第61回
阪堺電車制覇の旅

 毎年恒例のRUQS版「野球狂のネタ」が2004年も神戸でやることが企画された。遠方からの参加者も多く、野球の試合を観に行きながら、いつにも増して野球の試合を観ない我々の、完全な自己快楽の追求企画である。去年はダイエー戦を選択してしまったばっかりに、ダイエーのマジックが1になってしまい、相当混んでいた。広いスペースを確保して見たい我々に合わない、ということで今年は時期も多少早め、且つ相手もロッテを選択。プレーオフで盛り上がらない限り混むことは無い。仮にロッテサイドが混んでいてもライト側に座ればどうとでもなる、と思っていた。

 ところが、このイベントは中止になる。別に我々の都合が悪くなったのではない。ご存知、ストライキの敢行である。どうしてこうもタイミングが悪いのか。去年は「もうあんなタイミングの悪いことは無い」と終わった後笑い話のように話していたのだが、今年は雨も降ってないのに野球が無いのである。結局このストライキがプロ野球再編にどう影響したのか私はよくわからないし、ここで論議をするつもりもないが、ともかく野球は中止となった。ヒマになる参加者。

 と、野球に参加することすら表明していなかったさんぎょーが例によって暇つぶしの提案をしてくる。「何かやろうや」と。彼はD.D企画の「どうまでしょう」が好きだが、要するに何か金のかからずヒマが潰せるものをやれ、とこういうことである。そこで考えた。かつてどうまでしょうでは様々な電車を使った企画が行われていたが、まだ一度も乗ったことのない電車がある。それは阪堺電車だ。堺市民が南海の次に足として使っている電車である。私もその存在は新今宮の踏切で追剥みたいな人に追われた時に知っていたが、乗るのは今回が初めてである。こんなきっかけがないと乗らなかった、というのも事実だ。

 さて、企画である。本家どうでしょうは予め決めていた6つの移動手段と目的地を1から6まで番号を振り、サイコロで決めるものである。しかしながら、今回我々は移動手段がまず阪堺電車と決定しており、目的地も電車に乗っているためどうしようもない。サイコロを使うということから、無難に双六形式となった。但し、サイコロの目は逆にした。つまり1が出たら6駅、4が出たら3駅進む、ということ。

 昼過ぎに新世界に集合。恵美須町の始発駅からいよいよ出発である。終点の浜寺駅前まで駅は29駅。快速なんてもちろんない電車である。1を出し続けても5回かかる、非常に気の長い旅である。しかも、浜寺駅前に着いても戻る形式を取ることになり(帰りの手段がやっぱり阪堺電車なため)、帰りは住吉から上町線で天王寺駅前を目的地とした。余談だが、駅名なのに「浜寺駅前」「天王寺駅前」とつくのはいささか気持ち悪いと思うのは私だけだろうか。「浜寺駅前駅」とちゃんと言うのだろうか。境市民の会社の先輩に聞いたら、やはり疑問に思っているとのこと。誰かナイトスクープに投稿してくれ。

 阪堺電車の路線図はここからどうぞ。

 サイコロを振る順はどうまでしょうに倣い、年齢の降順で。てつおー→さんぎょー→D.Dという順番になった。いざ、出発。まずは恵美須町。始発駅とは思えない閑散としている駅である。電気街から更に南に、新世界を抜けた場所なので繁華街のはずなのだが。

恵美須町駅
どこの田舎の路面電車か、と。

 時間が迫っていたので目的地を決める前に先に乗る。電車は1時間に5本(12分に1本)走っており、思ったよりも本数が多い。目的地を示すのは、は下記のような本家どうでしょうのフリップを完全にパクったものである。但し何枚も用意していなかったので、結局この1枚しか書いてないのは内緒だ。

これが本家のフリップ(のコピー)

 サイコロは4が出たので3駅進み、今船に。車内ではバスの停車を知らせるブザーを発見。これは果たして使うのだろうか。とりあえず押してはみたが。

車内の一風景
電車なのに降車ブザー
今船駅

 10分弱で到着。なーんにもない。次の電車は12分後。それまで退屈な時間を過ごすことになる。しかし、ふと何かを思いついたさんぎょーが何も告げずに駅を後にし歩き出す。不審に思い(彼の場合、一挙手一投足が不審だが)私とD.Dが後をついていく。3分ほど歩いたところでようやく一言。「確かこの辺なんやけどな…」。彼は大したことではないのにもったいぶって話す癖があるので、またいつものことか、と流していたのだが、先の方にこの看板を発見してびっくり。

あくまで「料理組合」

 そう、ここは知る人ぞ知る大阪の遊郭、飛田新地なのである。私には縁の無い場所だが(いや、マジで)。「遊郭」が何か知らないよい子はお母さんに聞いてみよう。

 とりあえず飛田を散策。昼間だというのに、何軒か開いている店もある。玄関(て言うのかわからんが)には女性が鎮座していた。目を合わせるとやられる!!と思ったので伏せて歩いていたが、どうしても目がいってしまう。恐ろしい場所だ。さんぎょーの解説により、通りによって値段が違うことがわかる。さすがはさんぎょー。

