第47回
白いボールのファンタジー

〜裏金産業海外視察 初日〜

今回掲載されている写真は、クリックしていただければ拡大表示されます。
今回、「ハングル」という表記を多用していますが、文字としてだけでなく、韓国で話されている言葉も「ハングル」としています。あしからずご了承下さい。

 6月、一度計画のあったソウル旅行が頓挫した。理由は、SARSである。韓国は直接被害が無かったが、会社が東アジアと東南アジアの旅行を自粛しろと通告してきたためだ。

 生涯2度目の海外である。初海外は仕事(サンノゼ)だったため、プライベートで海外に行くのは今回が初めてである。弊社は社長が海外に行きたがらないため、支店長レベルの人間が海外視察に行くのである。まあ視察とは言え、某国の官僚よろしく100%お遊びなのであるが。

 今回のソウルは、発起人のD.Dさんとスグノレさん(以下めんどくさいので敬称略)の計画に私が便乗したものだ。手配はすべてD.Dにお任せし、当日お金だけ持って行くという、私にとっては相当手間のかからない旅行である。尽力していただいたD.Dに感謝。スグノレは…まあ、癒し系ということで。その場にいるだけで祭を誘発する祭要員である。ご多分に漏れず、D.Dも私も十分祭要員ではあるが。

 9/20。朝8:30関空集合であったが、前日26時まで仕事していたため、準備もままならなかった。とりあえず5時起床だったが、やたら眠い。ま、機内で思い切り寝るしかない。そのため、コンタクトは入れずにメガネで行く。荷物も適当にまとめ、足りないものがあったら現地調達と割り切った。パスポートと一緒に置いてあった国際免許は残念ながら1ヶ月前に失効しており、今回は万が一にも車を運転する手段は無い。さて、6時半に家を出て、関空特急「はるか」に乗る。ここでも寝たい私はこんな朝早い時間でも指定を取る。が、さすがは連休初日(連休ではないが、我々のように飛び石を休みにして4連休にする人は多いことだろう)。指定席の車両もほどほどに埋まっている。子供連れも多い。となると、当然のように騒がしいために眠れやしない。GWのD.D&将軍の旅行を笑ってられない事態である。睡眠時間3時間で今から海外とはあまりに海外をナメすぎであるが、都合上そうなってしまったのだから仕方ない。

 8:30に3人が集まり、チェックインに向かう。2泊3日で荷物が少ないこともあり、列をすっ飛ばしてすぐさまチェックイン。往きはANAだったが、マイレージカードを紛失したため(時間が無くて探していない)、往き分のマイルは諦める。スグノレは半券を片手に登録用紙を記入している。国際線の窓口は混んでいたため、とりあえずチェックインだけ済ませてD.Dと再び落ち合う(D.Dは往きはアシアナの後発便)。

 今回の経費を2人してD.Dに払っているため、手持ちが増えた、ということで銀行に行くことになった。その間、スグノレはマイルの登録。が、ここはさすがにメンツ的に弱いところ。銀行は土曜日ということで閉まっており、マイル登録は窓口を間違える。早くも不安が露呈してしまった。情けない。ま、こんなものは序章にすぎないのだが。

 改めてマイル登録のため国際線のANAカウンタに向かう。この時点で時刻は9:10を回っている。フライト時刻は10:00だったが、予定より少し早まっているようなので、9:45には搭乗しろとカウンタでは言われていた。マイル登録も何とか終わり、さて搭乗口へ…と思いきや、まだまだ。スグノレ、今度は海外旅行保険に入ると損保の窓口に行きだしたのだ。待っている人は3,4人と少ないのだが、これも書類を書かないといけないため、しばらく時間がかかる。書類には仕事先の住所を書かなくてはいけないのだが、スグノレは転勤してまだ日が浅く、自分の名刺を所持していないとのこと。何か人(後輩らしい)の名刺を見ながら書いていた。手続き終了時点で時刻は9:20を過ぎていた。さすがにここまで来ると危機感を募らせる2人(D.Dと私)だが、スグノレは相変わらずのマイペース。早く搭乗口に行かなくては、と急ぐ。

