ST管5球スーパーの初レストア挑戦記


1.はじめに

いまさらなんで真空管ラジオ? いまレストアがはやっているというんだけれども、修理復活なんて地方じゃとてもムリでは・・・。10年ほど前の引越しで真空管、パーツ類などガラクタジャンクをあらかた廃棄処分としたことが、なんとも恨めしい。

 わが家にはほこりこそかぶってはいるが、ST管5球スーパーや50年も前のわがラジオ少年時代の遺物、mT管自作5球スーパー(マジックアイがついているから当時は6球といっていたような気がする) などが、寝室の洋服ダンスのうえにインテリア?として現在も飾ってある。

 少年時代の思い出の宝物といえば大げさだが、なんとなく捨てられないでいるというのが本当だ。まさかこれらをここでレストアしてみようなんていう、時代に逆らう?ようなことを本気で思っていたわけではありませんでした。

レストア後のナショナルNS-100の勇姿 書籍、真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!
レストア後のナショナルNS-100 の勇姿? ST管5球スーパー、昭和27年製。
マジック・アイがついてないのが、ちょっと惜しい。
下のつまみは向かって左から、スイッチ(音質調整兼用)、音量調整、同調用。
技術評論社から出版された書籍。平成16年7月初版。
定価 1,659円。

ところが、ふらっと立ち寄った書店での一冊の本との出会いが、少年時代の熱き血を、またわかせることになったのです。その題も、ズバリ「定年前から始める男の自由時間、幻の5球スーパーで音がよみがえる、真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!(技術評論社刊)」。
思わず買ってしまいました。

 そんなわけで今回は手始めに、十数年前に親戚から譲り受けたナショナル製のST管5球スーパーをレストアして、なつかしい真空管ラジオの音を聴いてみることにしました。

 テレビがまだ一般家庭にそれほど普及していなかった少年時代には、とにかくラジオが主流でした。HiFi(ハイファイ、高忠実度再生)という言葉が聞かれ始めた時代でもありますが、ステレオが出てきたのはこの後であったような気がします。
 このラジオもいつの頃から聴かれなくなったかは、今となっては定かではありませんが、故障か何かで片隅に置かれたものかもしれません。

 いずれにして少年時代の思い出がいっぱい詰まっている真空管ラジオを、なんとか生かしてあげたいと思い、これからレストアに挑戦してみます。地方に住んでいて、どこまでできるか、自分自身の記録とともに、皆様に少しでもご参考になればと思い、恥ずかしながらここに書き記すことにしました。


2.5球スーパーの仕様

ナショナルラジオNS−100、5球スーパーヘテロダイン方式、昭和27年5月松下電器産業叶サ。(最初はいつの時代のものか分からなかったのですが、インターネットサイトから教えていただきました。定価は1万円以上していたようですから、当時の月給の二、三か月分くらいでしょうか、ラジオはとても高価なものでした。民放が昭和26年から放送開始されましたから、これを契機に一発奮起購入したのかもしれません。)

*使用真空管 6W-C5(周波数変換) UZ-6D6(中間周波増幅) 6Z-DH3A(検波・低周波増幅) 6Z-P1(電力増幅) KX-12F(整流)、整流管KX-12Fのみがマツダ製で、それ以外はすべてナショナル製(オリジナル?)です。(同じころ発売された同社製NS-200がインターネットサイトで紹介されていますが、これは出力管がUZ-42のようです)
キャビネット内側の側板に、回路図とともに真空管の名称と配置図が表示されている。
*受信周波数 535〜1,605KC (KCキロサイクルは当時の言い方、現在はkHzキロヘルツと表示する)
*中間周波数 455KC
*感 度 80μV/50mW  (極微電界級と書いてあります)
*電気的出力 無歪 1.6W 最大 2.2W以上
*スビーカー(SP) 6.5吋パーマネントダイナミック PD-65F型(スピーカー本体に6P-51Rと 02521 VOICE 40Ω PRIMA 12kΩの印、出力トランスに02521の印字が押してある)
*電 源 85〜100V 50〜60c/s (サイクル、現在はHzヘルツ)  44VA(現在はWと表示する)
*その他 キャビネット裏蓋内側に本受信機の仕様と「検査 機構 奥村、調整 福永、完成 松本」の印(完成検査合格の印)が押された長方形の紙製ラベルが貼ってある。底板には、「当社の有する工業所有権(ラジオセット関係抜粋)」として特許、登録新案・意匠の各番号が列記された大きな紙ラベルが貼ってある。
シャーシー背面には「SERIAL NO.15816」の紙ラベルとナショナルラジオの銘板プレートがついている。 シャーシー正面に「検査済 桜井」の黒の印字(配線の検査?)と、内側底面には不鮮明ですが「検査合格」の文字と数字の「2724」らしきスタンプが押してある。この印は部品配線の下にあることから、シャーシーへの部品取りつけ(リベット止め等)の検査印なのかもしれない。


