第51回
ライオンキング

 韓国野球、三星ライオンズの李承Yが千葉ロッテに球団を決めた。大リーグ入りを目指して模索するも、大リーグにおける自分の評価の低さに断念、ラブコールを送っていたロッテに入団が決まったものだ。

 李は三星でFA宣言をしており、仮に残留か韓国国内での移籍を決めると、次のFA資格取得まで最低で4年かかってしまう。今年は諦めたが、来年にでも再び挑戦したいという意向の強い李が、「腰掛でも構わない」という意向の千葉ロッテと話がまとまったものだ。ロッテは現監督のバレンタインのルートを使い、将来的に李の大リーグ入りを後押しするらしいが、ロッテの意向で2年契約となった。

 韓国内では、李の日本移籍に賛否両論らしい。日韓の感情的な衝突もあってか、否定的な意見が多いようだ。少しでも早く大リーグに行きたい李の気持ちはよくわかる。日本でも上原(巨人)や松坂(西武)などが大リーグ志向が強いが、日本にしろ韓国にしろ、現行制度では、ポスティングを除くとFA取得まで自ら大リーグを目指せないのだから、アジアは保守的というか何と言うか。ま、それでも彼らは日本のプロ野球の主役であるから、頑張ってほしいものである。

 選手の意向はさておき、今回取り上げたいのは千葉ロッテという球団の補強について、である。李は韓国での輝かしい実績を引っさげてロッテに入団するわけであるが、果たして活躍できるのか。ロッテファンの私としては是非活躍してほしいものだが、球団の目から見ての「補強」となるとどうだろうか。李の守備位置は指名打者を除くとファーストになるが、ロッテのファーストには首位打者も獲り、3年連続で(帳尻合わせかもしれないが)3割を打った福浦という確固たるレギュラーがいる。韓国で56本塁打の李と、日本で実績充分の福浦。どっちがいいのかは使ってみないことにはわからないが、問題はどうしてこのような補強をしたか、だ。福浦は近年激しい腰痛持ちで(よく二塁打を50本も打ったもんだ)、いつ爆発するかわからない。で、そうなった時の代わりが欲しいというのも1つの理由かもしれない。ただ、この場合は李を代替要員にしか見ておらず、補強としては納得がいかない。逆に福浦を控えに回すとすれば、福浦が日本で作った実績が意味をなさなくなり、福浦が頑張ってもレギュラーが保証できないということになり、選手が腐る。実に不可解だ。

 ロッテは、補強には消極的だ。FA宣言した選手を獲りに行くわけでもない。唯一FA選手として獲った仲田幸司は成功とは言えない。オフの選手補強と言えば、だいたいがテスト入団で、そこから芽が出ることは少ない。ドラフトも下手だ。強いパイプも持っていないので自由獲得枠(逆指名)もされることは無い。愛甲を抽選で見事引き当てても露骨にイヤな顔をされる。小池を8球団抽選から見事引き当てても入ってくれない。寺村はすぐヤクルトに行った。高橋薫は日本通運(浦和市)時代からスカウトが目をつけ浦和で囲っていたが、そのまま浦和(ロッテ二軍)でプロ生活を終えた。

 トレードも散々たる結果に終わることが多い。ロッテのトレードシーンで必ず登場するのが落合の1対4のトレードである。これは必ずしも失敗とは言えないが、高橋慶彦、白武、杉本と高沢、水上のトレードはどう考えても失敗だし(このトレードは広島にとっても失敗かもしれないが)、その高橋慶彦は遠山とトレードで阪神に行く。遠山はロッテで打者転向も目が出ずに自由契約になり、拾われた阪神で再び投手で活躍するのはみなさんもご承知の通り。チグハクな感は否めない。内藤を出して獲った与田なんか中途半端だし(一緒に付いて来た吉鶴はそれなりに活躍)、南渕を放出した過程もよくわからん。2002年の話では酒井を放出して結果的にセカンドが薄くなったし(これはローズの退団が最大の原因だが)、代わりに来た波留はロクな活躍をしていない。垣内と椎木のトレードも不可解。

 かように補強がヘタなロッテであるが、2003年オフはだいぶ強気に出た。最大の補強はバレンタイン監督であろうか。例え偶然であったとしても、千葉ロッテとなってからチームを唯一のAクラスに押し上げた人物である。彼に背番号2をつけさせるために、煽りを食ったサブローが3に変更し、喜多が36に押し出された。かと思いきや、李が36をつけるということで更に喜多は背番号変更を余技なくされている。喜多もそういえばドラ1だな。バレンタインの他にはアグバヤニをテスト入団させ、李を獲得。ドラフトでは高校生No.1と言われている川崎工(もとロッテの地元やな)の内を一本釣り。近年稀に見るアクティブさである。これが吉と出るか、凶と出るかは来年の今頃にはわかっていることだろう。

 さて、李であるが、福浦とでDH、及びファーストをお互い受け持つ形になると思う。2003年に主にDHだったのはフェルナンデスと堀だが、もういないフェルナンデスはいいとして、堀は来年DHから押し出される形で守備につかなくてはいけなくなる。堀はここ数年ヒジ痛に相当悩まされているようで、守備に負担がかかると打撃にも影響しかねない。堀がDHになった後半で堀自身の打撃成績が劇的によくなっているのがその証拠だろう。堀がセカンドを守ると、渡辺正人が追い出される。内野ならどこでも守れる器用な選手だが、来年は守るとしたらサードしかない。ローズが来る時に堀がサードコンバートの話もあったが、今の堀にサードが守れるとはとても思えない。今江、塀内あたりではまだ小粒だ。我らが初芝では当然のように心もとない。ショートは小坂で磐石だが、そう考えるとショート以外に確定レギュラーがいない事実も浮き彫りになる。外野はアグバヤニと井上純がほぼ確定で、サブロー、立川あたりが3,4番手か。第1次バレンタイン政権で大活躍の諸積の台頭もあるかもしれない。

 2003年オフはBクラスのチームの補強が目立った。日本ハムは新庄を獲り、オリックスはFA宣言した村松を獲った。現段階で報道されているムーアのオリックス入りも可能性がある。俄に盛り上がっているパリーグBクラスだが、どう考えても補強ではロッテが1枚劣る。そろそろ若手にも伸びてきて欲しいと思う反面、やはり獲ったからには助っ人衆にも頑張って欲しいと思う。帳尻あわせの得意なロッテのこと、来年は3位からプレーオフ制覇か、1位になってプレーオフ敗退、はたまたダントツ最下位のどれかであるとここで予想しておこう。

 注意:「ライオンキング」は李承Yの愛称(三星ライオンズにいたホームランキング)のことです。


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