 ここで3人は愕然とするのである。搭乗口が激しく混んでいる。もう「混んでいる」という表現が合わないほど人の群れでごった返しているのである。パッと見、列の最後尾がどこだか全くわからない。少なく見積もっても3〜400人は並んでいようか。そんなオーダの人間の数である。さすがのスグノレも焦るかと思いきや、まだのほほんとしている。非常事態でもこの落ち着きよう、見習いたい。列に並ぶと、多少なりとも列は動くのだが、人数が人数であるため、進んでも進んでも搭乗口が見えない。搭乗まで20分というところでまだ搭乗口すら抜けていない(しかも長蛇の列)。前途多難である。

 搭乗口の後には当然のように出国審査が控えているのだが、その旨を伝えると、さしものスグノレも焦り始めた。9:40になってまだ搭乗口を抜けられないようだったら、その辺の人に言うて列をぶっこ抜こうとしたのだが、ギリギリ40分には搭乗口を抜ける。テロのせいか、搭乗口は数を絞って厳戒態勢だったのが混雑の原因のようであるが、それにしても日本人の海外旅行好きには参ってしまう。自分のことは棚に上げて言うが、そんなにみんな海外に行きたいのか、そんなに日本が嫌いなのか。私は嫌いである。

 9:45、ギリギリになってようやく搭乗。ゲートは客が誰1人いなかった。もう2,3分遅れていたら呼び出しがかかっていたことだろう。早くから搭乗して待っていた他の乗客のみなさん、ごめんなさい。さて、ようやく機内に入った私とスグノレであるが、今度は座席に座るまで一苦労。我々の乗ったANAの飛行機は、座席が2,3,2の3分線だった。同じ列の、私はD席、スグノレはC席であり、私が3つある席の真ん中、スグノレが通路側である。A側←{2,3,2}→G側の「2,3☆2」部分を歩いていた私に後ろからついてくるスグノレ。C席だから当然間違いであるが、この時私はスグノレの席がどこかを聞いておらず、間違いであることを知る由もなかった。で、荷物を上の棚に置いて席に座る。スグノレはE側の席に荷物を置き、グルっと回ってC席に座る。いや、座ろうとする。

 しかしながら、そこには先客がいた。ハングルで横にいた知人とおぼしき人と会話をしている。スグノレにチケットを見せてもらうが、明らかにこの韓国人が席を間違っている。CAが寄ってきて席を替わるように日本語で促すが、聞く耳を持たない。ただ、日本語を理解していないわけではなく、日本語で「わかってるわ!」とまくしたてたのである。タジタジになるCA。オロオロするスグノレ。ハングルを喋れるCAが来て最終的には事態は収拾したのだが、なにやら先行き不安な旅である。

 というわけで、紆余曲折あったが、どうにかスグノレも席に辿り着き、フライトを迎える。はずであった。

 今度は、飛行機がなかなか飛ばない。飛び立つ気配すら無いのだ。連休初日ということでフライトを控えている飛行機が溜まっていて少しづつ出て行くというのなら話はわかる。しかし、そうであるならば、飛行機が少しづつ滑走路に進んでいくハズであるのだが、機体が動こうともしない。かれこれ30分は経っただろうか。ようやく飛び立った時は、すでに半分寝ていた。で、離陸後は熟睡。途中、ドリンクサービスで目を覚まし、後はずっと起きていた(正味、睡眠時間は30分ぐらい)が、横で寝ていたスグノレはCAが運ぶドリンクサービスの荷台に肘をぶつけられて目を覚ましたらしい。もう最悪。

 そんなこんなで、予定時間から大幅に遅れて仁川到着。飛んでいる最中も、離陸前も、とにかく長いこと機内にいた、という印象しかないフライトだった。体が相当ダルい。乗った場所が中途半端だったため、最後の方に飛行機を降りる。んで入国審査。ホテルの場所を聞いていないので、入国カードをテキトーに書いたがそこは突っ込まれず。ちゃんと見ていないのはどこも一緒。こうして不法侵入者が増えていくのである。