3.故障不具合箇所概観

・キャビネット

木製キャビネットの枠部分は塗装がはげ、一部磨り減っているのは永年使いふるした証し。上板、前部のこまかな擦り傷も目立つ。前面布製ネットの色あせと汚れが目立ち、とくにスピーカー部分が黒ずんでいる。
 プラスチックの3個のつまみは全部揃っているが、真ん中の金メッキ部分は一部がはげかかっている。ダイヤルはつまみを廻しても指針が動かない。

 周波数が書かれた真ん中の四角いプラスチック板の裏面にはこまかい砂のようなほこりが一面に付着していて全体に茶色っぽく見える。この部分の背面は小さな穴を無数?に空けた銀色っぽい金属板(真鍮にメッキか)が張ってある。
 箱全体のデザインは、飾りが少なく、すっきりしている。地味ではあるが、当時としては結構モダンなデザインをねらったのではないか。(今でも通用する?) そのぶんレトロ調あふれる昔のラジオと呼ぶには、ちょっと寂しい機種かもしれない。


・裏  側

木製の裏蓋(上部に小さな金属玉とばねが入っており、ふたをするさいキャビネットに食い込み固定させる方式がおもしろい)をはずしたところ、木箱右側の側板に茶色がかった紙に回路図(RC81w@)が貼ってある。スピーカー(SP)が邪魔になってちょっと見にくい。(スピーカーをはずした後、デジカメで撮ることにしよう)

 布製ACコードは一部がボロボロになっていて、丸型プラグの差込口も曲がっている。とてもこのまま電源に挿しこむ勇気はない。中をざっと見るかぎり、真空管はじめ各部品はそのままついているようで、当時のままで保存されてきている。木製キャビネット内側もほこりはついているものの、底の三面に補強材がつけてあり、破損箇所は見当たらない。

 
レストア前の木箱とシャーシー概観 レストア前のシャーシーの中の様子
レストア前のST管5球スーパー、キャビネットからシャーシーを取り出したところ。
真空管は左から6W-C5,UZ-6D6(シールドケースの中), 6Z-DH3A,6Z-P1,その奥がKX-12F。
シャーシーの中の様子。コンデンサーは、ろうが溶け出して、抵抗は熱?で黒ずんでいるものも散見される。鉄シャーシーに錆があるほか、ビニールの配線材は硬くなってボロボロ。


・シャーシー取出し

キャビネットからシャーシーを取り出すさい、まず指針の留め金からダイヤル糸をはずし、両側にある2個のパイロットランプを金具ごと手前にスライドさせてはずします。このさい、ダイヤル糸と留め金の構造、しくみは組み込むときのことを考えて、よく見てメモをしておきます。いきなり引き出すと、糸が切れるか、指針の留め金を痛めます。

 次にスピーカーの出力トランス(OPT)につながっているビニール線を切断し、前面の3個のつまみをはずし(ねじ止めではなく挟みこみ式、ちょっときついので、つまみをこわさないよう慎重に取りはずす)、底板の4本(1本紛失していました)のねじをはずしてシャーシーを箱から手前に引き出します。
 本機はダイヤル糸が留め金についている3本のひっかけ(突起部分)からはずれていたため、ここを素通りしていました。木製キャビネットの底にはベーパーコンデンサーが溶けたと思われるワックスが、盛り上がってところどころにこびりついています。

