日光田茂沢御用邸は明治32年に当時皇太子だった大正天皇のご静養のために造営されました。三代にわたり天皇・皇太子がご利用になりました。明治期に造営された御用邸の中でも最大規模の木造建築で本邸が現存する唯一の建物です。江戸・明治・大正と三時代の建築からなり各時代における最高の技術と和風建築を代表するいくつかの様式が見られることから建築学的に極めて貴重な建物であります。

栃木県では各時代における建築技術を綿密に調査し当時の姿を可能な限り忠実に復元する為に大改修を行い2000年8月から一般に公開しました。国道120号線に面し田母沢バス停のすぐ前ですが、非常に閑静な雰囲気が保たれています。

田茂沢御用邸はこの地にあった民間住宅、小林家別邸に、当時赤坂離宮などに使われていた、旧紀州徳川家江戸中屋敷の一部(現在の三階建て部分)を移築し、新たな部分を加えて造営されました。その後、小規模な増改築を経て大正天皇のご即位後、大規模な増改築が行われて現在の姿になりました。その結果江戸・明治・大正時代の建築技術や建てられた時代や用途によって異なる、いくつかの建築様式を見ることができます。

和風建築の形態でありながら、一部に絨毯やシャンデリアなどを用いた和洋折衷の生活様式が取り入れられています。明治維新以降の西洋化の中にあって和風建築の伝統を生かしながら西洋文化との融合を図った本邸は、近代和風建築につながる貴重な資料を提供しています。