 長いことかかったが、ようやく到着。手荷物を預けていないので、そのまま到着ロビーに向かう…のであるが、またここでも1つ問題が。後発のD.Dと待ち合わせ場所を決めていなかったのである。仁川の勝手がわからないので、「とりあえず到着ロビー」という話はしていたが、いかんせん仁川は国際空港。広い。到着便がどこから出てくるかを表記している掲示板を探すが、手荷物受け渡し所では発見できず。さらに、到着便が書いてある掲示板には、後発であるはずのアシアナの便すら乗っていない。隣にはおよそ役に立ちそうもないスグノレ。さあ困った。手のうちようが無い。異国でオロオロする二人(この「オロオロ」がこの旅では何回もあるのだが…)。

 一体どのくらい待っただろうか。一向に到着便表示にアシアナは現れず、業を煮やした!?我々は、手荷物受け渡し所から仕方なくロビーに向かうと、何とそこにはD.Dがいるではないか。こんなテキトーな待ち合わせ場所でパッと会えることもすごいのだが、何より不思議なのは後発便のはずのD.Dが先に仁川にいることである。聞くと、彼は機内ではそう待たずに離陸したらしい。ということは、すでに離陸時点で逆転されていた可能性もある。神様とミスターの勝負はミスターに軍配。

 3人揃って、KALリムジンで江辺(ガンビョン)へ。高速はだだ混みで、途中何度も止まったり動いたりを繰り返す。回りの景色は目新しいが、すぐに飽きる。KBS(京都放送ではない)もSBS(静岡放送ではない)も見えたが、写真を撮ろうにも日本人ぽくてなんか嫌。まわりを気にするとは私らしくもないのだが、隣の韓国人が荷物いっぱいの私を快く思っていないようなので、ここは黙って景色を見ていよう。退屈なので両替した銀行でもらったパンフを見ると、やはりあるのが間違った日本語。その多くは平仮名とカタカナであるが、たまに漢字も間違っていたりするからあなどれない。「エステサロン」を「エスチサロソ」などは当たり前、「お客様」を「あ客様」と絶妙な間違いをするあたりはセンスを感じる。

 1時間半は乗っていただろうか。眠れもしないKALリムジンはようやく最初の停留所である、ロッテワールドホテル前に到着。結構降りる。で、結構乗ってくるかと思いきや、そうでもない。ここから江辺はもうわずかである。3人で近くに座れるようになったので、今日の予定なんぞを話しているうちに、バスは江辺に到着。まずはホテルを探す。ホテルは「東ソウルホテル」というところだが、当然案内板は無く、D.Dが日本でプリントアウトしてきた案内(日本語)だけが頼りである。江辺は大きなバスターミナルがあるところであるが、そう大きい街ではない。しばらく歩いていくとすでに間違えであろうとわかるような路地に突入する。こういうところはD.Dもスグノレも私もぬかりない。しばらく歩いて間違いであることに気づき、再びバス停そばに戻る。プリントアウトされた案内には詳細な地図はなく、「○○を見てまっすぐ」とか「○○の角から見える横断歩道の先を右折」など、説明文で書いてあるので、目標物を見失った場合の対処策がわからない。

 バス下車から20分は経過しただろうか。ようやくホテルに到着。ホテルの前に到着しても、ハングルで書かれていると正しいのかどうなのかが不明である。対面にはセブンイレブンがあったが、もちろんこの店もハングル表記。「セブンイルレブン」としか読めない私はまだ勉強不足か。

 荷解きをし、今日のこれからの予定について検討。予定通りであるが、野球を観ることに。カードは斗山vsSK。知っている顔としては、斗山には入来(兄)、SKにはディアスがいる。SKホはいない。ロッテのフェルナンデスは去年SKに所属し、45本塁打を放っている。しばらく荷解きと準備をしていたのだが、ふとつけたテレビでやたらと日本のアニメをやっているのが目に付いた。韓国で日本アニメが解禁されてから日が浅いというのに、これだけ充実しているとは驚き。日本のアニメが世界を席巻しているのを目の当たりにしてちょっと感動。