 シャーシー上にはほこりがぶ厚く積もっていて、まるでフェルトかじゅうたんのようです。
 真空管をはずすさい、UZ-6D6のグリッドキャップがきつくてはずせず、力を入れすぎてガラスの頭部にあるグリッドの先端(金属部分)が取れてしまいました。
 (さあ困った。幸いリード線は出ていますのでダメ元で後で修理することにしよう。昔、グリッド、ベースがはずれた真空管を確か半田づけしたことがある)

 この当時のナショナル製品は、真空管のベークソケット、IFT、コイルの取付けなどはシャーシーにリベット止めか、かしめて取り付けてあるようで、部品が破損したり、断線していると修理や交換が簡単にはできない。これはちょっと大変だ。ACコードの取出し穴もゴムではなくアルミ製のハトメになっている。2個の中継ラグ板はボルト締めです。鉄製シャーシーはところどころさびついています。

 ここで、切れたときのことを考えて、ダイヤル糸のかけ方をよく見て、メモしておきます。糸は切れてはいませんが、小さな滑車と擦れる部分はところどころ糸がほつれていて、あぶなっかしい状況です。


・シャーシー内側

ペーパーコンデンサーのワックスがはがれ、全体に黒ずんでいて印字もほとんど見えない状態です。大きなL型抵抗も一部焦げたようなのも散見されます。

 それとビニール配線のほとんどが硬くなっていて、一部はビニール被服がなく線が露出しています。色も黒ずんでいてもとの色がよく分かりません。触るとボロボロ取れて中の線が出てきます。不思議なことにパイロットランプの緑、黄のビニール撚り線とSP OPTへのビニール線は少し硬くなっているようですが、大丈夫でした。
 ANTコイル、IFT、ブロックコンデンサーから出ている線の処置を考えないといけないようです。

 当時のナショナル独特の部品配線でしょうか、抵抗のリード線にコンデンサーのリード線を結構何回もからめてから半田づけしています。また、リード線の途中からも半田づけされたビニール線が出ています。これってブラブラ配線、空中配線のお手本?です。1P、2Pのラグ板が初段側に2個あるだけです。

 部品の節約もあったのでしょうが、半田の質が当時悪かったせいかもしれません。あるいは、先に抵抗とコンデンサーを半田づけしておいて作業工程を早めたのかもしれませんね。そういえば、部品を取り付けるさい、ピン等にリード線をからめてから半田づけするよう、昔教わったことを思い出しました。いずれにしても不良部品の交換のための取り外しが容易ではないことが予想されます。

 複数回のラジオ屋の修理跡があるようです。まず右側の500kΩの音量調整ボリューム(VR)が交換され(ナショナル製刻印03581が押されている。これは昭和33年製か)、PU端子(プレイヤー等外部入力端子)への配線がはずされています。

 最終段の音質調整回路(これは電源SW付500kΩボリュームでハイカット、電源のON,OFFと共有。VRへの刻印は0252となっているので、オリジナルの昭和27年製)もはずされています。
 また、整流管がマツダ製に交換されていることから、電源回路か出力段に故障があって交換されたと思われます。


・実体配線図の作成

回路図はキャビネット内側の側板に貼ってありますが、修理の手が入っているため実際と違っているかもしれないことと、再配線のさいの参考とするため、詳細な実体配線図をここで作りました。(自分流の下手な図で結構ですので、各パーツの位置、配線具合などを実物大で できるだけ詳しく書き取っていきます)

 とくにANTコイル、IFT、ブロックコンデンサーなどへの配線が、ビニール線・部品等を取り外したときに接続箇所が分からなくなりますので、手で追いながら書き写していきます。IFT、ブロックコンには足がなく、マークもありませんから、ビニール線の色(黒ずんでいて見にくいですが) も書いておきます。見えにくいところは半田をはずしながらの作業ですから、半日くらいかかりました。
 抵抗値が配線図と異なるところや、音質回路、PU回路がはずされていたのは、前述のとおりです。
 下の写真は、木箱の側面に貼ってあった回路図と真空管配置図です。(紙製のラベル、デジカメで撮影) →拡大回路図

本機NS-100の回路図


4.修理復活前の清掃

これまでの全体を見た状況から、レストア後の故障を避けるためにも、R(抵抗)、C(コンデンサー)のすべてを取替え、配線は全部し直しすることを念頭に作業に取りかかりました。
 修理というより再組立てといったほうがよいです。


