第50回
ボビー ハズ カム バック!!

 2年連続でパリーグ東西対抗にてSS席をゲットすることに成功。今回が3回目の観戦だが、一度たりとも外野で見ていない、私にしては大変珍しい。今回も前回同様、チケットは姉から譲り受けた。同じような席であるが、今年は私が2枚使っていいことになった。というか、「2枚やるから席を埋めろ」と言われていたのだ。何でもスポンサーとの兼ね合いで、席が埋まらないとまずいらしい。

 そうは言っても、大学時代から滅多に実家に帰らない私である。地元の連れなど全く音信不通だし、そんなに野球に興味があるヤツがいた記憶もない。ここは1つ、静岡ということでT寄を誘ってみることにする。

 T寄は相変わらずヒマなようだ。最初、チケットがある旨を伝えるとしばらく時間をくれとの連絡だったが、何日かして行くと決めてくれた。他に予定があったのかどうかは不明だが、本人曰く「土日もいろいろ忙しい」とのことだ。あっそう。

 当日(11/9)。12時試合開始だが、去年は少年野球教室とホームラン競争、それに開会式があったはずだから、11時ぐらいには球場に着いておきたい。球場までは去年同様静岡鉄道で行くので、新静岡(始点)に10:30待ち合わせ。私はその前の金曜日に横浜出張からそのまま静岡に来ていたため、仕事の荷物が大量にあった。それを静岡駅のコインロッカーに収めてから新静岡に向かう。静岡→新静岡は徒歩で10分足らず。9時半には家を出ていた私だったが、10時に新静岡に着いてしまった。なれない土地のため時間配分がさっぱりわからん。

 30分ほど時間があったので、新聞を購入して改札そばの喫茶店へ。競馬欄を見ると、ファンタジーSでフィーユドゥレーヴが思ったより人気していない。重賞ウィナーを軽視とは世間もわかっていない。私が買わない時は大いに人気してもらって結構なのだが、こうして実績ある馬が人気していないのがわかっているのに馬券が買えないというのが非常に歯がゆい。ま、この日は濡れイエフさんを始め競馬部連中が大挙として淀に押しかけているので、誰かが買うだろうと思い諦める。そうこうしているうちに30分経過したのだが、T寄から一向に連絡が無い。普段から時間は守る男だ。何も連絡なしで遅れることは考えにくい。ひょっとしたら電車の中か地下街を歩いているのかも知れないと連絡はせず。さらに10分経過。今だ何の連絡も無い。とりあえずメールを打つとすぐに返事。「改札の前にいます」…。おるんかい。だったら連絡してくれてもよかったのに。この男、約束の時間は守るのだが、自分から進んで連絡することが滅多にない、という肝心なことを忘れていた。

 というわけで、結果的には集合場所に私が遅刻した形となり、2人は会えた。ここからは電車で15分ほど。値段は150円。安い。飯は買わず。腹減ってなかったので。車内はどう見ても野球行くんやろうなー、という連中で一杯。案の定、最寄り駅の総合運動場前で9割下車。目指す先はみんな一緒、草薙球場である。

 球場に着いたのが丁度11時ぐらい。いい時間である。飯は中で買うものとして、飲み物だけは外で買うた方がいいだろうという判断の元、近くの自販機でお茶を購入。荷物はデジカメとお茶、タオル(もちろんロッテの)、それに新聞である。だいぶ身軽だ。

 チケットをT寄に渡し、中に入る。SS席に誘導されるのはちょっとした優越感であるが、この球場内に一体何人の人が金を払って入っているのか、というT寄の疑問は至極まともなものである。我々だって1円も払っていないし。席に着く前に、パンフレットを購入しようとするが、そばには見当たらなかったためまずは断念して席に着くことにする。グラウンドでは少年野球教室の真っ只中。これも去年と同じである。和田(西)が近くで打撃を教えていたが、とりあえず帽子はかぶれ。

 20分ほど経過したところでホームラン競争が始まるようだ。その前に私はパンフレットを購入。T寄はとりあえず雪隠。近いのはちっとも変わっていない。ホームラン競争は4人でやるようで、参加者は谷(オ)、和田(西)、小笠原(日)、堀(ロ)。東軍から3人出ている意味はよくわからないが、まあ試合とは関係ないのでいいでしょう。結果は和田が6本ぐらい打って優勝(覚えていない)。印象的だったのは、堀がライトにホームランを打ったことだろうか。飛距離を稼ぐホームラン競争で流し打ってホームランは珍しい。シーズン中にも結構右打ちはあったのだが、技巧派振りは健在。来年も4番打つとは思えないが、頑張ってほしい。

