないものまで含めてよいのでしょうが、永年聴いていると不思議と、直感的に分かってくるものなんですね、これがまた。

 ところが、進化というか(必ずしもそうでない、まがい物がまざるときがあるので、ややこしいのですが)、とにかくジャズは生き物ですから、常に自分より先を行くものと思っていないと、知らず知らずのうちに置いていかれてしまうというのですね。
 ですから、ジャズがつまらなくなったと感じた時点で、自分の尺度をもう一度チェックしてみろ、というわけです。
油井正一氏著書
 好き嫌いも入ってきますので、これが言うはやすくなかなかむずかしいことですが、わたくしの場合は、その尺度が独りよがり* ではいけないので、自分の耳をまず信じつつも、ほかのひとの評価(視点)も同時に見ていく姿勢だけはいつも大事にしています。

*「独りよがり」とは、時の流れの反逆児のことです。誤解があるといけないので言っておきますが、異端児であることはちっともかまわない。時代を先取りしてきたひとはみんなそうでしたものね。

 オレが間違っているのかなぁ、と思ったときでも、必ず同じ考えを持った方がどこかにいるものです。やはり、オレの耳は間違っていないんだゾ、と。
 これは食道楽、美食家の世界とまったく同じだと、わたくしはつねづね思っているのです。そして、日ごろから本物を食べていないと、本物の味が分からなくなるのだと。

 そうそう、音楽雑誌の評価もあくまでも参考ということでしょう。最後の評価はご自分の耳でということです。なんでコレが? といったことが結構あるのですから・・・日ごろから耳を鍛えておく必要があるのでしょうね。(精神衛生上はまことに良くありませんが)

 もっとも、間違ったと思ったら、節操ないと言われても、すぐに修正する勇気も持たないといけませんが、これがまたむずかしい。でもひとと言うか、作品を批評するということは、ホント、こわいですね。オーマイガッド !

 *上の写真は、油井正一さんが書かれた二冊の著書。左が「ジャズ・ベストレコードコレクション」右が「ブルーノートJAZZストーリー」。新潮文庫から1986,1987年に出されたジャズレコード・コレクションをテーマに、名盤の紹介とコレクションの真髄が披露されている。


エピローグ ・・・ジャズの神髄

 つらつらとわたくし流のモダンジャズ道をご披露してまいりましたが、あまりまとまりのあるお話ではなかったかなぁ、貴重なお時間をさいて読んでいただいた皆さまに何か少しでもお役に立ったかしら、といま猛反省をしているところです。

 ヒマなときに(今どきそんな方はいませんね) ザックザックと読み進まなければいけない本サイトは、ウェブサイトとしては落第ですね。
 本当は教科書的な単純明快なモダンジャズ論のほうが、よほど読みやすく分かりやすかった(ウケタ)ことでしょう。・・・しかしです。

 ジャズは理屈ではないんですね。聴いてなんぼの世界なんですよ、とわたくしは声を大にして言いたかったのです。何もむずかしく聴いたり、ジャズジャイアンツを祀り上げることではないんですね。
 数あるサイトの中には、格好いいから聴くとか、理屈でジャズを聴くとジャズが分かる、なんていうとんでもないことを言う御仁 もいるんですね。クラシックじゃあるまいし、学校の授業じゃあるまいし。(これってわたくしの偏見かな?)

 要は、もっとジャズを肌で感じとってほしい、体で聴いてほしいのであります。
ジャズの街神戸風見鶏の館にて
 先日(2005.12.2)、地元の信濃毎日新聞にジャズ界の風雲児、坂田明さん(1945年広島県生まれ。サックス奏者)がインタビュー記事ではっきりと申してくれました。

 「昔はジャズをやるやつはアウトローだったけど、今は音大でも教えるようになって、日本の社会で認知されるようになった。その分だけ、音楽に危険性がなくなり、毒がなくなった。
 でも、そういう毒を持った連中の所に行かないと、面白い演奏は聴けないと思うね。おれはできるだけ、そういう連中と一緒に前線に居続けたい・・・」(同紙からそのまま引用)と。

 じつはこれなんです。わたくしが言いたかったのは。やはり時代の先端を駆けているジャズアーティストならではの、とても重いお言葉ですよね。
 余談ながら坂田さんは、あの小さな生物(生命)、ミジンコの研究家としても知られる。音楽は本当に生き物なんですね。そして、感性こそジャズの神髄、と言い換えてもいいでしょう。

 これと同じことを、「ひっかかるのがジャズなんだよ」とおっしゃられた方もおられます。
 新しいものがいいとか、心地よいイージーリスニングを否定するものではありませんが、でもやはり魂に響くジャズ、スリルと刺激と感動のジャズでなければいけないと、わたくしは真に思うのです。