・キャビネットの清掃

木製の側板、上板の塗装が全体に薄くなっていて、一部に永年手で触って磨り減ったところがありますが、これらの傷になんともいえない郷愁を感じましたので、軽く湿らせた布で拭いてそのままとしました。木地が出たところもありますから、オリジナルからは遠くなりますが本当は塗装し直したほうがよいのかもしれません。

 箱の中のスピーカー(4個のナット締め)をまずはずした後、ねじくぎで取り付けられた前板を取り外します。このとき前板で押さえられていたプラスチックのダイヤル板も一緒にはずれます。こまかいほこりが付着して茶色に見えたプラスチック板は水洗いしたら、透明になりました。
 金色の目盛りの文字やナショナルの文字などがはげ落ちて消えないよう注意します。

 前板全面に張ってある布は、綿棒にベンジンをつけて軽くたたきながら汚れを取りましたが、綿棒が真っ黒になったわりには、それほどきれいになりませんでした。染色もあせており生地も弱っていますから適当なところで妥協しました。SP部分がほこりを吸いつけるようで結構黒くなっています。

 箱の中は回路図の紙がはがれないよう注意して、掃除機でほこりを吸い取り、その後濡れタオルで拭きました。コンデンサーから流れ出た底板のワックスはマイナスドライバーの先で削り取ります。キャビネットの木箱全体はさすがメーカー品、とてもしっかりとできています。


・シャーシー、部品等の清掃

鉄シャーシーはところどころ錆で黒ずんでいます。底板と接していた部分は水分が入いったのでしょうか、茶色くさびついています。鉄シャーシー自体は厚い鉄板でしっかりしています。簡単に掃除機でフェルト状に積もったほこりを吸い取った後、こまかいところは部品を傷つけないよう、筆でほこりを取り除きます。

 あとは布と綿棒にアルコール液を浸して、シャーシー、各部品の汚れを拭き取りました。バリコンは取り外せないので、(足部分のゴムが硬くなっていて、力を加えると壊れそうです)とりあえず筆を使ってほこりを払いましたが、羽根の中までは取れませんでした。本当はエアブラシかなんかで吹き付けたほうがよいのでしょう。

 真空管は、水を含ませた布で拭くと、きれいになりました。あまりこすると大事な印字が消えてしまいますので注意が必要です。ベースのぐらつきはありませんでした。

 取り外すさい壊してしまったUZ-6D6のトップグリッドは、真空管から少し出ているリード線をまっすぐに伸ばすと金属の帽子部分に届くような感じですが、ムリして切断したり、ガラスが割れるともっと面倒なことになりますので、0.5mmΦの銅線をガラスが細くくびれた頭部と突き出ているリード線に何回か巻きつけて半田づけし、帽子の小さな穴から出しました。
 金属部分の内側のセメント(まだだいぶ内に残っている) にはあらかじめ接着剤をつけておき、固まったところで銅線を折り曲げ、半田づけしました。ガラス面とこの金属部分には熱が加わりますので、ちょっと心配ですが。


UZ-6D6トップグリッドの修理 本機に使用してある5個のST管
UZ-6D6のトップグリッドの修理の模様。銅線は0.5mmΦを使用。ガラスと金属部分の中のセメントの接着が経年変化でとれて、リード線の半田がはずれたようだ。
接着剤はエポキシを使用してみた。
清掃後の真空管。ダルマ管は本当に頼もしく見える。左から6W-C5,UZ-6D6,6Z-DH3A,6Z-P1,KX-12F。すべてオリジナルのナショナル製といきたいところだが、残念ながら整流管のKX-12Fはマツダ製。

真空管のベースソケットのピンの間などはなかなかきれいになりませんが、とくに念入りに拭きます。


5.修理復活の模様 (修理箇所とパーツの調達など)

・部品の導通試験

まずはテスターで部品の導通試験からはじめました。電源トランスは一次側と二次側、2本のIFT、ANTコイル、局発コイルはいずれもOKで、ヤレヤレです。ここで断線しているとこれからやっかいなことになります。場合によってはレストア断念の事態です。