 その後、開会式。出場選手全員がグラウンドに登場。城島(ダ)は熱発で回避だそうだ。札幌の疲れが残っているのだろうか。残念である。五輪予選参加者はその他、ホームラン競争参加の谷や小笠原をはじめ、松坂、小林雅、松井など多少はいたが、今日は試合に出るかどうか疑問だ。ベンチ入りしている監督コーチ陣も全て出てきたが、目を惹くのは伊原のオリックスのユニフォーム姿である。阪神時代のユニフォームもひどく似合わなかったが、オリックスも似合わない。やはりこの男、西武一筋で生きていくべきではなかったのか。それほどまでに伊東との確執があったのだろうか。


頭髪ヤバいツーショット

ホームラン競争、小笠原

こちらは堀

監督衆。後ろに伊原

 開会式には、プライベート(!?)で観戦のボビー=バレンタインが挨拶。観客は最初誰が来たのかわからず(外野に背を向けていたため)MCが「来期から千葉ロッテの…」と言いかけた瞬間にレフト(東軍側)の一部が大歓声が上がる。気持ちはよくわかる。私の席からは紹介される前にすでにボビーの顔が見えたので紹介された時の感動は別に無かったが、外野にいたらどうだっただろうか。おそらくその辺のロッテファンの連中と抱き合って喜んでいたに違いない。ロッテファンにとって、それだけボビーの監督復帰は悲願だったのだ。


ボビー。外野からは後ろ向き

 スタメン発表。先行が東軍(三塁側)で後攻が西軍(一塁側)。

東軍西軍
松井西1川崎
サブロー2大島
坪井3塩谷
小笠原4
和田西5吉岡
福浦6礒部
里崎7北川
金子8日高
赤田西9大村
清水直岩隈

 始球式にはフジテレビの内田恭子と静岡市長の小島善吉が同時に。2人同時ということで、2番のサブローやらブルペン捕手(登録選手ではなく、裏方)やらが借り出される。どうもフジはスポーツの盛り上げ方を履き違えているらしいが、これは文化なのだろう。諦めるしかない。つまらん始球式も無事終わり、いよいよ試合開始。

 1回表、まずは東軍。先頭の松井は(この時点で)去就が騒がれているが、札幌と合わせて心労があったのだろうか、アッサリ三振。サブローはセカンド大島のエラーで出塁、続く坪井がライトに鮮やかな2塁打。坪井は阪神を出ていって本当に正解だと思う。1死2,3塁の絶好のチャンスも小笠原、和田の札幌組が遭えなく三振。この回のアウトは全て三振で全て札幌組。その裏、東軍の先発は清水直。去年は中継ぎでいらん失点をしてある意味東西対抗を盛り上げたヤツだ。その清水直、今年は初っ端からやってくれた。ちなみに、1回裏に松井と小笠原がすでに引っ込んだ。顔見せの意味合いが強いこの東西対抗である。当然の措置であろう。ショートには渡辺正人(ロッテ)、サードには奈良原が入る。

 まずは先頭の川崎に中安。大島に四球で無死1,2塁。3番塩谷にレフトにヒットを打たれ、アッサリ先制。続く谷が右安、吉岡がセンターオーバーの2塁打。1死も取れずに3失点である。シーズン中から立ち上がりの悪い清水直だが、それにしても…の内容だ。見ていてイライラする。周りからはロッテの投手に言及する厳しい言葉が。「ロッテは巨人より弱い」と言い出す輩まで出る始末。しかしよく考えると別に難しいことを言っているわけではない。

 礒部を何とかショートゴロに仕留めてようやく1アウト。しかし続く北川にまた2塁打、日高にはレフト前に運ばれ、まだまだピンチ。大村ショートゴロ(この間にもう1点)で2アウトも、トップに返って川崎がまたヒット。大島がショートゴロでようやく止まったが、都合6失点。こっちのアウトは全部ショートゴロ。捌いたのは渡辺正人だが、彼は小坂の代役であることを付け加えておこう。

 2回。先頭は我らが福浦。五輪予選出場の全日本に対し、壮行試合として行ったプロ選抜で堂々4番を打っていた男だ。ここは彼に任せておこう。と、やはりキッチリレフト前。さすがである。しかし続く里崎がセカンドゴロで併殺。これもシーズンのままではないか。実力どおりと言ってしまえばそのままだが、あまりに面白くない。去年の清水将の方がまだ打っていた。打力が持ち味の里崎だけに、来年に期待しよう。8番金子がヒットでまたランナーが出るも、赤田がショートゴロ。なぜ赤田が選出されているのかも謎だが。裏。まだマウンドは清水直。まぁ、打たれたからと言って、アクシデントでもない限り誰が何回投げるとか決まってるだろうしな。仕方ない。先頭の塩谷が右飛、谷が三振、吉岡が中飛。しり上がりに調子を上げてきた。ホント、シーズン中じゃなくてよかった。

