第56回
二番谷木がおでん屋

〜裏金産業北海道視察 初日〜

人物紹介

スグノレ D.D
ガイドブック片手に計画を練る緻密さがありながら、いざ行動を起こすと失態を繰り返すその様はもはや芸術。今回はるるぶ購入&掲載土地巡り担当。大洋ファン。 人が目を向けないニッチ産業を愛するが、それ故に話の合う人間が少ない。計画性は抜群だが、自他共に認めるツキの細さでその計画の全てを覆すこともしばしば。今回は旅行計画立案&航空券手配担当。阪急ファン。
クールてつおー 松中の嫁さん(松中恵子)
目的地ははっきりしているが、ガイドブックに載りそうもないところばかり。出不精なのに旅行に出るとはしゃぎ出す、1番タチの悪いタイプ。流行モノが大嫌いな天邪鬼。今回はレンタカー手配&すすきの担当。ロッテファン。 静岡放送にアナウンサーとして入社も、2年でフリーに。フリーの翌年、ダイエーの松中信彦と結婚。さすがに元女子アナだけに顔のつくりはよく、かなりかわいい。写真は2003年、ダイエーM1時のヤフーBBで撮影したもの。今回は本編とは一切関係ない。きっとダイエーファン。


 夏休み。行楽に行った。予てからの計画であった、夏なのに涼しい北海道だ。大阪の死ぬほど暑いジトジトする夏を1週間離れるだけで価値がある。加えて、スグノレと私は人生初の北海道である。

 8/13(金)。旅行前日。仕事を終え、自宅にいた私であるが、仕度をしない。夜遅く、将軍が表敬訪問に来るからだ。彼は翌日からソウルに旅行である。ソウルに行く前日は、関空が近いということとファミスタがやりたいという理由で我が家に泊まりに来る。つくづく人間関係に恵まれていない。少し前、金沢に旅行に行った際は私が将軍邸に泊まったのだが、その時は5時起床にもかかわらず3時過ぎまで夜更かししてしまった。今回は同じ轍を踏みたくないのだが、いかんせんこの2人が一緒になって早めに寝た試しが無い。さらに、我が家にはファミスタシリーズがいくつも揃っているので、1試合やると数試合やる流れに絶対になる。というかなった。また今回も夜更かしである。

 翌8/14(土)。朝早く、将軍は関空に向かった。私は寝ていたので覚えていない。8時頃ようやく起きる。当日の朝に仕度をするところに意気込みの度合いがわかるというもの。海外旅行ではないので、最悪現地調達もできる。テキトーに服を詰める。カメラやPCも欠かさず持参。PCは夏休みだというのに仕事メールを見なければいけない宿命によるものだ。

 今回は伊丹発なので新大阪からバスに乗るため、まずは地下鉄で新大阪に移動。1駅だけど。電車は通常時刻通り来たのだが、なかなか発進しない。何か問題があったようだ。結局4分ほど停まってようやく発車。大した問題とは思っていなかったが、この4分が実は命取りだった。乗ろうとしていた新大阪発伊丹行きのバスに乗り遅れてしまったのだ。このバスは20分に1本なので、次は20分後。そうなると、集合時間に間に合うか微妙な時間になってしまうのだ。バスは新御堂筋を通るのだが、土曜日の朝方は意外に混んでおり、通常なら25分で行けるバスも今の時間は3〜40分かかってしまうとのこと。諦めて遅刻しますメールを2人に打つ。

 集合時間から10分遅れて到着。すでにチェックインのカウンター前に2人は集合していた。時を同じくして行われているアテネ五輪の話で盛り上がっている。丁度ファミスタを興じていた頃に開会式があったはずだ。開会式は興味が無いので見ないが。チェックインを済ませ、搭乗口へ。これからの予定よりも五輪の話の方が盛り上がってしまうのが問題だ。

 飛行機は予定時間より若干早めに千歳に到着。やはり涼しい。長袖を1枚しか持ってこなかったのは失敗か。預けた荷物も無いのでまずはレンタカーを借りに行く。お盆真っ只中で、レンタカーもやはり盛況なようだ。千歳はレンタカーの営業所まで距離があるのでバスで移動となるのだが、そのバス(レンタカー屋が用意)にも何人も乗っていた。家族連れが多く、カップルはいなかった。たまたまだろうが。男3人組などもってのほか。社会人でこんなグループで来たら、土ワイの撮影か何かだと勘違いされてしまいそうだ。予約済のため手続きも簡単。免許証と帰りの便を告げ、いざ乗り込む。夏の北海道はレンタカー料金が高いので、安めのラウム。3人なら充分の広さだ。