 ただ、心配した出力トランス(OPT)は、やはり一次側が断線していました。SPは大丈夫のようです。二次側にテスターを当てるとカリカリと音がします。各真空管のヒーターは幸い切れていません。各抵抗は切れたものはありませんでしたが、抵抗値がいずれも高くなっています。

 コンデンサーは手元に測定器がありませんので分かりませんが、ブロックコンデンサーを含め経年変化でたぶんダメでしょう。抵抗器(R)は使って使えないことはないと思いますが、あとの故障、事故を避けるため、R、Cはこのさい全部取り替えることにします。(RとCのリード線が丁寧にからめて半田づけされているため、切り離すことは面倒ですので、このさい一緒にはずしてしまいます)

 ただ、ブロックコン(450V 20μF+10μF+10μF+2μF)だけは外観が格好いいので、このままつけておくことにします。もちろんここから出ているビニールのリード線はアース線以外の4本を切断してしまいます。

 ここで困ったことに、音質調整を兼ねたAC電源SWのついたボリューム(オリジナル製)のSW部分がON,OFFに切り替えても両方で導通状態です。SW不良です。
 やむをえず音量調整ボリューム(昔、交換されている)のSW部分は正常でしたので、これと交換して取り付けることにしました。容量は110V 2A,220V 1Aです。これでPU回路は使えなくなりますが、プレーヤーなどは使用するつもりはないので、よしとします。軸長のSW付きVRはいまや希少部品のようです。(入手できたらまた元にもどしましょう) ヤレヤレです。

 ボロボロのビニール配線はすべて取り外し、配線し直しです。空中配線を避けるため、オリジナルの2個(1P,2P、AVC回路他)の中継ラグ板ははずし、新たに4個 (2P〜4P)を追加しました。
 ブロックコンがリードつきケミコンに替わるため、いずれにしても、オリジナルの2個では足りません。PL電球2個のうち1個が断線していました。ここのビニールの2本のより線はこのまま使うことにします。SP(OPT)へのコードと電源コード(プラグ付)は交換しないといけません。


・故障部品類の調達、組立


・ 出力トランス(OPT)の断線

一次側は腐食で結構切れているようですが、これもやはりダメでした。7kΩ:40Ω仕様ですが、ご自分で根気よく巻き直される方もいらっしゃるようですが、それはあきらめてどこかで巻き直してくれるところがないかとインターネットで探したところ、ありました。西崎電機(三重県伊勢市)です。さっそくメールで問い合わせたところ、現物を送ってくれればすぐにしてあげますよ、ということで、OPTを送って三日ほどできれいに仕上がって手元に届きました。感謝感激です。
 そういえば、昔は近所に巻いてくれるところがあって、電源トランス、チョークや変調トランスなどお願いしたものです。やはりオリジナルのOPTというのがうれしいですね。
 SP本体からOPTをはずすため短いボルトナット2本を取り外すとき(これは簡単)、いやな予感がしたのですが、案の定取り付けるさい苦労しました。目が悪くなっていることもありますが、手が入いりませんから受けのナットはピンセットのお世話です。コーン紙をやぶらないよう注意して、それこそ手探りでどうにか取り付けることができました。半田づけもこまかいところは、ほとんど勘が頼りですが・・・。(余談)


・ 中間周波トランス (IFT)

コイル、引き出し線の断線はありませんが、引き出し線のビニール被服が硬くなっていて、ぼろぼろです。シャーシーへの留め金がかしめて留めてあることと、底がピッチで固めてありそこから線が出ていますので、取替えはあきらめました。ここは熱収縮ビニールでそのまま固めて使うことにしました。B電圧が流れるところもありますが、絶縁はこれでよいでしょう。この手法は、コイル等への配線部分にも使って処置しました。

 R,Cは全部取り替えるといいましたが、初段の周波数変換回路だけは絶縁チューブで配線を補修し、R,Cはオリジナルのままとしました。


・ ブロックコンデンサー

ラジオ工房の内尾悟さんは、氏自作の復活器で今でも堂々と生き返らせておられます。これも変形とか液が漏れ出している気配はありませんが、底のピッチの一部が焦げているような感じです。ピッチから出ているビニール線がボロボロになっているのを見て、迷わずリード線は切断して、引退していただきました。