 そんなこんなでここからしばらくは投手戦であったのだが、ある時を境に突然外野席がざわめき始める。殴り合いのケンカが始まったのか、一部分に客が集中しだしたのだ。


左中間に密集が…

 その時はわからなかったのだが、どうやらこういうことらしい。さすがは天下のボビー。私が外野にいても試合そっちのけになるわ。途中、ロッテの堀がその左中間、丁度ロッテファンで埋め尽くされた場所にホームランを打つのだが、それでもロッテファンはボビーに首ったけ。その求心力に恐れいった。


新人王の和田からこのあと…

 さて、試合の方は6-0から金子(ソロ)、堀(ツーラン、上記ホームランと同じ)、日高(ソロ)と放ち、7-3と西軍がリード。8回から西軍のマウンドは、新垣が登る。点差は4点差、もう磐石の態勢だったはずだ。ところが、である。東西対抗は毎年後半にドラマが待ち構えている。8回表は先頭の坪井が遊飛で倒れるも、続く高木浩(途中からサード)がピッチャー返しで塁に。続く堀がまた打ってしまったのである。今度はライト寄りに。2打席連続本塁打。どうしてそれをシーズン中にやらんのだ。しかし今年はサヨナラホームランも打ったことだし(オリックス戦。9回1死満塁で2点ビハインドの時、平野の見事な二ゴロタイムリーエラーで土壇場に追いつき、延長で堀がサヨナラ)、後半はずっと4番だった。勝負強さに磨きがかかったのだろう。第1次バレンタイン政権の時に現役最高打率を残しているハズなので、バレンタインに力を引き出してもらうよう期待。

 福浦がレフト前で続き、高橋信の代打細川もヒット。放っておいても盛り上がるレフト側。しかし、続く金子が力なくセカンドゴロ。阿部真→後藤→吉岡と微妙に中途半端なメンツで併殺。新垣も2失点で抑える。

 裏の西軍には吉岡がヒットを放ち、逃げ切り体勢を作る。代走に星野を送るも、次の阿部真が併殺打。今度は渡辺正→金子→福浦。どっちもどっちやな。まだ東軍の方が見栄えがするか。星野は見せ場無し。阿部真の時に投手は吉崎になったが、相変わらず気持ち悪い投げ方だ。正面から見るとわかりにくいのだが。

 さて、9回。マウンドには再び新垣。で、最後に野手で余っていた鳥越がショートに。先頭の赤田が左飛、トップに返って渡辺正が三ゴ。バックネット裏では表彰式の撮影のためか、カメラ(携帯の方が多かったか)を持ってみんなしてゾロゾロと前の方に集まってくる。サブローがライト前で粘り、警備員も野次馬を追い払おうとした時である。次の坪井が、なんと同点ホームランを打ってしまうのである。この展開にはT寄も大喜び。延長が無いことがわかっているだけに、同点だろうが何だろうがこの回が最後。シーズン中ならたとえロッテが劣勢でもあまり延長を歓迎しない私だが、去年もこんな帳尻あわせの展開だった。さらにさらに、高木浩がまたセンター返しで塁に出て、いよいよ堀にまた回ってしまったのである。

 さぁ、こうなると黙っていないのがロッテファン(私ではなく、外野席の連中のこと)。チャンステーマが流れ出した。ここまで、チャンステーマは近鉄のタオル回しと日ハムぐらいしかなかったが、どちらも静岡の野球ファンにはイマイチ認知されていないようで、盛り上がっていたのは外野だけだった。果たして、今回もレフトだけ異様な雰囲気となり、西武ファンも右手を挙げて応援している光景が異様なだけで、別段球場の雰囲気は変わらない。しかし、今日2ホーマーの堀である。1本だけレフトポール際にデカい飛球があったが、これはファール。仕切り直して打ったのはセンター前に転がる。6回に代打で出てきてもう猛打賞とは立派であるが、センター前にヒットを打ってもまわりからは「あーあ」とため息もチラホラ。期待されていたホームランが出なかったせいだろうが、それを求めるのは少々酷であろう。福浦が打席に立ってもまだチャンステーマが続くが、ここはセカンドゴロに打ち取られた。これで東軍の勝ちはなくなった。と同時に、清水直の負けも消えた。2回6失点で負けがつかないとは、9月10月のロッテ並みの打線に感謝しなくてはならんだろう。

