薔薇十字探偵社を探せ

2009年1月某日、神田は神保町に行って参りました。
東京にお住まいの方、神田に詳しい方には何を今さらな話なので、地方在住、神田は未踏の地という方のみ(笑)ご覧いただければと思います。
私が神田神保町へ行ったのは2回目。前回はもうずっと前、何かのついでで時間があまりなく、突然思いつきで行ったため、方向音痴の私が地図もなくどうやってたどり着いたのかすら記憶がありません。
もちろん妖怪シリーズを知る前のことで、何軒かの古本屋を覗いただけでした。
今回も別の場所で友人と約束があったついでなので神田滞在可能時間は約30分。
しかもその間に、大屋書房で『妖怪カタログ』を買うという目的もあり。
そのわずかの間に、“榎木津ビルヂング”があったと思しき場所を歩いてみました。
というのも、宝島社刊『姑獲鳥の夏 Perect book』(映画)に、榎木津ビルヂングや奇譚社、関君と京極堂の家がどこにあったのかを探してみる企画が載っていたのを読んだからなんです。
この本では、「いずれにしても榎木津ビルの所在地は『専大前』交差点の付近だろう」と結論付けられていたんですが、果たしてそうかな? と地図を見て思ったんです。

汚い図で申し訳ありませんが、左上の地図をご参照ください。
矢印は一方通行の印ではありません(笑)。

原作で、榎木津ビルヂングの場所を特定できそうな記述を幾つか拾ってみました。ざっと見ただけなので、ほかにもあったら教えていただければ有り難く思います。

 古書店が軒を連ねる大通りから、一本入った裏通りの紛乱とした商店街を越すと、頑丈そうな三階建てのビルが見えてくる。(姑獲鳥)
 薄汚れた商店が軒を連ねる中、比較的大きなビルが目についたので、益田は取り敢えずそこまで行ってみることにした。(絡新婦)
 西神田界隈(宴の始末)
 古書店街の裏手に聳えるひと際モダンな石造りのビル(瓶長)
 交番だって遠くはない(雲外鏡)

さて、上記『Perfect book』では、「古書店が軒を連ねる大通り」を靖国通りとし、「紛乱とした商店街」をさくら通りか、あるいは靖国通りの反対側の通りかもしれないとしている。
大通りは靖国通りで構わないだろう。
困るのは「西神田界隈」なのだが、西神田という地名は靖国通りより北のほうにあり、その付近まで行くと「一本入った裏通り」とはいかなくなる。
他の条件とも合わなくなるので、これは神田の中でわりと西のほう、ぐらいに捉えておこう。
ということで、さくら通りを赤い矢印方向に通り抜けてみると、そこも結構広い通りで、「見えてくる」という言い方から、通りの向こう側を見てみる。
それが地図中薄桃に塗った辺りで、そこなら「専大前交差点」付近と言える。
志水アキ先生の描かれた榎木津ビルヂングはビルに沿って広い歩道があることから、裏通りではなく、これぐらいの広さの通りに面しているようではある。

ここで疑問。「商店街を越す」の「越す」とはいかなる状況か。
商店街を東西方向に通り抜けるのではなく、南北方向に商店街を越していく、とも取れると思うんですよね。
その場合、さくら通りから青い矢印方向に抜けると、その向こう側は地名的には一ツ橋になってしまう。
では、「一本入った裏通り」をさくら通りではなく、靖国通りとさくら通りの間の細い道だとしたらどうか。
残念ながら時間がなくて、今回そこを歩くことはできなかったのであくまで地図上での話。
大通りから赤い矢印方向にそこを通り越すと、見えてくるのが地図上薄青の辺りになる。
ここはさくら通り沿いということになるが、B・Dの条件に適うことになる。
また、地図上、大きくなりすぎましたが、×印が交番で、の条件にも合う。

私はぷらぷら歩いていたとき、薄青のところに、あ、榎木津ビルヂングっぽい! という建物を発見して駆け寄ってしまい、その後で「Perfect book」に次のような記述があったことを思い出しました。
「現在の神保町周辺で榎木津ビルによく似たビルを発見した……玄関部分が違うようなのが残念」
玄関部分というのは多分映画の中のビルと比べてのことだと思うので、入り口の扉に硝子が嵌ってるという点では、原作のイメージには近いと私は思った。
この建物はたしか4階建てだった。現在の神保町の中では小さなビルで、それほど頑丈そうという雰囲気もない。それでもやはり目にはつく。
昭和27年ごろ、堅牢な建物だったらもっと目立っただろうと思う。

京極先生があのビルを知らないとも思えないので、やはりあれが榎木津ビルヂングの「モデル」の一つではないかと思いました。





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