 ただ、この大きな円筒形の勇姿?は歴史の証人として、そのまま所定の場所に残っていただくことにしました。ここは昔と比べるとかなり小さくなったリード式のケミコンに換えました。B電源回路の平滑用は10μF,47μFに、低周波増幅段(AF段)へは2.2μF(400〜450V)、 出力段のカソードバイパスは10μF(50Vでよいが、手持ちの関係で250V)を使いました。
 整流管から出た最初の電解コンデンサーは大きな容量にしますと、真空管を痛める心配がありますので、10μFとしました。


・ R,C、アース配線、管ヒューズなど

R,C類はずいぶん小さくなりました。手持ちの関係でフィルムコン、セラミックコンなど混在していますが、6Z-DH3Aプレートのパスコン(220PF)、6Z-P1へのカップリングコンデンサー0.01μFの耐圧(500V)に注意します。
 抵抗もB回路と6Z-P1のカソードは耐圧に注意します。耐圧は少し大きめのほうが安心です。

 サイズは、昔と比べると本当に小さくなっているので、半田づけには苦労しますが、スペースを気にしなくてすむのは助かります。
 現在手に入るR,Cの数値で回路図と同じ数値がないものは、なるべく近い値のものを選びます。(0.002→0.0022 0.05→0.047など、実用上支障はない)
 

コンデンサーと抵抗器、新旧比較
下段のほうが交換する新しいR,C類。上段の当時のコンデンサー・抵抗と比べると、ずいぶん小さくなりました。(中央の丸いものは現行の10円貨幣)
L型抵抗とコンデンサーのリード線がしっかりからめられて、半田付けされているのが分かる。はずすとき、今や貴重なベークソケットのピンなどを破損するのが恐いので、ここは迷わずニッパーで切断しました。

空中配線を避けるため、前述のとおり中継ラグは追加してあります。ただ、配線は極力オリジナルに近い配置になるよう注意しました。とくにアースは5箇所で鉄シャーシーに直に半田付けとなっていますので、これを有効に活用しました。

 メーカー品は、プロが回路設計、部品配置など十分に検討したうえで市場に出しているでしょうから、これで異常発振やハム音などの心配はかなり少なくなると思います。ラジオはニアバイアースが原則です。どうしてもオーディオアンプを組立てたクセで、アースラインを引き廻したくなってしまいますが・・・。
 ACラインの管ヒューズは1Aです。本機にはアンペアが読み取れませんでしたが、かなり太めのものが入っていました。

 途中、女房のアッシーやら雑用が入りましたが、半田づけは休日の一日を使い、ほぼ終わりました。添付の回路図と実体配線図とを確認しながらの作業でした。
  再組立・配線の様子は恥を覚悟で写真を掲載しましたが、ご覧のとおり相変わらず下手な半田づけ、配線が見苦しいです。半田の質と道具が良くなっただけで、昔とあまり変わっていませんね。熱収縮チューブは写真の時点ではまだ収縮処理してない。


レストア後のシャーシー内部 レストア後のシャーシー内部
左側より電源トランス、出力段(6Z-P1)、検波・低周波増幅段(6Z-DH3A)、中間周波増幅段(UZ-6D6)の一部。6Z-P1の上が整流回路(KX-12F)、その右隣りが2nd IFT。左上部のボリュームが音質調整(ハイカット)と電源SW。その右のボリュームが音量調整とPU切替回路。(PU端子への配線はSW不良のため、はずしてある)
KX-12Fの空きピンは使用しない。(オリジナルはB回路に使用されていた)
配線は、ほとんどがし直してある。
左側より中間周波増幅段(UZ-6D6)、1st IFT、周波数変換回路(6W-C5)。6W-C5の上がOSCコイルとパディングコン。この部分だけは、R,Cはオリジナルのまま。(色が鮮やかできれいですね)
左上部の穴がブロックケミコン、使用不可でリード線は切断処理。IFT周辺の熱収縮チューブがなんとも痛々しい?上部中央は47μFの平滑用ケミコン。その下に検査合格の丸印が薄く見える。
ST管のベークソケットは大きくて半田付けがしやすい。


