第27回
ロッテの夢は観客動員100万人

 6月29日(土)。曇り時々雨。朝8時起床。今日はロッテが開幕からの最下位を脱出できる千載一遇のチャンスである。5位オリックスとは0.5ゲーム差。今日の直接対決に勝利すれば逆転なのである。というわけで、休みにもかかわらずこんな早くに起床。元来からの出不精である私が休みの日に8時起床なんざ、野球か競馬のどちらかである。デートという選択肢は無い。欲しいのは事実だが。

 9時過ぎに家を出る。会社の先輩の車がすでにスタンバイ。ここからは車で千葉まで一直線である。横浜→幕張も、首都高速湾岸線を使えば1時間弱。近いもんや。1600円(当時)かかるが。

 11時少し前、幕張メッセの駐車場に到着。ちなみに試合開始は14時である。以前、GWに2時間前に球場入りしたらライトスタンドに座れず、バックスクリーンのすぐそばの席になってしまい、レフトが全く見えなかったという反省を踏まえての「3時間」であった。メッセ駐車場は、メッセに行く人用と野球観戦用とで中で駐車場が分割されている。車は何台かいたが、メッセの客のようで、我々は2台目であった。「そら3時間前やから、こんなもんやろ。1台目でないのが不思議なぐらいや」と納得して球場入り。しかし…。

 千葉をナメてはいけない。11時に球場入りしたと言うのに、ライトスタンドは長蛇の列。巨人戦ではない。ロッテ−オリックス戦である。いくら、裏天王山やからと言って、この人数は尋常ではない。しかも、みんな一様に白いロッテのホームのユニフォームを着ている。ハタから見ると異様な光景ではあるが、この中に我々も入るのである。勿論、白いユニフォームを着て。

 11:50、開門。どっとライトスタンドが埋まっていく。あくまでライトスタンドだけであるが。会社では、「どうせロッテなんか埋まらないんやから、試合開始ギリギリに行っても座れるやろ」と高をくくる人が多いが、それは甚だしい勘違いである。ロッテファンの怖さを知らないだけである。W杯にこだわらんと、野球ももうちょっと見ようや。

 ロッテファンは、みんなユニフォームを着ている。背中には背番号があるのだが、これが個性があって結構楽しい。1番人気は黒木(54)。まあこれはしゃーない。続いて小坂(1)。これは安く仕上がるからしょうがない。同様の理由で小野(29)も多い。福浦(9)や初芝(6)はローマ字表記の字数が多いので高いのであろう。あまりいない。それでも去年の首位打者で福浦は多い方だ。また、メイ(00)なんか、ローマ字が3文字で小野と一緒にもかかわらずそんなにいない。ボーリックの方が多い。シコースキーはまだまだだ。私のユニフォームには背番号は無いが、いつだったか作ろうと思ってボールパーク(グッズ売場)に行った時、売れ筋を店員に聞いてみると、やはり黒木、小野、福浦、ボーリックなどであるらしい。「L」はボーリックしか売れないらしい。もっともだ。それを言ったら「X」なんか売れないだろう。あ、MAXがおるか。

 以前、マドロックを見たことがあった。GS神戸ではフランコとキャリオンと里中(?)を見たことがある。すでにいない人というのも赴きがあって良い。今でも「29」とあって「小野か?」と思うと「MURATA」とか「CHOUJI」とかあったりする。今日は6で「ハツシバキヨシ」(字体が「マツモトキヨシ」が踊るヒット賞であったかと思ったが、近くに座った人が、ローマ字は3文字で、最初と最後がOというユニフォームを着ていたので「小野か?」と思うと「OHO(於保)」だったのには笑った。於保はマイナーやろ!スプリングマンと一緒に行った鳴尾浜で「INOUE」を見た時ぐらい衝撃的やったわ(ちなみに、その井上は現在ロッテである)。

