作品について語る


これ、私はなんとなく自然に「京極堂シリーズ」と呼んでしまってましたけど、作者である京極夏彦さんはこの言い方は不本意だそうですね。「妖怪シリーズ」と言うのが正式なのかな? 「百鬼夜行シリーズ」?
でもこういうのって、読者が自然に付けたほうが言いやすいような気がするけど。というか、これを「妖怪シリーズ」と呼ぶのって、看板に偽りありになっちゃいませんか?(笑)だって妖怪出てこないし。鬼太郎みたいなものを期待して読んだ人はがっかりしないかな。いないか、そんな人(笑)。

榎さんしか目に入ってないと思われるのも酌なので(もっともそれだけであれだけの分量のもの読めませんけどね)その他のことについて、作品別に簡単に感想をかい書いてみることにしました。あんまり真面目じゃありません。軽いです。構造の分析だの作品の特徴だの、難しいことは言えません。

『姑獲鳥の夏』
これがデビュー作って、京極夏彦恐るべし、ですよね。
私はそもそも妖怪にさほど興味もなければミステリー好きでもない、グロいものは大の苦手という人間なのですが、これはもう読み始めたらあっという間に引き込まれ、先へ先へと前のめりになるように読み進め、読み終わったら次が読みたい! という状態になっていました。
京極堂こと中禅寺の蘊蓄は到底私ごときには理解しきれませんが、それさえも苦にならず、むしろ今ではこれが短いと物足りない(笑)。
まだキャラクターが固まりきってないところがちょっと新鮮です。
私は中禅寺の登場シーンは楽しみながら、特に好きでも嫌いでもないかなあ。
なぜだか関くんこと関口のほうが好きだなあ。多分一緒に京極堂に叱られてる気分になるんでしょうかね(笑)。
関くんが鬱々としてるのが苦手だという人も結構いるようですが、それも私は平気だわ。共感は一つもできないけど(笑)。
読んでるときにはすごく面白かったけど、今となってはシリーズ入り口という感じかな。いろんな意味で。

『魍魎の匣』
話がだんだん複雑になってきます。おおよそ見当はつくんだけど、なんとなく漠然としている。そのつながりがはっきり知りたくて、それがはまったときの爽快感がこのシリーズの面白さかな。
多分私はミステリーというか、推理小説としては読んでないですね。推理することをほとんど放棄してます(笑)。
関くんと共にうろうろして、えーん、わけわかんないよ、となって、それがすっきりするのを楽しみに読んでます。
鳥ちゃんこと鳥口登場。鳥ちゃん、好きだなあ。鳥ちゃんに対する関くんの突っ込みも好き。
青木くんとの敦ちゃん争奪戦は私は断然鳥ちゃん派です。
気になるのは鳥ちゃんのとこの社長さん。何者!?(笑)

『狂骨の夢』
朱美さん好きだ〜〜。巷説シリーズのおぎんさんを彷彿とさせます。
私は「巷説シリーズ」(これはこう呼んでいいの?)から入ったから、そちらとのつながりが見え隠れするとどきどきします。
が、『後巷説百物語』の「五位の光」と『狂骨』との関連はどう見たらいいんだろうね。これはちょっと直接にはつなげにくいかな。「五位の光」では、南方衆と骨を探して歩いてるグループは同じってことになるわけですから。
つなげていいなら、「又さん、あんたか!」ってことですよね(笑)。
いさま屋もいい味出してますね。
このいさま屋はじめ、榎さん関連の人脈というのは中禅寺にもつながって、時に中禅寺にとっての情報源にもなったりするわけですが、その逆ってのは見当たらないですね、今のところ。もっとも榎さん、妖怪に興味はないだろうけど。
これ、映像化は難しいだろうね。2作の映画もまだ観てませんが、映像化するなら全く違う話になっちゃうかな。
漫画化、アニメ化でも難しいかな。「宇田川朱美」の顔を見せないようにでもしないと、面白みが半減ですものね。

『鉄鼠の檻』
読み終わった後、思わず『姑獲鳥』を読み直す(笑)。“その後”が気になる読者にはたまらんね、こういうの。
この辺りから蘊蓄に付いていくのがさらに困難になる。蘊蓄どころか、あっちもこっちもわからない話だらけだ。
でもわけのわからない会話を俗に禅問答と言うぐらいだから、わからなくていいか、と開き直る。
拝み屋登場の場面(常信和尚の憑物落としじゃなくて、寺へ行く前です)がかっこよくて大好きだ〜。ぞくぞくします。
なのに中禅寺ファンにならなかったのはなぜだろう(笑)。
これも『後巷説』とのつながりがわずかだけどあるんですね。そのうち小夜さんの子孫とか出てこないかなあ。
後のマスヤマこと益田登場。このときはその後ああなる片鱗は伺えるものの、まだまだまっとうな人間だったな。やっぱりものすごい勢いで馬鹿になっちゃったんでしょうか(笑)。
益田くんも大好きですよ〜〜。彼はちょっと登場人物たちの中では、現代人っぽい側面を持ち合わせてるような印象を受けます。彼が軽いのは中身が軽いのではなくて、そうすることで苦手な状況をやり過ごすっていう辺りが。
後にピアノ(鍵盤て、ピアノだよね?)の腕に結構自信ありそうな事が判明。なんで刑事になったのか謎です。当時のこと考えたら、彼も結構お坊っちゃんじゃないのか?
久遠寺先生が妙に榎さんを気に入ってますね。年齢が年齢だから下僕にはならないだろうけど(笑)近いものがあるかも。また元気に再登場してほしい。