 上下関係と普段の運転頻度から言って、当然私が運転するかと思っていた。読者もそう思っていただろう。しかし、スグノレが「運転したい」と言い出すではないか。彼は現在彦根在住で、車を購入したのだがとりあえず慣れるためにも運転しておきたいとのことだった。何も我々が乗車している時に練習せんでもいいと思うが。納車した車はなぜか実家にあり、ペーパードライバーの彼はいまだに彦根に持っていけないらしい。ま、大阪で練習するよりは全然ましなので、私が教習所の教官なみに気を配りながらという条件つきで、不本意ながら彼に命をたくすことにした。

 目的地が決まっていなかったが、D.Dが社台の会員であることから、割引料金で入れる「ノーザンホースパーク」に行くことになった。ナビには15分ほどで着くとあるが、ほぼ素人のスグノレの運転で果たしてどのくらいかかるのか。まずは発進。このぐらいはきちんとできる(ってできひんかったら運転にならん)。しかし、そこはペーパー。全くスピードを出さない。北海道の広い道路でも、少し横道に入った狭い道路でも一定のスピードを保っている。片側1車線になるとこのスピードのこと、当然後ろに長蛇の列ができる。しかしお構いなし。「煽りたいヤツには煽らせておけ」と笑いながら問題発言。後ろの列に将軍運転の車がいたら、おそらく5秒と持たずにキレていることだろう。しかもそんな車がカーブでは大きく外に膨らむからさらにタチが悪い。大体、助手席にいてもイライラしている状況である。後ろの車の心情は押して知るべし。

 その後もカーブの膨らみは治らず、直線の道路ですらすぐにどちらかに寄る始末。まわりを見ない視野の狭い運転だし、一体どうやって免許を取ったのか疑わしい点ばかりである。ペーパードライバーは一度教習所で慣れるまで運転をしなおす制度を作ってほしい。多分みんな従わないとは思うが。さて、いろいろあってようやくノーザンホースパークに到着。駐車場入口にいる係員が「3人だから1500円ですねー」と軽く言う。行楽地でもあり、何台も並んでいるためだろうか、少し無愛想ではあった。ところが、D.Dの社台会員証を見せると一変。「あー、どうぞどうぞ」といきなり腰が低い。この変わり様、素晴らしい。社台の会員であるということが多少なりともステータスであることを実感した瞬間だった。駐車場に到着したが、なにしろ混んでいる。こんなところで果たしてスグノレに車庫入れができるわけがない。案の定、入らない。最後には助手席の私がハンドルを切ってなんとか納めた。

 ここは要するに公園なのだが、馬車は走っているし、テニスコートやパットゴルフもできる、かなり設備の充実性は高い。稼いでるだろう。空港到着が昼だったが昼食を食べてない我々はまずレストランに向かう。すぐに戻ってきたが。何が問題かって、高いのである。初日のランチに1500円や2000円はかけられない。今回はうにや魚介類には金をかけるつもりではいたが、さすがに場所が場所だけに相当な割高感に萎える。他の2人とも気持ちは一緒だったようで、レストランでの食事は諦めることにした。私はそんなに空腹ではなかったが、2人は堪えていたようで、焼きもろこしに走ってしまった。1本300円。安いほうだろう。味も相当うまいらしい(一口もらったが、確かにうまい)。ベンチに座って落ち着き、敷地内を回る計画を立てる。ここは貸し自転車や貸しカートがあるほど広大な土地なので、全部見るとそれだけで相当時間を食ってしまうようなのだ。まあ別にパットゴルフをやるわけではないし、バーベキューをやるわけでもないし、調教を見られるわけでもないのであるが。

 ベンチから見えた敷地に行ってみると、馬は1頭もいなかったが、環境のよさを実感した。とにかく広い。さすがは社台。感心しっぱなし。

さすがは社台!!
道端にあった社台勝負服の人形

 次は厩舎の方へ。社台生産馬は多いはずだから、何かしら有名な馬がいるだろうと期待を抱く。厩舎に入るが、最初の建屋にはサラブレッドがいなかった。まあ乗馬体験もやってることだし、そうそうサラブレッドがいるとは思えないので次に。次もサラがいなかったが、将軍を発見。