昼間なのでそんなに活気はない

 こちらは通りの1つを撮影したもの。夜はもっと人通りも多く、華やかなようだが、生憎この時は14:30といういかんともしがたい中途半端な時間だったためこんな状態。時間も金も無いのでここでの寄り道は終了し駅に戻る。

 最初から目玉商品が飛び出したこの企画だが、これ以上盛り上がる場所が今後あるとは思えないので尻つぼみになること必至。あとはサイコロに運を託すしかない。続いてはさんぎょーの1投目。

線路にサイコロ…

 いらんことしいのさんぎょーは線路にサイコロを投げる。まあ阪堺電車なので誰に咎められるわけでもないのでいいのだが。出た目は5なので2駅進んで北天下茶屋に。堺筋線の終点の天下茶屋と何が違うのだろうか。そもそも私は天下茶屋に行ったことが無いので現地に行ったところで違いはわからんが。

 北天下茶屋に到着。商店街見どころが無かった北天下茶屋だが、まあネタを1つ。

北天下茶屋駅
よくわからん時間帯と価格帯

 今船(飛田)に比べてインパクトが小さい感じなのは否めない。

 続いては不ヅキの代名詞、D.D。サイコロを振ると1が出た。ということは6駅すすむことになる。普段のルールなら1駅だったが、ここではサイコロの目と逆にする、というルールが功を奏した。6駅進むと住吉である。阪堺電車唯一の乗り換え駅があるところだ。天王寺方面から来る上町線と恵美須町方面から来る阪堺線が合流するところである。上町線はここから4駅先の我孫子道に行くか別方面の住吉公園に行くかにわかれるが、我々は浜寺駅前に向かっているので我孫子道方面に。

このルールでは最高の"1"
住吉駅

 住吉までは狭い路面部分が続く。路上駐車がはびこっている大阪ではそれを避けようとする車が線路付近までよくふくらんで運転している。見ていて恐い。こちらは電車なので急に停まれないし、人身事故なんかになった日には計画が大幅に狂う(もともと大した企画ではないが)。なんとか住吉駅に到着したが、平日の朝のラッシュ時なんかどうなっているのか心配だ。ちなみに、住吉に着くまで車内アナウンスが1駅ずれていたので、我々はあやうく降りそこなうところだった。地元の人しか乗らないからだろうか、誰も気にもとめなかったが初乗車の私は困ってしまった。

 まだ路面ではあるが、いちおう待合室のような場所があったので行ってみる。昔の京阪の山科=三条間をほうふつとさせるような造りにノスタルジーを感じてしまう。合流部分では線路のポイント切り替えがどのようになっているかと立ち入った時に駅員に注意される。よくよく見ると、駅員の作業室みたいなところがあり、そこから常時見張っているようなのである(下の真ん中の写真、中央左部分の自転車の左側)。退屈な仕事だろうな。右の写真は駅の跡だろうか。それにしては狭すぎるが、ともかく今は使われていないようである。

駅舎?待合室?
合流部分
上町線方面。左の部分は駅跡?

 一回りして再び私の番。ここでなんとまた1が出る。たった2回で12駅もすすんでしまった。これで時間に余裕が生まれそうだ。なんていいルールなんだろうか。6駅先の高須神社に決定。途中大和川を渡り、いよいよ堺市に突入である。

奇跡の連続"1"
大和川

 高須神社に到着。その駅名通り、駅前に「高須神社」という神社があった。ご利益のほどは存じないが、人気はまるでなかった。駅前は住宅街のど真ん中、といった感じで、古い駄菓子やのような店が1軒ある以外は目立った建物は無い。店から見える看板が涙を誘う。ここからはしばらく路面ではなく専用敷地を走ることになる。その分さらに殺風景。

高須神社駅
まさにノスタルジー

 さらに足をすすめると、地面にこんなものを発見。

つねに4のサイコロ

 以前のアンチ山手線ゲームに続き、またしても我々の行動が見透かされているようなサイコロの存在。恐い世の中だ。続いて神社内にあったありがたいお言葉も1つ。

説法

 こんな感じの言葉がいたるところにあった。賽銭箱も願い事毎に別れていたり、なかなか飽きさせない見事なつくりになっている。唯一ある問題としては、敷地が狭く5分もあれば全部回れてしまうことか。ってことはすぐ飽きるやん!!

