第32回
トリビアの泉

 社会人となって月日が経っているが、テレビを殆んど見なくなってしまった。学生の時も頻繁に見ている方ではなかったが、さらに見ない度数が加速している。平日など、テレビが付いている時の方が珍しいぐらいで、いい加減スカパーも勿体無いと思う次第である。

 そんな中でも、いくつか見ている番組がある。いつだか掲示板に書いたが、「栄光の巨人阪神戦 甲子園ボックス席」(SkyA)もその1つで、1980年代初めの阪神巨人戦がほぼノーカットで見られる。ただ、字幕が得点しかなく、打席にバッターが入っても表示はなし。カウントすら見えないから試合展開がよくわからないのが難点である。また、「オレたちひょうきん族」(フジテレビ721)もビデオに撮ってまで見てしまう。一度すべて放送し終わったのだが、視聴者からの要望に答えて、再度1回目から放送している。先日は初めて高田純次のブラックデビルを見て感動してしまった。また、伊丹幸雄がレギュラーで、タケチャンマンを呼ぶ役であったのを知った(ほら貝の初代吹き役は伊丹幸雄であるようだ。クイズには出ないだろうが)。また、ひょうきんベストテンにEPOが出てきて「タケチャンマンの歌」を歌ったり、ことあるごとに「ビビンバ」(荻野繁ディレクター)が出てきたりと、かなり見ごたえがある。

 ただ、「これだけは毎週欠かさず見る!」と断言できる番組が1つだけある。それが、月曜深夜25:40からフジテレビで放送している(おそらく関東ローカル)、「トリビアの泉」という番組である。この番組は、高橋克実と八嶋智人が司会の番組で、「明日会話で使える、日常では全く役に立たないムダな知識をあなたに」というコンセプトの元、視聴者から投稿を募り、取材して発表するものである。ゲストが毎回5人いて、そのネタに関して感心がある場合は手元のボタンを押す(ためしてガッテンの「ガッテンガッテン」いうあのボタンを想像していただければ結構)のであるが、その時「ガッテン」ではなく、「へぇ〜」と気の無い言葉と共に1へぇ追加される。1人20へぇまで持っており、満へぇは100へぇ。満へぇだと10万円が贈呈され、満へぇ以外は、1へぇにつき100円という見事な低予算。さすがは深夜番組。100へぇで10万円が、99へぇは9900円である。こんなもの、ゲストの裁量1つで何とでもなりそうなものだが。

 その「ネタ」だが、はっきり言ってクイズ研にとっては知っていることばかりである。問題の「フリ」に使っているのが基本的に小ネタであるから、まあ当然と言えば当然であるが。「品川駅は品川区にない」とか、「PUMAとAdidasの創設者は兄弟である」、「ノッポさんは喋ったことがある」など、クイズ研であるならば知ってて当たり前とおぼしき事柄ばかりである。まあ自分の知識を確かめるべくして見るのがフツーの見方であろう。「明日会話で使える」と言われても、そのネタをわかってくれる人でなければ全く使う意味が無いから、自分ひとりで楽しんでいる。

 この番組の面白いところは、そのくだらないネタに対して、十分な取材をし、それに対して八嶋智人が「このネタはこんなにすごいねん!」とさも新薬が発見されたかのように言うことである。さらに、この取材ネタに対して、高橋克実がくだらないツッコミを入れる。それがまた面白いのである。また、そのくだらないツッコミに対して「へぇ」を入れるゲストがいたりして、またおもろい。このバカバカしさは、深夜番組でしか味わえない。おそらく、ゴールデンに進出したら全くおもんない番組になるバカバカしさである。うーん、活字では伝えにくい。

 その週に一番へぇを獲得したネタには、「金の脳」というオブジェが渡される。ただのオブジェであると思いきや、脳が2つにパカっと割れ、中にメロンパンを入れることができる「メロンパン入れ」になっている。実にくだらない。さらに、へぇの数に関係なく、高橋克実が気に入ったネタに対しては、「銀の脳」が贈られ、5つ集めると金の脳に交換できるという。いつまであるかわからん番組に対して、高橋克実にネタを5つも認めさせることが不可能なのは誰もがわかることで、つまりは5つ集めることなんて不可能なのである。

 で、ネタが一通り終わると、最後に、ネタとして紹介できないボツネタの中から、さらにフザけたネタを1つ紹介する「はぁ〜」のコーナーがある。これは、投稿作品をホンマに使ってるのかわからんが、「表参道駅の乗り換えには全力疾走の人がパッと見3人はいる」など、ため息しか出えへんネタばかりである。で、スタジオから司会2人が去っていくのだが、その時の掛け合いも絶妙である。この番組は、この2人の司会なくしては語れない。聞けば、同じ事務所らしいが、このタレントをかかえた事務所もエラいし、キャスティングしたスタッフもエラい。

 関東に住んで、初めて「住んでてよかったー」と思えるローカル番組に出会えた、と思っていたら、結構この番組は全国展開しているらしい。関西で放送されているとは思えない関東系のバラエティであるが、関西と違って安っぽい若手芸人を使った低予算番組でないことが文化の違いを感じる。司会の2人がまず微妙だし。でもこんな番組、長く続かないんやろなー。ゴールデンがつまらなくなっているフジテレビの深夜番組の今後に期待。もはや関西のノリは関東深夜では通じないやろから。でも、全国展開してる割には、関東ローカルのネタが多すぎるのが玉にキズ。取材がラクだからだろうが、以前ネタを確かめるだけでロシアに行った番組である(ネタは書きません。下ネタです)から、全国を見据えたグローバルなネタを是非提供してほしいものである。投稿はWebからもできるようなので、このサイトを御覧の関東以外在住の方、投稿してみてはいかがだろうか。ただ、いつ採用かわからないのが欠点だが。ある日突然金の脳のオブジェが贈られてもねぇ。


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