 試合開始前に私の隣にお兄さんが座った。体がごっつくてスキンヘッドでかなり気合が入っている様子だ。ユニフォームは黒木で個性は無いが、その身なりは個性タップリである。会話を聞くと、ベッカムヘアーに失敗してこうなったらしい。凄い!凄すぎる!失敗したなら坊主でええやん、何故にスキンヘッド?ちなみに、ベッカムヘアとジャンボ尾崎のウルフヘアは、後ろから見ると見分けがつかないような気がする(多分つく)。で、この人のさらに凄いのが、額にマリーンズの「M」のロゴを書いていることである。帽子買えよ。恐るべし、千葉!しかしこの兄ちゃん、ガタイがよくてスキンヘッドで額にロゴのMでは、正面から見るとスポポビッチにしか見えない。笑いをこらえるのに必死であるので、試合中は彼をなるべく見ないでおこう。

 両軍の先発は清水直と具。相手も焦ってるのか、裏天王山の大一番に大エースを持ってきた(ただローテ通りなだけかも)。ロッテ打線では現在防御率1点台の具をつかまえることは難しそうである。しょうがない。私は今年、ロッテ戦を(オープン戦を含めて)8試合見ているが、2勝6敗という散々な成績である。チーム勝率が現在.360ぐらいなので、これはかなり効率が悪い。しかも、マリンスタジアムでは0勝4敗、通算でも0勝5敗である。まったく勝っていないのである。それで相手投手が具。もはややる前から応援する気になれん。

 スタメン発表。1番サブロー(中)、2番小坂(遊)、3番福浦(一)。まあこの辺はいいやろ。でも、4番立川(右)。……。この試合の3試合ぐらい前から、ロッテは4番に立川を置いている。前回ロッテ戦(西武ドーム)での観戦の時は、4番が福浦で立川は6番だった。それが4番である。山本もいよいよ狂ってきたか。しかしこの立川、4番に座ってからはチームが3連勝と何でかラッキーボーイ扱いである(その間、立川はノーヒットの試合こそないがそんなにチームには貢献していない)。5番初芝(D)、6番堀(ニ)、7番大塚(左)。立川と初芝やったら初芝が4番ちゃうんかね。8番伊与田(三)、9番辻(捕)。もはやロッテファンでもなかなか知らない人たちである。伊与田は今年広島からのテスト入団であるし(前述の鳴尾浜の時にいた)、辻は清水将がケガでファームに落ちたので穴埋めしている新人である。この戦力では、Aクラスを狙うことすら難解である。この9人で打率ベスト10入りしているのは福浦だけだし(サブローは打率は高いが規定打席不足)、ホームランは9人足してもローズ&中村にかなわない。明らかにパンチ不足である。この打線で具に挑もうというのは、無謀を通り越して賞賛に値する。白と發を鳴いている相手に中が1枚も見えてないのにリーのみでリーチかけているようなものである。両外国人が不振(ボーリックは二軍)なのでしょうがないと言えばしょうがない。

 対して、オリックスも散々ではあった。1番大島(ニ)、2番塩崎(遊)、3番高見沢(中)、4番谷(D)、5番日高(捕)、6番葛城(右)、7番セギノール(一)、8番塩谷(左)、9番シェルドン(三)。こちらもパンチ不足。両外国人の不振も一緒。違うのは、監督との仲の悪さであろう。7番と9番では起用に文句を言うのも仕方がない。両方.220ぐらいでは7番や9番も仕方がない。どっちもどっちやな。見栄えするのはピッチャーだけや。

 試合開始前に、初芝の1500試合出場の表彰。ロッテでなければ1500試合、果たして出られただろうか。ともあれ、めでたい。グッズ売場で、初芝1500試合出場記念楯を販売しておった。限定100個だったが、やたら残っていた。可愛そうなので買ったのだが、価値は期待できない。

 試合開始。立ち上がり、清水直は上々。軽く三者凡退。そう言えば、塩崎は今日誕生日らしく、レフトから♪ハッピーバースディートゥユ〜。歌い終わるとライトからも拍手。こういう時、ロッテファンはヤジもなく拍手を贈るところがエライ!が、抑えるところはキッチリ。2回も3人で。その裏、先頭の初芝が先制ホームラン。8号は今シーズンチーム最多。前日までチーム本塁打は37本。うーん、少ない!初芝は三振かホームランか、カークランドみたいなバッターなので、ランナーがいないと安心して見ていられる。この辺りが1500試合出場の秘訣やろか。ともかくロッテ先制。

