講談社より

私的榎木津礼二郎名言集&名場面
原則として1作品一つずつ(敢えて強いて無理に!)拾い上げてみました。でも二つあったり一つもなかったりするとこもあります。

コミカル編

『姑獲鳥の夏』
「流石は京極の妹だ! 立て板に水、見事に理屈っぽい」

『魍魎の匣』
「今日はね、何と話があって来たのさ」

『狂骨の夢』
「それは修ちゃん、簡単なことだ」

『鉄鼠の檻』
「坊主が坊主を上手に殺したなんて――僕の趣味じゃないんだがな」

『絡新婦の理』
「北枕――馬面剥ぎ――雷遍羅」

『塗仏の宴 宴の支度』
「来ると思ったところに来ないのが闘いの基本じゃないか。来ると思ったところに来るのはお笑いの基本だ! 喧嘩は卑怯な方が勝つのだ。成文化した卑怯こそ武道だ!」

『塗仏の宴 宴の始末』
「僕は石橋を叩いて渡らない本屋とは違うぞ……勿論石橋を叩いて落ちる関や石橋を叩き壊す馬鹿修とも違うぞ。石橋なんぞ叩きもしないで飛び越える。それが探偵だ」

『百器徒然袋─雨』
「なあに」(鳴釜)
「君はいつかの何とか云う人!」(瓶長)
「怒鳴れば偉いかと思っているようだが、それなら魚河岸の魚屋なんか結構偉いぞ!」(瓶長)
「生きていたのかこの老人河童男! 老衰の具合はどうだい」(山颪)

『百器徒然袋─風』
「あそこにいるのは僕の従者でエチオピヤ人のマスカマダ・カマスカス君です」(五徳猫)
「煩瑣いお前なんか天麩羅でもいいくらいだッ」(面霊気)

『陰摩羅鬼の瑕』
「するとのあなたお父さんのお兄さんの孫がこの家の主人と云うことですね! で、その肝心のあなたは誰なんです?」

『邪魅の雫』
「そんなもの、蛩の背後に蟋蟀が隠れるようなものじゃないか」



シリアス編

『姑獲鳥の夏』
「世の中には見てはいけないものもあるんだよ、関君」

『魍魎の匣』
「今日――物語に終わりを告げるためにヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽヽ、ある陰気な男がここに来ることになっているのです」

『狂骨の夢』
「いい加減にしろ。さっきから聞いていればうじうじと! 住む世界が違うって云ったってここは地球で、しかも日本じゃないか。馬鹿なことを云うな」

『鉄鼠の檻』
「本当の敬意とは約束事のような涙ではない!」

(菅)「釈迦も弥勒も彼の下僕に過ぎない……彼とは誰か――」
(榎)「ぼくだヽヽヽ

『絡新婦の理』
「敵は――事件の作者だヽヽヽヽヽヽ。君達は登場人物だ。登場人物が作者を指弾することは出来ないぞ」

『塗仏の宴 宴の始末』
「弱気なことを云うなこの臆病者。心配するな。この僕が味方だ」

「見ろ京極」
 榎木津が天を指差した。
「こうして見ると空が丸いぞ――」

『百器徒然袋─雨』
「殴るか?」(鳴釜)
「いいか善く聞け。喰うや喰わずの貧乏人はどんなところに生えたモノだって喰うのだ!……それを喰わなきゃ死ぬと思えば何でも喰うぞこの間抜け!」(山颪)

『百器徒然袋─風』
「同じように鏡に映ったお前の顔と云うのも、お前にしか見えないのだこの馬鹿者が」(五徳猫)

『陰摩羅鬼の瑕』
榎木津は面白くねえと珍しく汚い言葉を吐いた。

『邪魅の雫』
「僕は君が嫌いだ」


名場面集

『姑獲鳥の夏』
改めて見ると、彼は女ものの緋色の襦袢を肩から引っ掛けている以外は下穿き一枚しか身に着けておらず、まるで遊郭に遊ぶ旗本の次男坊のような風体である。

『魍魎の匣』
榎木津が木場に近づいて、一発殴った。
「この馬鹿、いい加減にしろ」

『狂骨の夢』
「榎さん、あんた、何だってそんなもの持って来るんだ! いいか、これは証拠物件じゃないか」
 古本屋は見ない振りをしている。
「ふん、従者に兎や角云われる筋合いはない! ほら、もうすぐ来るぞ」
 伊佐間は何となく解ってそれを受け取った。

『鉄鼠の檻』
榎木津はすっくと立ち上がり、英生を避け、祐賢の前に出て、
「見ていなさい」
と云ってから――
祐賢の横面を殴った。

『絡新婦の理』
――来た。 蒼白き月輪に照射てらされた、色温度の低い別世界の罠へと続く一本道を――。
影よりも尚黒き装束を身に纏った陰陽師が来る。
そして――この世ならぬものを視る探偵が続く。
罠へと誘う案内人は骨董屋である。
――来た。

『塗仏の宴 宴の始末』
「さて――ご覧なさい。あそこで神が遊んでいる。早く通過しなければあの神は疲れて帰ってしまう――」

『百器徒然袋─雨』
僕は頭に血が昇って、拳を握り腰を浮かせた。
ぴん、と額に何かが当たった。
……見ると榎木津が僕を注視みつめていた。どうやら料理に載っていた豆を指で弾いて僕に当てたらしかった。
……
榎木津は――へらへらと笑った。僕の緊張はすうっと抜けた。(鳴釜)

 もしかしたら榎木津があの瓶だけ割らなかったのも、家宝云々などまるで関係なく――千姫を保護するためだったのかもしれない。(瓶長)

 椛島が無駄のない機敏な動きで榎木津に斬りかかった。榎木津はまったく慌てず、僅かな動きですっと躱すと、柳刃を構えた腕をとり、ぐいと捩じり上げた。(山颪)

『百器徒然袋─風』
榎木津がまともヽヽヽに喋っている。
僕は――その信じられない光景を暫し茫然と眺めた。(五徳猫)

「礼二郎。矢張りお友達のために厄払いをするのかね」(面霊気)

『陰摩羅鬼の瑕』
背後から数名が飛び掛かる。躱す。
「元々見えないから死角はないッ」

『邪魅の雫』
それでいいねと、中禅寺は何故か榎木津に問う。
もういいよと、榎木津は穏やかに答えた。


決めゼリフ?

『魍魎の匣』
「殺される?」
「死ぬよ」

「ぐずぐずしていては――」
死ぬよ――と榎木津は云った。

『鉄鼠の檻』
「薬は止めろ。死ぬよ」

『塗仏の宴 宴の始末』
「こんなところでぼうっとしていると死ぬよ」

『五徳猫』
「小物があんまり汚い商売すると――死ぬよ」

『邪魅の雫』
「邪なことをすると――死ぬよ」





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