 続いてはさんぎょー。サイコロの目は5となり、2駅先の神明町に。先ほどに続いてさんぎょーは2回連続の5である。2駅なので前回同様すぐに到着。

連荘
神明町駅

 ここから、阪堺電車はしばらく大道筋という大通りに沿ってまっすぐ走る。そのため、2つも3つも先の駅が肉眼ではっきり見えてしまうのである。前述通り電車は12分間隔なので、6が出ると歩いて次の駅に行く方が明らかに早かったりする。

 神明町自体は特記事項がないのでさっさと次に行く。次の番はD.D。ここで話をしているそばから6を出す。隣の妙国寺前だ。予告通り歩いて移動。5分足らずで到着。これが続くと企画がつまらなくなる心配が…。ただのハイキングになってしまう。

どこまでもまっすぐ
ついに出た"徒歩"
妙国寺前駅

 写真だけ撮ってさっさと次の行動に。次からは3巡目。てつおーが振ったサイコロは2、つまり5進む。目と逆の数だけ進むルールじゃなかったらどつかれてるぐらい低い数字ばかりだ。御陵前まで進む。「みささぎ」ではない、「ごりょう」である、念のため。

また大きく前進
御陵前駅

 御陵前で大道筋から逸れ、再び専用敷地を走ることとなる。その終点近くの線路内でこんなものを発見。

横断歩道!?

 かつての名残なのだろうか、構内に横断歩道とは…。しかしあったとしたら相当昔なのだろう。新しくもない中央分離帯は完全に横断歩道を塞いでいるし、歩道の縁石もかつてあった名残は全く見えない。

 つづいて出目の悪いさんぎょー。この日は不ヅキだったか、この番でも5をだして、これで3連続で2駅である。2駅先は石津

3連荘
石津駅

 石津駅前には商店街があり、駅の目の前にたこ焼き屋があったので購入。ひどく暑い日だったので私は自分の腹とも相談せずにアイスクリンを購入。アイスクリンは100円と安価だったが、味はやっぱり安っぽかった。

 あと2駅で浜寺駅前である。ここで3巡目ラストのD.Dが2を出す。ということは5駅進むのであるが、ここまでに疲労がたまった3人はなんと浜寺駅前には行かずにそのまま折り返すことにした。残り2駅で5進む、ということはこの駅から見ると1駅戻る方向に向かう。石津からは反対方向の電車に乗ることになった。目的地は東湊だ。

D.Dの勇姿
結果は上々
東湊駅

 ここも特記事項無し。駅前にまたしても駄菓子屋があったが、たこ焼きで腹を満たした我々は何も購入せず。

 次からは4巡目。復路は往路で停まった駅は除くことにした。従って1が出た場合に7つも8つも進む場合があるのである。てつおーのサイコロは4なので3進み(御陵前は通過)、大小路に。

今日の調子にしては悪い数字
大小路駅

 時刻は17時になろうかというところ。ここでスグノレに連絡を取ると、WINS梅田から帰るところとのこと。我々もこれから復路なので、よければ飯でも、という話になった。が、我々は帰りの時間が見当がつかない。これからサイコロが全部6という可能性だってある。しかし、いちおう19時に集合、という予定にした。場所は何も考えず、天王寺と梅田の間、というだけで鶴橋に。鶴橋ということはほぼ100%焼肉である。満場一致で決定となった。

 続いてさんぎょー。4巡目にして待望の1が出る。途中の妙国寺前、神明町、高須神社はすっ飛ばしてなんと9進むというこの旅のバッケンレコードを樹立。まったくおいしいところだけ持っていきやがって。目的地は細井川

"1"だけど"9すすむ"
細井川駅

 阪堺線全行程のおよそ1/3にあたる9駅を一発で行けることになり、かなりの時間短縮となった。これで19時着はだいぶ道が開けてきた。しかも、次のD.Dがまたしても1を出し、さらに6駅行けることとなった。住吉はすでに停まっているが、上町線で天王寺と逆側の住吉公園をカウントにいれ、6駅で姫松に。

2回でなんと15進む
姫松駅

 住吉で乗り換え、上町線に。復路は電車にも恵まれており、駅で長いこと電車を待つことが少なかった。上町線は本数も多く、時刻表を確認すると朝は5分に1本ぐらいあるようだ。

 このあたりはまた住宅街に近く、道も細い。加えて姫松駅前には放置自転車があり、車は線路側しか通れないというとんでもないところである。

 往路はいろいろ邪魔や割り込みが入り時間がかかったのに対し、復路はここまで恐いぐらい順調である。書くことなくて困る。ここまで激しい格差は「宇宙戦艦ヤマト」ぐらいのもんである。イスカンダルにあれだけ頑張って辿りついたのに帰りはアッサリ地球に帰れるんかい!!とツッコミ入れたくなるあの漫画である。デスラー、もうちょっと頑張れよ。

 さて、続いては5巡目。2か1を出せばアガリであるが、ここでてつおーがキッチリ1を出し、アガリである。ジャスト宣言はしてないので旅行獲得は1人だけである(←わかる人だけわかってくれ)。

最後にも"1"と完璧な出目
天王寺駅前駅

 「天王寺駅前駅」。うっとうしい名前だ。

 これで今回の行程は終了。最後に以前D.Dが企画した「大阪環状線巡り」にて確認をした天王寺公園の青空カラオケがその後どうなっているかを見に行くことにしたのだが、

誰もおらん

 きれいサッパリ撤去されてましたとさ。


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