将軍様

 さらに奥に進んで、ようやくサラブレッドを発見。まず目についたのがホットシークレット。いきなり大物である。根岸公苑のトウショウファルコ並みだ。ノーザンホースパークのすごいところは、これで終わらないところ。フェリシタル、トウカイポイント、ダイナガリバー…。名立たるメンバーである。JRAと社台の勝負は、社台の勝ち。

トウカイポイント
ダイナガリバー

 GIホースも見られたし、満足。何がいいって、無料であることだ。会員様に素直に感謝。車に戻る途中、今度はアイスクリームを所望。以前ここに来たことのあるD.Dはミルクソフトがお気に入りだったようだが、天邪鬼の私は合わせない。他には抹茶があったが、その横に「玄米茶」とある。静岡出身の私だ、食べたことの無い玄米茶アイスに食指が伸びる。なぜかこれだけ50円高いのが気になるが。で、いざ食べてみる。……。微妙な味である。不味くはないのだが、飽きる味である。1本は要らん。そもそも私は腸が弱いのでソフトクリームを食べるというのは結構な賭けである。夏場でもアイスはよう食べないし、増してやここは北海道で別に暑くない。そんな私が食べたので、当然腹が下る。北海道初の大きい方は、ノーザンホースパークだった。トイレの水が異様に冷たかった印象だけが残っている。

 結局ここには2時間近くいてしまった。いい時間潰しになったが。帰り際、もう一度振り返って広大な土地を再認識。こういうところで働いたら気持ちいいんだろうな。

まさに「牧場」

 さて、時刻は16時前。現在苫小牧にいるので、ここから宿のある札幌に向かわなくてはいけない。高速を使って1時間ほどかかるのだが、これも運転手がスグノレであるから多めに考えなくてはいけない。次なる目的地は、すすきのにあるおでん屋「一平」。ここは、昔中日にいた谷木恭平の実家である。旅行ガイドには載っていないであろう。夏におでんというのも北海道らしい。谷木と言えば、送りバントである。現役時代そんなに送りバントの数はそんなに多くなかったのだが、「燃えよドラゴンズ」に歌われてしまっているので仕方ない。また、スグノレ、D.Dの大学時代の同期であるAXL氏と19時に会う約束にもなっていた。おでん屋は18時少し前に入店、で19時に札幌駅に集合ということになった。

 千歳から高速に乗り、札幌へ。走っている車の「わ」ナンバーの多さは日本一であろう。そのくらい、レンタカーが多かった。我がラウムもそうだが。しかし、高速に入るとスグノレの運転が一段とひどくなっているのが手に取るようにわかる。デフォルトは走行車線を走っているが、放っておくと右に寄ってしまう。しかし追越車線を車が走ると今度は左に寄る。同じようにスピードの出ない車もいたが、視野が狭いので車線変更もおいそれとできない。やるときは突然やるから恐ろしいし、スピードが出てないからすぐ後ろに追いつかれる。車線変更が一番ハラハラした。あまりにヘタなので、これから後、車線変更は許可制となった。変えたい時はスグノレが「車線変更してもいいですか?」と訊き、私とD.Dが判断して問題なさそうならOKを出す。高速教習だってこんなに丁寧にやらないだろう。前が開けると今度は異様なまでにスピードを出す。ラウムなので120km/hを超えるとエンジンが頑張るのだが、音からはスグノレは判断できないらしい。前に車がいないと目標物が無いからか、120〜130は出してしまう。これは誰しもあることだが、それにしても…である。80kmになったり130kmになったり。もう大変。

 なんとか無事に札幌市内に到着。降りる際の料金所では、すごく左に寄ってしまい、料金を払うのに苦労した。その前に運転中は自分の財布を出せないスグノレだったが(まあゴソゴソやって事故られるよりマシである)。市内はまっすぐな道路が多く走りやすそうだが、スピードがあろうがなかろうが車線変更はヘタなままである。また、交差点で曲がる時に周りを確認しないのが恐い。この日は注意してなければ1人死んでいただろう。あと2機になってしまった。9-1から始めていたらゲームオーバーである。