 野球は17時からのナイターなので、少し早めの15時半ぐらいに宿を出る。行き先は蚕室(チャムシル)の「総合運動場」駅。江辺からは地下鉄2号線で4駅である。ソウルの地下鉄は大体どこへ行っても700ウォン(一部区間外で800ウォンのところがある)と大変安い。わずか4駅なので勿体ない気もするが、70円と考えれば文句もあるまい。小銭の無い私は窓口で買わなくてはならず、最初戸惑ったのだが、大体700ウォンだからなのであろう、1万ウォン払ったのだが、言葉を発する前に700ウォンの切符1枚と9300ウォンのおつりが来た。まだ韓国人とのコミュニケーションまでは遠い道のりである。ちなみに、券売機はあまりない新型のものを除いて、最初にボタンを押さないと金が返ってくる仕組みである。

 4駅なのでそう時間もかからず、蚕室に到着。駅を降りただけでいい匂いがする。日本の野球場でも、球場を取り巻くように露店が出ているものだが、韓国では想像以上の数である。よく見るのが餅みたいなものと寿司やキムチ、あとはなんか煮物である。寿司に匂いが移ってしまいそうなのだが、韓国の人たちは気にしないのであろうか。食べ物は中で買うとして、まずはチケット購入。チケット売り場に料金表があったが、当然のように読めない。オロオロする3人だが、ここはD.Dが意を決して窓口に行く。さすがは唯一の経験者。しっかりと購入。なんと一番高いスペシャルシートで観戦となった。値段は10000ウォンだったが。安いなー。

 試合開始までしばらくあるので、球場をグルっと回る。途中、グッズ売り場を発見。今回の旅の目的の1つである、「プロ野球選手名鑑を購入する」という命題を解決するチャンスである。中に入ると、さすがに今日は斗山の試合ということで、ベアーズグッズが中心に並んでいる。私は当然のようにロッテのグッズを漁る。D.Dとスグノレはお土産になりそうなものを探す。ロッテグッズはすぐに見つかり、タオルやユニフォームなどジャパンマネーを散財。店員はかなり怪訝そうであるが、仕方ない。お目当ての選手名鑑は明らかに置いてなさそうだが、野球ゲームが1500ウォンで置いてあった。購入しようか迷ったが、どうも胡散臭いので購入を見送る。名鑑は後で本屋にでも寄って見ればいいや、とそこでは思ったのだ。

 半周ぐらいして、もう飽きてきたので球場に入る。途中、よそ見していて縁石にスネをぶつけるという大失態を犯し、非常に足が痛いままの入場。席を確認し、飯を購入しようとするが、今度は店で言葉が通じない。空港やホテルでは英語が通じたのだが、ここでは英語も通じない。店先にいるのが高校生ぐらいのバイトの子のようで、わからないようなのだ。日本語は絶対通じないだろうし、ハングルは絶対に喋れないので、ここは無理から英語で通す。ボディーランゲージを多用し、なんとか購入。英語って便利な言語だと思っていたが、通じない国では大変である(日本もそうだが)。

 席に戻って試合を観戦。客の入りはパリーグよりヒドく、レフトなど100人にも満たない。日本と違うところと言えば、チアガールがいるところだろうか。ビジターのSKにも4人いた。トランペットは無く、電子音かシンセサイザーか何かで録音していたものを流している。太鼓は鼓笛隊が使うような大太鼓で、こちらも日本の太鼓よりとは違う。こういう応援スタイルなのだろう。どちらかというとプロ野球よりは都市対抗野球といった感じである。