 さて、予想もしなかった9回裏がやってきた。マウンド上の吉崎すら予想していなかっただろう。準備不足か力不足か、先頭の日高にライト前にはじかれる。泳ぎながら1,2塁間を破った打ち方で、なかなかシブい。この日高、次の大村の打席の時に盗塁をしてチャンスを広げる。大村は進塁打(二ゴロ)で日高はサードへ。このあたり、非常にやらしいバッターである。できれば近鉄に残留してほしくなかった。川崎は三振に倒れて2死3塁。バッターは、余っていた野手だった鳥越である。

 去年は、余った野手の田中幸が守備に着いた後に回ってきた打席で同点タイムリーを打ち、ごっつぁん優秀選手賞だったが、今回の鳥越も同じようなパターンである。去年と違うところは、タイムリーが出た瞬間MVPに決まるところで、去年よりさらにごっつぁん感があることは言うまでもない。その鳥越、ツーストライクから甘く入ったストレート(多分)をバックスクリーンに弾き返し、サヨナラホームランを打ってしまったのである。恐れていた自体が起きてしまった。日本シリーズでも「シリーズ男」の異名を取った男。ほんと、ダイエーに来てよかったと思う。報われないのは吉崎、さらにごっつぁんなのは2回4失点で勝ち投手になった新垣だろう。

 ヒーローインタビューではやはり鳥越が。「MVPは鳥越選手です」の放送があった後は球場は失笑の渦である。鳥越もバツが悪そうに、一緒にごっつぁんになった新垣をネタにしたりしていたが、最後に抱負を聞かれた際に小久保の名前を出し、会場を静まらせてしまった。私とT寄は喜んでいたが。

 こうして、東西対抗は2年連続で9回に祭が起きる展開となった。席もSSだし、目の前でバレンタインも見た。写真を撮る時に声をかけたらこっちを向いてくれたのだが、その写真は見事にボケていた。仕方ないので黄昏ているボビーでガマン。右は解説陣。しょせん東西対抗なんてこのレベル。


特等席に陣取るボビー

池田と加藤博一のダブル解説

 静岡鉄道に乗り、そのまま新静岡に帰る。試合時間が2時間半もなかったので、この時点で2:30ぐらいであるが、鳥越が打ったということで雨が懸念される上、この2人ではトークが弾まない弱点があるので、解散となった。静岡駅でT寄と別れ、荷物を持っていざ切符を購入。みどりの窓口が混んでいる。ま、日曜の昼だし、これから新幹線に乗って帰るという人も多いのだろう。また、まだ静岡では国体をやっているので、その観客も一部いたと思われる。窓口に並ばず券売機で買えばいいのだが、生憎持ち合わせがなかったので、カードが使える窓口に行かざるをえなかったのだ。列はだいたい20人ぐらいだろうか。最後尾に着いていると、後ろからなにやら集団が歩いてきた。ざっと数えても4,50人はいる。これも国体帰りの客だろうか…イヤやな、と思っていたら、後ろから「サインお願いします」「サイン下さい」「握手だけでも…」とやたらと声がする。芸能人でもいるんか、と思い振り向くと、私の後ろに190cmはあろうかというデカい人が並んでいる。国体参加のバレーの選手か?と思い見上げると、なんと岩隈(近鉄)だった。いや、デカい。しかも思ったより線が細い。これに広橋の娘はコロっといったわけか。確かに色男だ。しかし新幹線の切符は自分で買うのか。サインやら握手やらをみんな断っていたようなので、さすがに私も握手してくれと切り出すことができなかった。写真だけでも撮っておけばと激しく後悔。

 切符を購入。全然空いてなかったので結局自由席で。グリーン車すら埋まってるってどういうことや。岩隈の写真が取れなかったので、悔しいから静岡駅で目に付いたポスターを激写。


産業フェアて。

 何をするフェアや。見たところ魚の缶詰が踊っているだけだが。ちなみに会場のツインメッセ静岡は以前まで「静岡産業館」と呼ばれていた建物だ。就職活動で合同企業セミナーをやっていた時以来行ってない。

 結局締めはさんぎょーになってしまった。「裏金産業の行動するところ、さんぎょーあり」。改めて認識した格好となってしまった。オールスター、日本シリーズと行った経験が無いが、東西対抗はこれはこれでまた楽しむことができる。次回は外野で、というのを毎回言っているが、いつになったら実現することやら。


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