6.いよいよ50年ぶりの視聴

さあ、電源スイッチONのときがやってきました。昔のあのワクワクドキドキ感が思い出されます。とはいってもここは落ち着いて真空管を挿さないで、まずスイッチを入れてみます。

 PLランプが2個点燈しました。トランスがうなったり、へんな煙や臭いもありません。手みじかにトランスの各電圧をテスターでチェック。大丈夫です。つぎに、整流管だけ横へおいてほかの球を全部挿して、もう一度スイッチを入れます。煙や臭いはありません。ヒーターがほのかに点きました。やはり真空管のこのぬくもりがなんともいえません。

 ここでスイッチを切って、整流管を挿してもう一度SW-ON。この瞬間はやはり緊張します。(いや、かつても緊張しましたね) 何か異常があればすぐにスイッチを切れるよう身構えて・・・。
 何も変化ありません。ブーンというハム音も気になりません。スピーカーに耳を近づける、かすかに心地よいあの特有の音・・・ジィー ・・・電気が流れているという実感がわくあの音です・・・が聞こえる程度です。

 すばやく真空管の各部をテスターで当たって、ほぼ規定どおりの電圧内に収まっています。ここまでの手順は昔を思い出しながらの作業ですが、自作機とはまた違った感じです。それはメーカー品であるといった安心感といってよいでしょうか異常がなくて当たり前という気持ちです。


今、バリコンの羽根が全部入った(周波数が低い)状態で何も入ってきません。つまみを廻して羽根を少しずつ抜いていきます。ものすごいガサガサといった音がスピーカーから出てきます。カミナリではありませんが、羽根の間のごみが静電気で火花が出ているような音です。

 途中からNHK第一(819kHz)がばっちり入りました。昔なつかしいあのラジオの音です。偶然にもナツメロ歌謡特集をやっていました。音域は決して広くはありませんが、思ったより歪んではいません。懐メロはやっぱり真空管ラジオで聴くのがイチバンです。放送局が近いせいか、ボリュームを相当絞らないとうるさいくらいです。
 アナウンサーの声はとてもやわらかく、はっきり聞こえてきます。中音域はパーマネントSP 6インチ半の良さをフルに引き出しているようです。今の携帯ラジオの音とは比べようもありません。

 余談はともかく、夜になったこともありますが、海外放送など遠くの放送も入ってきます。低いほうがやや感度が悪い感じですが、ダイヤル目盛りはだいたい合っているようですし、下手に調整して大事なIFTなどを壊してはいけませんので、これでよしとしました。
 先ほどのガサガサ音は少し羽根を入れたり出したりしたところ、この雑音はまったくなくなりました。(ほこりが羽根に吸い付いた?)

レストア後のシャーシー正面 真上から見たレストア後のシャーシー
レストア後のST管5球スーパー。右端のダイヤルプーリーと左端のパーマネントSPがとてもまぶしいですね。半世紀をタイムスリップして、また生き返りました。 真上から見たST管5球スーパー。バリコンの左の大きな円筒がブロックコンデンサー。使用不能ですが、十分目を楽しませてくれます。バリコンの後ろの1st IFTも大きい。
レストア後の同調・変換回路周辺 真空管ラジオのある風景
6W-C5の初段回路とUZ-6D6(シールドケースに入っている)の中間周波増幅周辺。半世紀を経ていても調整なしで、感度、選択度もなかなかで、さすがメーカー製の貫禄。手前がANTコイル。右上の1st IFTからUZ-6D6のトップグリッドへのリード線が、ビニールが硬くなっていてボロボロ。熱収縮チューブでそっと保護してある。 真空管ラジオのある風景。
真空管ラジオは、やっぱり畳のある和室と茶だんす(これは昭和9年製)がよく似合う。
そう言えば大昔、居間に置かれたこの茶だんすの上にピーピーガーガーとうるさい再生式の国民型ラジオ(並四)がのっていました。このときの並四ラジオは、小学生であった私の格好のおもちゃ(えじき?)となり、とっくに分解されゴミとなったのでありました。