 すすきのに車で行くのが恐いのと、後にアルコールが入る可能性が高いことから、まずはチェックインして車を宿に置き、地下鉄で行くことにした。宿到着が17時過ぎだったので、おでん屋はあまりゆっくりもしれられなさそうである。宿から地下鉄の駅までは徒歩2分、地下鉄はドアツードアで約10分だった。しかし、すすきのに着いても店の場所がよくわからない。ご存知の方が多いと思うが、札幌の繁華街は道が京都のように格子状になっており、テレビ塔を基準に住所が条目できれいに表記できるのだが、調べた住所には条目までしか表記されていないため、その住所をみてその区画にあるのはわかるのだが、その区画内のどこにあるかは行ってみないとわからなかったのである。結局、10分ほど歩き回ってようやく発見。これだけで疲れた。

おでん「一平」

 カウンターしかない(席数は15席ぐらい)店内は、17時台と飯時でないのにすでに半分以上埋まっていた。やはり人気があるらしい。隣に座っていた方(男性&女性の2人組、夫婦ではなさそうでどういう仲か不明)は常連のようで、店の大将と親しく話している。おでんの味付けは関西風に近く、だしはかなりの薄味だが、大根にはたっぷりだしが沁み込んでいて、上品な味でかなりの美味だ。これを「おでん」と言ってしまうと、今までのものが別に思えてくるぐらい特徴が現れている。谷木もプロ野球やめても食いっぱぐれが無いだろう。参った。おでん種は30種類近くあったが、すすめられたうにとあわびは時価らしく、食べる勇気が無かった。うにに関しては金に糸目をつけないと予め宣言していた私だが、ヘタレ感満点だ。しかしおでんにうにって合うのだろうか?試しに食べてみるべきだった。残念。

 ひとしきり食べたところで、隣に座っている常連客から話かけられる。地元の人から話を聞く機会も少ないだろうから、ここで情報収集。「学生さん?」と聞かれたのでノータイムで「はい!!」と答えておいたが、途中に「どこ行くのがいいですか?」との問いにニセコが出た際、会社の保養所があることを漏らしてしまい、あっけなく社会人であることがバレてしまった(いや、その前に多分わかっていただろうけど)。しかし、学生と言われてそう見られることがうれしくなってしまったとは、私も歳を取ったもんだ。あとは季節柄やはりうにとかにが美味しいことと、時間をかけてでもいいなら道東に行った方がいいこと(今回は無理)、あとは、昔に大阪からの修学旅行生に札幌でカツアゲにあったことなどいろいろ話してくれた。こんなところまで大阪の悪評が広まっていることが恥ずかしいやら情けないやら。しかし、やりとりの最中、いつものように私とD.Dでかけあいしている最中に「なんでやねん」とツッコまれたところ、大層喜んでいた。そんなんでウケてくれるとはラクな方々だ(決して見下しているわけではない、念のため)。

 大将とこの常連客に別れを告げ、ここからは別行動。私はすすきのの街へ、D.D&スグノレはAXL氏に会いに札幌駅へ。すすきのの件はここには書けないので割愛。だいたい90分ぐらいして合流。電話をかけると、なんとすすきので飲んでいるとのこと。店の場所を聞くと、私がさっきまでいた店の4軒ほど隣だった。近!

 飲み屋でAXL氏と再会。卒業(98年3月卒)されて以来お会いしていないので、かれこれ6年ぶりである。私は存じ上げていたが、先方も私のことを覚えてくれていた。やはり嬉しいものだ。ここで学生時代の話や、北海道での話、現在何をしているかの情報交換などをした。妻帯者でお子さんもいらっしゃるようで、学生時代の印象とはまるで違ういいお父さんに見え、人間、所帯持ったら変わるものだと実感(気分を害されたらすみません)。

 看板となる23時まで居座り、そこで解散。宿に戻る。この日の五輪は柔道の最も軽いクラスが行われていたが、日本人が男女共に金メダルを獲得。アベック金メダルとなれば、おそらく今回も野村は1面にならないだろうな(次の日新聞を見たら、やっぱり谷亮子の方だった)。サボンもケー=スンヒもいない48kg級なら靭帯やってようが脱臼してようが優勝するらしい。その強さに脱帽。このままいけば次回の五輪も日本代表でしょう。私は世間ほどファンでもアンチでもないので、頑張って下さい、としか言えません。

 宿で明日の作戦。3連単が先行発売されている札幌競馬場で給料1年分稼ぐことで落ち着いた。3連単、……年収は無理だろうな。

初日終了

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