月と俳句のこと   佐藤 俊童

     

古来、多くの俳人達が夥しい数の俳句を詠んでいますが、その中でも月ほど多く取り上げられた句材はないでしょう。

それだけに句会で、「」という兼題を頂くとつい身構えてしまいます。
月に関しては、過去に有名な俳人達によって多くの名句が詠まれているため、とても立ち入る隙が無さそうに思えるからです。

しかし、いつかは、この「」に挑戦して、自分なりに納得出来る句を作りたいものです。
その為には、まず月を知らなくては・・・。

という事で、月について少し調べてみました。

■月についてのまとめ■

先ず。
・太陽の自転、地球の自転と公転、月の自転と公転、これらは全て反時計回りである。
・月は太陽と同じく東から出て、西に沈む。
・月の出る時刻は、毎日約48分ずつ遅くなる。(註1)
・月の出る時刻は、1ケ月経過すると、ほぼ同じ時刻にもどる。(註2)
・月の出る高さは、太陽と逆で、冬に高く夏に低い。

月は自転しながら地球の周りを公転しているのだが、自転と公転の周期が同じであるため、地球から見ると月は常に同じ面しか見えない。

月の形は、新月(朔)→上弦→満月→下弦→新月と次第に変化していく。

月の形が変わる理由は、太陽・地球・月の位置関係が変わる為である。
月の公転による3者の位置関係の変化を俯瞰してみると。
・太陽に向かって月が地球の前にあれば新月(朔)、
・左横にあれば上弦、
・後ろなら満月、
・右横にあれば下弦、
・また前に戻れば、新月となる。

新月から次の新月までの周期は約29.5日、より正確には29.530589日である。

・1日とは
 月の1日とは、月の出から、次の月の出までを言う。

・1ケ月とは
 月の1ケ月とは、新月から次の新月までの約29.5日を言う。

・1年とは
 月の満ち欠けの周期(約29.5日)を1ケ月として、12ケ月とすると年354日前後で、
 太陽年に比べ約11日ほど短い。
 旧暦では、この差を埋める為、何年に一度か閏月をもうけ、1年を13ケ月としている。

・では、1週間とは
 1ケ月よりも小さな単位として設定された期間。
 月の満ち欠けは、@新月から上弦、A上弦から満月、B満月から下弦、
 C下弦から新月、と移っていくので、29.5を4で割ると、だいたい7日となる。
 従って人間の生活リズムの中に7日を1週間として設定したものと思われる。


[上弦の月と下弦の月]
暦では、月の前半を「上」、半ばを「中」、後半を「下」と呼ぶが、上に当たる旧暦7〜8日頃に上がる半月を「上弦の月」、下に当たる旧暦22〜23日頃に上がる半月を下弦の月と呼ぶ。
    
・上弦の月
 上弦の月は満月に向かう時の半月を言う。

・下弦の月
 下弦の月は満月が欠けてきて新月に向かう時の半月を言う。

注意!
上弦の月と下弦の月の見分け方は月を弓に見立てたときに,弦が上を向いているか下を向いているかではない。

弓に見立てたときの弦が上を向いているか,下を向いているかで両者を分けられるのは、月が西に沈む時間帯だけである。



覚え方
左を大坂、右を東京と想像する。
丸い頭が東京を向いていれば上り(上弦の月)。
丸い頭が大坂を向いていれば下り(下弦の月)。


(註1)月の出る時刻は、毎日約48分ずつ遅くなる。
       月は29.5日で公転しているから、1日に約12度回っている。
         360÷29.5=12.20338983
       同じ位置で月を眺めるには、地球が12度自転して追いかける必要がある。
       地球は360度自転するのに24時間(1,440分)要するから12度なら
         12度÷360度=0.0333
         1,440×0.0333=47.952
       従って、1日で約48分の遅れとなる。

(註2)月の出る時刻は、1ケ月経過すると、ほぼ同じ時刻にもどる。
         48分×30日=1,440分   1,440分÷60分=24時間



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■月にまつわる季語■

→ クリックすると新暦、旧暦を相互に変換します。

→ クリックすると地域ごとの月の出入り時間を表示します。

→ クリックして月の形と名称を参照して下さい。

朧月(春)・・ぼんやりと朧にかすんでいる春の月

   くもりたる古鏡の如し朧月  高浜虚子

盆の月(秋)・・陰暦7月15日、盂蘭盆の夜の月。秋に入って、初めての満月であり、かくべつの感慨を持って仰がれる。

   抱き癖をつけて帰しぬ盆の月  林民子

   うす雲のただなかにして盆の月  長谷川かな女

月白(つきしろ:秋)・・月の出ようとするとき、東の空が白んで明るく見えること

   月白や草書ばかりの質台帳  水野リヱ(帆船:200410)

初月(はつづき:秋)・・陰暦8月初めの頃の月で、中秋の名月を待つ心から、この月に限っていう。

   もしやとてあふぐ二日の初月夜  素堂

三日月(秋)・・陰暦8月3日の月。夕暮西の空にごく細くかかる。

   三ケ月や膝へ影さす舟の中  太祇

待宵(まつよい:秋)・・陰暦8月14日の夜である。明日の名月を待つ宵のことであり、またその夜の月のこともいう。

   待宵の今日となりつつ夕支度  星野立子

良夜(秋)・・月光くまなく明るい夜の意味であるが、俳句では十五夜、十三夜の名月のことをいう。

   生涯にかかる良夜の幾たびか  福田蓼汀

十五夜(=名月:秋)・・陰暦8月15日の中秋の名月である。1年中で、この夜の月が最も澄んで美しい。

   名月や池をめぐりて夜もすがら  芭蕉

無月(秋)・・十五夜に雨、雲のため名月を見ることができないこと。

   いくたびも無月の庭に出でにけり  富安風生

雨月(秋)・・雨のために、あいにく名月がみられないのをいう。

   寝るまで明るかりしが月の雨  虚子

十六夜(いざよひ:秋)・・陰暦8月16日の夜、またその夜の月。即ち名月の翌夜の月。
十五夜よりやや遅れて月が出る。

   十六夜のきのふともなく照しけり  阿波野青畝

立待月(たちまちづき:秋)
陰暦8月17日の夜。月の出は満月を過ぎれば遅くなる。縁や庭に立って待っているうちに出て来る。

   宵過ぎて立待の暈ひろがりぬ  石田波郷

居待月(いまちづき:秋)・・陰暦8月18日の夜。立待月よりも出が更に遅いので、座敷や縁で座って待っていれば出て来るの意。

   居待月正座久しく忘れゐし  福永耕二

臥待月(ふしまちづき:秋)・・陰暦8月19日の夜の月。居待月より更に遅く、寝ながら月を待つという意。寝待月の傍題あり。

   寝待なる月がいづれば寝まりけり  阿波野青畝

更待月(ふけまちづき:秋)・・陰暦8月20日の夜の月。20日以降は10時を過ぎないと上らない。それまでの闇を宵闇と呼ぶ。

   更待や階きしませて寝にのぼる  稲垣きくの

   宵闇の大竹藪を山陰線   野沢節子

十三夜(=後の月:秋)・・陰暦9月13日の月。名月に対して後の月という。節物の枝豆や栗などを月に供えて祭る。

   母が煮る栗あまかりし十三夜  野村登四郎

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