7巻について

他のすべてのことはとりあえず置いておきます。それ以外のことは何に感動しようと何にあきれようと、もうどうでもいいことです。
彼の死に直面し、私は2日間ほど文字通り体に変調をきたしてしまったほどでした。
JKRの顔を見るのも名前を見るのも、自分の払ったお金が彼女の懐に入ると思うとそれも嫌なぐらいでした。
理不尽なのは分かっています。原作者がこれほど魅力ある人物を描き出さなかったら、私が双子に出会うことはなかったのですから。
それでも許せないほどに、私は彼の死がショックでした。
正直言えば、実はフレッドが死んでしまうのではと感じたことはありました。6巻発売前、ウィーズリー家の誰かが危ないという噂がこれまでになく強く流れた時期がありました。ロンはないだろうと思いました。万一ロンが最後まで生き延びれないとしても、それは7巻に入ってからのはずだと思ったからです。そうなると危ないのは1人はぐれてしまったパーシーか、フレッドだと思ったのです。5巻でピーブズを敬礼させたのが逆に不吉な感じがしたのです。持ち上げておいて落とすと言うと変ですが、そうなるタイプのように思えました。
(ついでに言うと、もしデスイーターに倒されるならジョージ、殺されるならフレッド、というイメージでした。当たらなくても良かったんですがね、こんな予感は)
6巻では結局ビルがああいうことになって、7巻でロンがどうなるか分からないけれど、とりあえずこれで双子の危機は去ったと思いました。
この展開だったら、7巻での双子の出番はほとんどないように思えたからです。
実際今まで双子は物語の本筋とほとんど絡んでいなかったのに、なぜここまで来てフレッドを殺す必要があったのか全く理解に苦しみます。何の必然性もないとしか思えません。 私にとって最悪最低以下の7巻です。
フレッドが死んだ、ということ以上にショックだったのは「双子」が共に死んだわけではなかったことです。ジョージも死ねば良かったとは決して言いません。ただ、双子を引き裂くことが許せないんです。
その時その場にさえジョージはいませんでした。しかも、別行動しなければならない必然性もありませんでした。
ビルがハンサムだと何度も述べておいて顔に回復不能の傷を負わせる。双子がいつも一緒で特別仲の良い双子として描いておいて、最後に来て1人だけ殺し、遺された者のつらさの最たるものをもう1人に負わせる。
これで読者の意表をついたつもりなんでしょうか。もちろん現実は厳しい。もっともっと厳しい。ウィーズリー家だけ全員無事なんてご都合主義。でも、読者は物語を楽しみたいのではないのですか? 
正義と悪の闘いだから犠牲は出ると、7巻発売前に原作者は言っていました。でももうすでに6巻までに十分すぎる犠牲が出ているではありませんか。ワームテールに殺された名前も分からない何十人ものマグルも含めてです。
「読後感」という言葉があります。作者がファンの望み通りの物語を書く義務なんかありませんし、それもまた面白くないでしょう。でもこの読後感が、ハリポタ7巻は私にとって最低です。作者が読者を軽視しているとしか思えません。これを読んだ後何が残るのかということです。
何も得られません。「平和のための尊い犠牲」とすら思えません。フレッドの死は。遺されたジョージの苦しみは。ただただ胸が痛いだけです。もう今までのハリポタの本も、これから公開される映画も何も、以前のように楽しめません。笑えません。「プリンス」映画に笑顔の双子がいたとしても、泣いてしまうでしょう。
「笑いがほしいんだ」。そう言ってハリーは双子に大金を渡しませんでしたか? なのに読者から笑いを奪うのですか? ヴォルデモートがいなくなればもう笑いを提供する存在は必要ないってことですか? 
すべてが台無しになってしまいました。あくまで私にとっては、ですが。でもきっと同じように感じている双子ファンは世界中に何十万人もいるでしょう。それだけの読者に、ハリポタ全体を通して最終的にただ苦々しい記憶しか残さないというのは、失敗とまで言わなくても大きなミスだと思います。何度も言いますが、読者を軽視しているようにしか思えないのです。
読者が「物語」というものに何を期待しているのかということを無視して踏みにじる行為のように思えるのです。正義と悪の闘いには犠牲が伴う。その犠牲はこんなにも理不尽でつらく耐え難い痛みを伴うもの、ということを思い知りたいのでしょうか? 読者は。
トリオが無事生き残って、それぞれ愛する人と結ばれて子供ができて、だから何? ハッピーエンドなんかじゃありません。私にとっては。
さらに作者が7巻発売後チャットで語ったという内容に怒りを覚えます。その後のジョージのことを何も書いてくれてないくせに、なんでそんなところでぺらぺらしゃべるのでしょう。息子にフレッドと名付けて、それで? そんなことが何の慰めになりますか? 彼が失ったものの穴埋めになるとでも思うのでしょうか。一体どういうつもりで6巻までの双子を書いてきたのでしょうか。あまりにも安易な「オチ」ですよ。
ジョージはそのことをどう受けとめたのでしょうか。どうやってその後の時間を過ごしたのでしょうか。何を考え、生きていくことにしたのでしょうか。
何も書いてないじゃないですか。