 応援は何を言っているのかはわからないが、その応援は、千葉ロッテにかなり似ている。いや、似ているというより全く同じだと言ってもいいぐらい。おそらく千葉の方が後発だろうが、ここまで完璧にパクっているとは知らなかった。D.Dに「福浦ヒットが流れたらどうする?」と聞かれ、「絶対にありえない。あったらスグノレを月代にする」とまで言い張った私であるが、本当に福浦ヒットの音楽を聴かされた時はD.Dともども驚いた。かわいそうなので月代は勘弁してあげたが、それにしても、である。「ヒット」は「アンダ(もしくはアンタ)」と言っているようなので、日本から来た言葉なのだろう。ヒットを打つとスコアボードにも「安打」の文字(もちろんハングルだが)。

 試合は2回にSKが3点を先制したが、その裏に斗山も2点を返し、盛り上がる展開。そんな中、5番サードで先発出場のディアスは一人蚊帳の外。パワーはありそうなのだが、日本にいた時のようなシュアなアベレージヒッターというイメージは無い(日本でもあまりない)。一人で足を引っ張っている。打撃は勿論、守備でも満塁時のサードゴロをファンブルしたり、ショートゴロで3塁にベースカバーに入ろうとしてコケたりと踏んだり蹴ったり。日本の野球のレベルが疑われる。蚕室はブルペンがベンチ横にあるのだが、そこで投球練習をしている投手がいると、なぜか入来兄が出てくる。しかも投球練習をしているわけではなく、試合をただ観ているだけである。謎である。


レフトの客入り

ディアズ

こちらは入来

 斗山の投手はしり上がりに調子を上げる。テンポ良く投げる様は巨人の上原みたいで、なかなか試合時間は短そうである。対してSKの投手はだんだん球にキレがなくなり、途中から斗山有利のまま試合は進み、中盤で逆転。俄然盛り上がるライトスタンド(客の入りはイマイチ)。そんなことより、ファウルが飛んできただけで球場全体が一喜一憂している姿がすごい異様に映る。ダイレクトにファウルボールをキャッチしようものなら、球場全体から拍手の嵐。試合はそっちのけである。やはり日本のそれとは訳が違う。グランドでは代打要員がブルペンで素振りしているし、キャッチャーの横にもロジンバックがある。一方再びスタンドに目をやると、5回終了時のグランド整備の時には告白タイムが始まる。チアガールがおらんようになったかと思うと、着替えてまた踊っている。ラッキーセブンには花火を焚きだすし、なんか泡の消火器みたいなヤツを使ってはしゃいでいる。騒ぎたいだけ、というのであれば千葉のライトとそう変わりは無いが、異様に映る感は否めない。さらにさらに、バックネット裏からはイニング毎にスコアラー!?からベンチへ謎のメモが。これが一番あかんやろ。しかも受け取るのはボールボーイ。仕事の一環のようである。福岡工大城東も真っ青。


これも仕事?

 試合は斗山が快勝。入来は最後までブルペン横で立っていたが、どうやらこれはブルペンのピッチャーを守るためにその日投げない上がりか何かのピッチャーが立っているのだろう、という結論に落ち着いた。ディアスはノーヒットのまま、8回に代打。斗山はDHの張本みたいな奴が大当たり。さすがは3000本安打達成者。貫禄が違う。

 試合が動いた割には3時間ほどで終了し、満足。サイン盗みが激しいと(D.Dから)聞いていたので、もっとサイン交換に時間を使ったり、乱数表などを使ってるかと思いきや、思ったよりスピーディ。17時試合開始だったので、まだ時刻は20時を回ったところ。このまま帰るのも勿体ないので、蚕室を徘徊することに。2号線で2駅戻り、蚕室駅へ。ここはロッテワールドがあり、この時間でもまだまだ明るい。