『絡新婦の理 』
これさあ、最初があの場面だもの。こういう雰囲気でこういうしゃべり方する女性、と思って読んだら途中でわかるよね。
私は推理小説として読んでないからいいんですが。
織作茜はわりと人気あるキャラみたいだけど、私は嫌い。家族数人を薬使って殺してるわけだから、きちんと司法によって裁かれてほしかった。そういう意味では彼女の最期は残念でした。
碧と葵が不憫でならない……。もちろん小夜子もですが。
美由紀ちゃんの再登場を切に望む! 「益山」で統一することにした美由紀ちゃん、あっぱれ(笑)。
猫目洞のお潤さん登場。いいなぁ、こういう女性。安易に憧れるなんて言ってはいけないんでしょうけどね。お潤さんみたいな生き方するには覚悟がいりそうです。
川新こと川島新造が一気に魅力的に感じられるようになった。
後味は悪いんですが、なぜか好きな場面、好きなセリフが多い作品です。 

  『塗仏の宴』
これ読むのつらかったっすよ〜〜。
な〜んか精神衛生上悪いような感覚。
京極堂と多々良先生の会話なんて読者おいてけぼりだじゃないですか?あれ。あたしだけ?
結局塗仏と事件の関係もよくわからなかったです。河童はともかく。
榎さんが戻ってきてから後は一気で気持ちよかったですけどね。
薔薇十字団結成(?)。益田は下僕の自覚ができてしまい、中禅寺は榎さんを神と呼んでしまう。
一つのターニングポイントだったんでしょうか。
倒すのに苦労する大きな敵を設定するっていうのはシリーズを長引かせるのに有効なんだろうけどね。
巻き込まれるんじゃなくて事件に関わることに必然性も持たせやすくなるとは思うけど。
などと妙に勘ぐってしまうキャラが出てきたことがなんだか気にくわない(笑)。
殺人が最小限なのはまあ良かったです。
ラストは榎さんにほっとさせられました。
関くん、警察訴えてやれよ〜〜。医療費ぐらい出してもらえよ〜〜。慰謝料も取れよ〜〜。雪ちゃんが可哀想だ!

『百器徒然袋─雨』『百器徒然袋─風』
笑った笑った。大笑いだぜ(笑)。
それぞれのキャラがスーパーデフォルメな感じですな。
本島くん(私の中ではゴンザレス本島)、それ声に出して言ってやれよ〜(笑)の連続。
本編の人々の再登場も、思わずにやけますね。
『陰魔羅鬼』と『邪魅』の後で読むとまた別の感慨が。
榎さんの目、「瓶長」ではちょっと心配しましたが、本編読んだらたいしたことなくてほっとしました。
「五徳猫」で中禅寺が榎さんのことを「大磯の事件の後だからなあ。歯止めがなくなっていたんだ」と言ったところでちょっと切なくなってしまった。
で、歯止めがなくなってなんで化けにゃんこなんだ!?
そして「面霊気」に出てきた贋作の面と陀羅尼の札! きっと又さんが何かの仕掛けに使ったんだよね。その話も読みたいなあ。

『陰魔羅鬼の瑕』
巷説から入った人間としては、あ、「柳女」だ、と思った時点で犯人はわかるし、そうでなくてもすぐわかる(らしい)ので、物足りないという感想の人も多いようです。
でも私は結構好きだった。たまにはこんなシンプルな、ちょっとしっとりした感じなのもいい。
関くんのリハビリ編ということで(笑)。
犯人捜しより、犯人が何を考えてそうしたのかということに興味がすぐ移りますから、それはそれで面白く読めました。
巷説ファンとしてはなおさらです。由良家は当然のこととして、執事の山形の先祖も『後巷説百物語』に出てましたからね。そして信州、鳥……。しかし由良家の末裔がああいうことになったと知ったら、又さんはやりきれないだろうなあ。
この話、榎さんがいる意味がわかんない。関くんを引っ張り出したいだけなら別の理由でもいいじゃないか。
それとも、「目をつぶっていても視える」というのが今後何か役に立つのか? その伏線か?(とも思えんが……)

『邪魅の雫』
これはちょっとスピンオフっぽかったな。
益田と青木がメインになってるからかな。本島くんの名前が出てきたからかな。
妖怪がほとんど出てこないし、京極堂の蘊蓄は短いし軽いし。その分読みやすくはあったのですが。
話自体はとても面白かったです。面白いなんて言ったら不謹慎な気さえしてしまうけど。ミステリーとしてってことです。
榎木津信者にはいろんな新しい情報が得られましたが、そりゃないよ、という事件でもありました……。 ラストには涙……。






戻る