 そんなに下品で格好の悪いものなら、もう聴くのはやめた、とおっしゃるなら、「ファッションでジャズをお聴きになるなら、もうおやめなさい」とはっきりとここで申しあげましょう。
 そして、ムリしないでお好きな音楽をラクにお聴きなさいと・・・ ひとまず完。
  *上の写真
は、ジャズの街神戸・風見鶏の館前広場にて。2005.9.17撮影


追補 ジャズ専門月刊誌「スイングジャーナル」休刊に思うこと

 60数年という永きにわたってジャズシーンの表舞台で活躍してきたジャズ専門月刊誌「スイングジャーナル」が、本年(2010年)6月19日発売の7月号をもって休刊となった。
 音楽雑誌の中でも、量といい、質といい、他誌と比べようのない風格とこだわりがあったと思う。内容はもちろんのこと、本の装丁そのものにも、気むずかしいジャズマニア、そしてオーディオマニアの心をくすぐる、趣味のいい独特のセンスとエキスがふんだんに含まれていた。

ジャズ専門月刊誌スイングジャーナル2010年7月号 休刊というが、実質廃刊ということかもしれない。寂しさとなつかしさがいっしょくたになって、頭の中をグルグルと駆けめぐる。夢多き多感な青春時代から、突然に明日の命も分からない白髪の老人に変身させられたような大きなショックを受けている。

 不況の嵐は、いまやわたくしたちの周りのすべてに滲みて、すべてを荒廃させ、破壊しつくしている。雑誌の世界の話だけではない。音楽界全体だって、もうかなり前から沈滞しているではないか。商業主義、大量消費時代のつけが、こうした形でいまわれわれに襲い掛かって来ている。

 でも、考えてみてほしい。クラシックにしたって、ジャズにしたって、もともとはアコーステックな音源で、限られた場所でのライブであったはずだ。小さな個室で限られた人たちの ぜいたくな音楽鑑賞だったに違いない。
 ジャズなんかは、もっともっとマイナーで人間臭い ぐちゃぐちゃした土壌から、ひとつとして同じものがない手作りで産み出されてきたものだ。レコードとか、再生装置の普及があって世界に広がったことは否めない。
 がしかし、その場の一瞬芸、アドリブこそが、ジャズの真骨頂なのだ。もともと大量消費に馴染むわけはないのだ。

 ジャズに限らないが、もともと音楽は魂の叫びともいえる生命エネルギーの発露そのものであったと思う。そして、クラシックだの、ジャズなどというジャンルなんか、もともとあったわけではないのだ。好みがあるとはいえ、音楽そのものに境界を引くこと自体に無理があるのだ。いまや細分化しすぎてしまって、バラバラになって空中分解寸前に来ている。

 わたくしが歳をとったせいもあるかもしれないが(70歳の古希も目前です)、最近はライブを中心に いいものはなんでも聴いて聴いて、聴きまくっている。ジャンルもさまざまだ。こうした変化は、わたくしだけではないと思う。老若男女、国籍を問わないと思う。
 音楽業界、雑誌業界はこうした実態を、どのくらい感じていたのであろうか。いにしえの再発盤(過去の遺産)に頼りすぎてきたのではないだろうか。「音楽は生き物」という本源に戻るべきではなかろうか。

 折りしも、チンさんこと鈴木良雄さん(ジャズベーシスト 1946年生まれ、長野県木曽町出身)が 2010.6.16付けの信濃毎日新聞朝刊で、スイングジャーナル休刊に際してつぎのように語っておられる。因みに、氏は今年1月に日本ジャズ界最大の栄誉とされる2009年度「南里文雄賞」(スイングジャーナル主催)を受賞された。

 「(休刊は残念なことだが)米国でも日本でも、新しい音楽ができにくい現状も影響している。ジャズを学ぶ環境は向上したが、学校で習ったことをやるだけで、かつての米国で感じたような『何かが生まれる』どろどろした感じがなくなっている。ジャズは本来もっと野性的なものだと思うんです。個性を持つのは大変なことでもあるが、それがジャズ」(同記事より引用)だと。

 わたくしが解説するまでもなく、まさにそのとおりだと思う。素直にからだで感じる、自分の感性をひたすら信じて聴く・演じるのがジャズだと思う。奇しくもわが愛する生涯現役ジャズピアニスト・ハンクジョーンズ(91歳)の訃報も入ってきた。なんとも寂しく、悲しい限りですね。

 *上の写真
は、63年の歴史の幕を下ろしたジャズ専門誌「スイングジャーナル」7月号の勇姿。潟Xイングジャーナル社刊。 ぜひ復刊してほしいものだ。
(2010.6.30 本節緊急追補)


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  (V モダンジャズにかけるわたくしの夢[エピローグ] 2005.6.20記, 2005.12.15追記, 2010.6.30追補 Copyright (C) 2005-2013 TOKU All Rights Reserved.)

 おすすめリンク集は、わたくし流モダンジャズ道の最初のページ(モダンジャズとの邂逅)の末尾に掲載させていただきました。

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