7.雑  感

冒頭に紹介した本の中で、藤本伸一さんは「希少な(真空管ラジオの)部品を発掘するには、その時代の地層を見つけることがポンイト」(カッコ内は私の注)と話されていますが、上京のたびにお世話になった東京秋葉原の電気街の草分け「秋葉原ラジオストアー」も寂しいことに閉館となってしまい(2013.11.30 64年の歴史に幕)、真空管パーツ類を探すことはこれからますます困難になってきましたね。

 私が住む地方都市はどうか、先代までは扱っていたんですがね・・・とか、もう私の代かぎりで・・・と心細いばかりです。でも少し足を伸ばせば、まだまだ健在で頑張っておられるお店も、数こそ少ないですがあります。

 また、今でもご活躍中のOM*方の中には、物置の片隅に真空管をはじめジャンク品**を大切に保管されておられる方もいると思いますので、お願いして譲っていただく方法もありますが、やはりネット通販でというのが時代の流れでしょうか。
  *ハム用語で先輩の意味  **中古品


今でもトランスを巻き直してくれるところがあるということが、今回初めてレストアしてみて分かったことですが、軸長のSW付きVRなどまだ作ってくれているところがあるようです。
 真空管はオーディオアンプが繁盛のようで、外国製のものは比較的容易に手に入るようですが、国内だけで生産された規格の真空管はだいぶ前に製造中止となっており、いまや在庫限りだそうでここへきて驚くような高値になっています。まるで使えるかどうか分からない 目で楽しむ骨董品扱いですね。
 いずれにしても、邪魔もの扱いして捨ててしまったパーツ類は、いまや本当に目玉が飛び出るほど高くなっています。

 真空管は幸い全部生きていましたので、トランスの巻き直しと、R,C、配線材等不足部品の調達代あわせて8千円ほどの費用で無事レストアできました。このほか一応、本ラジオの予備球としてST管5本をあらたに買い求めましたが、これだけで1万円強かかりました。(幸いにも、OPT以外はすべて地元で調達できました)


リタイアしたらまた手をつけてみるか、となんとなく思っていた修理復活。「真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」を読んで、まさかのレストア初挑戦となりました。
レストア中の私
 まだ手元には、数年前に知人からいただいた戦前戦後?の並四ラジオが一台部屋に飾ってあります。内部をよく見ていませんが、マグネチックSP付きで、ケミコンか何かをはずした四角い穴があり、真空管も一本ありませんね。真空管はじめ部品の調達に相当な手間とお金がかかることでしょう。
 
 冒頭にも触れましたが、これだけは捨てられなかった少年時代の思い出、ハム&オーデイオへつき進む原点となった自作のmT管5球スーパー (クライスラー製の箱に組立てた、うれしいことに6ZE1のマジックアイ付き。後日別掲) と、6V6PPの自作ステレオプリメインアンプが眠っています。また、昔愛用した真空管式の通信型送受信機も数点あります。

 半田づけはいつになってもワクワクしますが、クリーニングだけは本当に3K (きつい、きたない、きけん?)でおっくうになりますが、勤めの合い間をみてまた復活することにしましょう。

 本機は半世紀も前のラジオですので、いつトランス等から火が噴くか心配です。聴かないときは、電源プラグをコンセントから必ず はずしておくようにしましょう。
 (2004.9.30記 Copyright (C) 2004-2014 TOKU All Rights Reserved.)    本ページ冒頭


8.補  記

参考文献&ホームページ

  *技術評論社刊「男の自由時間、真空管ラジオ・アンプ作りに挑戦!」
   *ラジオ工房内尾悟さんのHP ラジオマニア必見のサイト!!

お世話になっている地元のお店

長野ハムセンター(長野市) 送受信機、アンテナなど ハム用品ならなんでも揃います。中古品レアものも扱っています。真空管アンプ、これは新井社長の高尚な趣味で、製作品は快く販売してくれる。真空管の調達、レストアなどいつもご指導いただいています。感謝!感謝!
松本電子部品商会(松本市) 各種パーツ類、とくに真空管用パーツが豊富。

おすすめの通販のお店

西崎電機(三重県伊勢市) トランスの巻き直し。仕事は驚くほど早い。
サトー電気川崎店(川崎市) R,C類 その他小物パーツ類はだいたいここで間に合う。

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ラジオ少年時代に自作した mT管5球スーパーレストア記も、どうぞご覧ください。

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