 ロッテワールドは遊園地なので、当然のように入場料を取られる。額は12000ウォンぐらいだったが、20時過ぎてから男3人で入るところでもない。何か腹ごしらえだけでもいいからと、ロッテワールドの周りをウロウロしていると、ロッテワールドの敷地にかかった橋の向こうに「全州」と書かれた焼肉屋と思しき店を発見。名前からしてうまそうであるが、それより気になるのはその場所である。どう見ても敷地の中なのであるが、橋がかかっており外から入ることが可能である。橋を渡りきったところにガードマンか誰かが立っていたが、素通り。店内に入ることができた。店は閉店間際なのか(看板には21時まで、と書いてある)、客はまばらである。入り口に一番近い席に座ったのだが、ふと見ると、入ってきたところと反対側にも出入口がある。こちらから出ると、明らかにロッテワールドの敷地内なのである。当然3人の頭をよぎったのはこちらからロッテワールドにタダで入ること。果たして可能なのか。

 店ではビビンバやらユッケやら、当たり障りの無い食べ物を食べる。韓国は無料のおかずが死ぬほど出てくるので、ちょっと注文が多いとすぐにテーブルが埋まる。ユッケなんかすごい大きい皿にでてきたものだからさあ大変。ま、大した量の注文ではないし、諦めて食べる。さすがに味は大満足。日本のビビンバより数倍も辛く、後味が相当残るが、文句は無い。水で辛さを凌ぐが、飲みすぎて水が無くなる。注文は当然英語。が、ここではきっちり通じる。さすがは観光客相手、野球場とは場所が違う。食べる前に支払いが先にあったのだが、これはカードの受付時間との兼ね合いらしい。3人で鱈腹食べて60000ウォンとは安い。カードを切ったので、マイルも貯まる。60000ウォンなんて、すごいなー!と感動していたのだが、よくよく考えるとマイルにして60マイルである。

 食べ終わり、何食わぬ顔をして来た側と逆の出口から出る。……何も言われない。ま、店側としたらどっち側から来ていても関係ないだろうから、問題は店を出た後に何か言われるか、ということである。が、店を出ても誰もいない。不正し放題である。時間の問題もあるのだろうか、はたまたこういった点は韓国は寛容なのか、ともあれタダでロッテワールド侵入に成功した。とは言え、別に何かアトラクションに乗るわけでもない。ただ帰り道が違うだけである。まさかロッテワールドに行くことなんてこれっぽっちも考えていなかった我々なので、ここでの計画は別にない。本当にフザけた日本人である。


入口。ここは無料区域

中から。上は構内モノレール

学童疎開

やっぱりあった。

 ロッテワールドを堪能し、敷地を出る。周りの客は(とくに子供が)満足そうな顔をしてる。我々もある意味満足なので笑顔が耐えない。マネする人がいないことを祈ろう。公衆電話があったので将軍に国際電話。ロッテワールドにタダで入ったことだけはその場で告げたが、方法はこれを読むまでわからないだろう。大したことはやっていないのだ。

 蚕室の地下鉄から江辺に帰る。22時近くということもあり、帰途につく客で地下鉄はかなり混んでいた。ま、2駅なので休む間もなく江辺に着くだろう。

 ほどなくして、地下鉄は江辺に着いた。東ソウルのバスターミナルであることもあって、かなりの客がここで下車している。我々もここで下車する。D.Dの後について私も下車。ところが、スグノレが降りて来ないのである。先を行くD.Dを止め、慌てて車内を覗き込むと、そこには学童疎開姿のスグノレが立っていた。江辺で降りた客は想像以上に多く、もう車内はすいている。ということは、我々の姿が見えない時点でおかしいと判断すべきなのであるが、それができないのがスグノレのスグノレたる所以。その前に、自分の宿の最寄り駅を把握していないところにも問題があるし、他人任せの行動にも問題がある。宿に帰ってD.Dと私の説教が懇々と行われたのは言うまでもない。異国の地でやられたらこっちもたまらんわ。

 飛行機の搭乗に始まり、あまりにもふがいないスグノレの行動に憤慨し、「明日はココに行くからこの駅で降りんねんで!」と事細かに説明し、初日は終了した。あと2日で、彼の主体性の無い行動が治るのか。「無理やろ」とツッこんだ貴方、正解。

初日終了

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