フレッドの死に、一番衝撃を受けるのはハリーですか? ロンですか? パーシーですか?
私はモリーですらないと思いますよ。
その彼の苦しみを書くことからJKRは逃げたのです。
私は基本的に原作から大きく外れたファンフィクは書きません。書けませんでした。でも、ジョージのその後については作者の意向なんか知ったこっちゃありません。ちゃんと書かないなら想像の自由をくれればいいのに、チャットなんかでしゃべるっていうことが腹が立つ。
ですから今後このサイトでは、JKRが何をしゃべろうと関係無しに、ほんのわずかでも自分自身にとって慰め、あるいは癒しとなることを書いていきます。

 それにしても、7巻発売前、世界中で話題になったJKRの発言。主要人物のうち2人は死ぬ。そりゃあその2人以外は死なないなんて一言も言ってませんけどね。どこまでが主要人物だったんでしょうね。その2人って誰だったんでしょうね。フレッドは入ってたんでしょうかね。そうだとしたら、当初3人だったが2人になったというのは、ジョージも死ぬ予定だったんでしょうかね。それならそのほうがまだましだったんですが。私にとっては。どこへ行ってもあの2人なら、2人が一緒なら、と思って慰めることができたからです。(ま、主要2人には入ってないんだろうけども)

 いっそ、こんな何を言いたかったのか分からない作品なんかに夢中になった自分を恥じ、こんなサイトをやめてしまえたらいいとさえ思ったこともあります。さもなければ、ハリーさえ生き残ってくれればそれでいいと思えるようなハリーファンだったら良かったとか、単にフレッドのみのファンだったら良かったとさえ思ったこともあります。それなら単にフレッドが死んだことだけ悲しんでいればいいのだから、まだ少しは楽だったのではないかと思えたのです。残された者の衝撃と苦しみを考えなくていいから。それぐらい、双子が双子でなくなったことが苦しかった。
 でも、好きになったことを後悔するのなんて哀しい。きっとジョージも、こんなことだったら最初から双子じゃなくて1人で生まれてきたほうが良かったなんて、思ってないに違いない。そんな思いで、2008年の双子誕生日の文章は書きました。

 いつか、こんなのただのお話だ。と思える日が来るのでしょうか。痛みを感じずに読み返すことのできる日が来るのでしょうか。ジョージだけでも生き残って本当に良かったと思える日が来るのでしょうか。今はまだ、暗い森の中にいます……。

 次々いろんな思いが浮かんで、こんなに長い文章になってしまいました。最後までお読みくださった方がいらっしゃいましたら、感謝します。





             
 




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