 4回表。塩崎がバースデーヒット(2塁打)の次に高見沢がアッサリ2ラン。4番の谷が調子悪いだけに、3番に打たれるのはよくない。今年、先制点を取っても逆転されるケースがあまりに多い。その前に先制点が取れないのもあまりに多いが。そら最下位やわな。

 それでも高見沢のHR以外は調子のいい清水直。7番9番の両外国人には素敵に三振の山。あまりにふがいないセギノール、シェルドン(あと石毛の人望の無さ)。6回は先頭の大島を出すが後続を断つ。

 6回裏。先頭のサブローが内野安打。続く小坂が送りバンド。1塁アウトのハズが、小坂は1塁に残る。主審の橘が右手で左手をはたくジェスチャー。最初ファウルチップかと思ったが、どうやらインターフェアである。球場にいると、こういう時の記録がサッパリわからん。ヒットかエラーかフィルダースチョイスならスコアボードに出るのだが…。ノーアウト1、2塁、3番福浦。しかし、山本はここでバントを命令したのか、福浦はバントの構え。前年の首位打者で、この年もチーム1の打率を誇る福浦にバントである。理解不能だ。ライトからもブーイング。当然である。しかし、慣れていないせいか、2度の失敗で追い込まれる。これが功を奏してか、ヒッティングに切り替え、結局はフォアボール。で、満塁。バッターはなぜか4番の立川。

 いやでも盛り上がるライトスタンド。打席に入る時に流れる「サンバ・デ・ジャネイロ」がサッカーW杯効果も相まって最高のボルテージ。そらノーアウト満塁で4番やったら盛り上がらなウソやわな。で、具VS立川。初球ストライクで2球目に振り後れてファウル。2ナッシング。ライトも溜息がもれてきそうな状況での3球目。甘く入ったストレートをフルスイングでレフトへ!まさかまさかの逆転満塁ホームラン!「4番の一振り」とは巨人あたりでよく聞く台詞だが、まさかロッテの、まさか立川が打つとは予想もつかない大万馬券。

 ライトは、久しく封印していたタオル回しも出る。ここのところ、応援が巨人にパクられまくっているのでロッテ応援団が封印していたのだが、去年あたりから、「走者一掃したけどまだまだイケる!」って時に回すようになったらしい。私自信、GS神戸以来、3年ぶりのタオル回し。いやー、ロッテの応援といえば、やはりコレでしょ。いいねぇ。ランナー無しから初芝がセンター前。ついに具を降ろす。代わった戸叶から堀が犠打。しかし大塚が三振、伊与田の代打、沢井が四球も辻がサードゴロでチェンジ。満塁HRはともかく、その後のノーアウト1塁が点に結びつかないのが詰めが甘い証拠である。

 7回裏。この回の先頭はサブロー。ショートゴロで1アウト。ピッチャー嘉勢に交代。、小坂がサードゴロで2アウト。バッターは福浦。左対左だが、福浦はライトに貴重な追加点となる3号ソロ。もうライトはメチャクチャ。ロッテファンは、点が入ると全然知らない隣の人とでもハイタッチをするのだが、このホームランでもうグチャグチャ。さらに続く立川がまた万馬券となる2打席連続のホームラン。応援団旗はもうボロボロになってる。あれも安くは無いだろうに。

 その後は8回清水直、9回小林宏で締める。ロッテ快勝!ついに最下位脱出である。4番立川になってから4連勝。それなりに立川4番の効果はあるようである。ヒーローインタビューは清水直と立川。この2人、プロ年数はだいぶ違うが、同い年らしい。立川があまりにふけ顔なので全くそう見えないのが笑える。インタビューでは、インタビュアーが「千葉にお集まりの2万人のファンの皆様!」の声。それに立川が「そんなに入ってるんですか?」。

 ♪ロッテの夢〜は〜観客動員100万人!(初芝応援歌)。去年達成はしたが、今年は見ている限りライトスタンド以外はガラガラである。1試合平均で14300人入れば100万人だが、これで行くのだろうか。かつてのロッテファンのファンとして、それが心配である。


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